いますぐ書け、の文章法(堀井憲一郎)から

 論理的で立派な文章ではなく、読者を楽しませカネになる文章を書くにはどうしたらいいかを指南する本。この著者は、ディズニーが絶対に公認しないであろう超濃密ディズニーランドガイドにまず魅了され、話芸の本質をとらえた『落語論』でまともに感動し、タイムリーにでた『いつだって大変な時代』にはその通りと膝を打った。真面目で不真面目、粋な文章を書く、ライターの一人。
 そして、『自分の言いたいことをいったん曲げてでも、読者に楽しんでもらう精神をもて。極めて不親切な読者、不熱心な読者を指定せよ。』とにかく読者本位になれと何度も主張している。プロの書き手になれるかどうかの資質は「さほど熱心でない読者をこちらに振り向かせる工夫が好きかどうか」。ライターはサービス業なのだ。小難しいことを語る面白くない文章は著者が一番嫌いなものだ。こんな辛辣な、しかし的を射た指摘をしている。「「社会的発言」こそが、文章を書くときの大きな敵である。もちろん政治経済社会教育について発言するな、ということではない。ただ、いきなり現政府よりも上の立場に立って、悪いところを指摘して、改善する方向を指し示せば、それで事足れり、一丁あがり、と言ってるのは、たぶん言ってる本人はすごく高いところから発言していて気持ちいいんだろうけれど、でもそんなところからは人を動かす何かは絶対に生まれてこない、ということである。意味がなさすぎる。」
 このことは、私のブログでも言える。事実も知らずに政治批判をしていることもある。批判ではなく、自らの意見を述べることは大事だが、主張を整理しておきたいものである。書きながら考えることで、自分自身の自然体が出てくる。才能を信じて自分なりの文体をつくっていけということなのだろう。だからいますぐ書け、である。