復興予算にみる「消費税増税法案」のひどすぎる正体

最近世間の関心は解散総選挙へと移ってしまった。だが、今こそしっかり見つめないといけないことがある。それは6月26日に衆院で可決した消費税増税法案の正体だ。野田首相は会見で増税の目的を「社会保障を持続可能にするためで、増税はすべて社会保障に還元される」とぶち上げた。それは真っ赤なウソだ。自公との協議で修正された法案の条文を読めば、すぐにわかる。附則18条に「景気条項」と呼ばれるものがあるのだが、そこに新たにこんなフレーズが盛り込まれてしまったのだ。「(増税によって)財政による機動的対応が可能となる中で(中略)、事前防災および減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」役人用語でわかりにくいが、要するに「消費税を上げて国のサイフが楽になるので、これから防災という名目の公共事業、すなわちバラマキ事業をやる」と宣言しているのだ。実は、この一項は自民と公明が野田・民主に要求して入れたもの。政権与党から転落して、自民はすっかりパワーを失ってしまった。そのため、自民はとにかく公共事業のバラマキをやりたくて仕方ない。バラマキを差配すれば、往年の影響力を取り戻せるからだ。そのシンボルとなるのが自民によって国会に提出中の「国土強靱化基本法案」だ。その支出規模は10年間で200兆円。
ところが、野田・民主は消費税アップを自民に賛成してもらいたい一心で、あっさりとこの要求をのんでしまった。そう、増税する前から自民、民主の談合によりバラマキ政治が始まっているのだ。まったく、自民も民主もどうしようもない。原案にあった「歳入庁」の設置構想も骨抜きにされてしまった。「歳入庁」は国税庁日本年金機構を統合し、税と保険料の徴収を一本化することで行政コストを大幅にカットしようというものだ。
 しかし、このアイデアも「本格的な作業を進める」(本則7条)という条文が「歳入庁その他の方策の有効性、課題等を検討し、実施」というものに差し替えられてしまった。この意味することは、歳入庁設置案を事実上ボツにするということだ。公共事業のバラマキと歳入庁設置案の白紙化。このふたつの動きを陰で主導したのはもちろん財務省だ。
 公共事業のバラマキを認めれば、自民は修正協議に応じると踏んだ財務省野田首相に譲歩をささやく一方で、国税庁は失いたくないと、「歳入庁」潰しをも画策したのだ。相手が政財界の大物だろうと、税務調査でフトコロ事情を掌握できる国税庁は、財務省に欠かせないパワーの源泉なのだ。この画策で、財務省は悲願の消費税アップを果たせるだけでなく、武器としての国税庁も温存できる。つまり、増税は国民の安心、安全でなく、財務省の安心、安全のためのものだったということ。
 その証が今の復興予算の使われ方である。学校の耐震化のような緊急性の高いからといって被災地以外に予算を使うことを国民は認めたわけではない。消費税増税に賛成ではないが、社会保障以外に使えるようにしている。これが財務省の予算執行といわざる得ない。税収の落ち込みをすべて増税で賄おうという財務省の策略にすぎない。復興予算は被災地に限定して使われるべきであり、取れるべきところからとる国民生活を無視した消費税増税