あの澤口俊之さんの講演『今求められる人間性知能(HQ)とは」

『今求められる人間性知能(HQ)とは〜脳の成長と老化〜』講師:澤口俊之氏(現人間性脳科学研究所長・武蔵野学院大学教授)
今回の講師は明石家さんまが司会を務めるバラエティー番組「ホンマでっか!?TV」に出演している人気脳科学者の澤口俊之(51)さん。人間性脳科学的解明が大きな目標であり、 多くの証拠から,「人間性」の中枢は前頭前野(前頭連合野)(prefrontal cortex)にあると考え,様々な観点から多様な研究を展開し、HQ論の提唱者です。 人間性を生物学的に解明すべく提唱した理論が「HQ論」である。この理論では,前頭前野の主要な神経システムを「脳間・脳内操作系(Inter- and Intra- Brain Operating Systems)」として捉え,その能力を「HQ(人間性知能,Humanity Quotient)」と定式化し、 HQ論は人間の本質を科学的に解くための総合理論で, いわゆるEQ(情動知能)も包括しています。澤口俊之氏は、HQ(人間性知能)の主要素は「未来志向的行動力」と「社会関係力」に深く関係し、その最重要な脳力を伸ばすことで自身の社会力はアップし、社会的成功に恵まれ「人間らしい人間」に成長することが出来ると提唱している。
●小学校科目と「多重知能」の関係
 国語⇒言語、算数⇒空間・数学、音楽⇒空間・音楽、図画⇒絵画、体育⇒運動というように関連するが、それらの知能を使うための基礎が『記憶』であり、脳の中にこれらの知能で地図が描ける。この記憶がつかさどるのが「前頭前野」であり、教育ではほとんど無視されている分野である。これは、人間の額の後ろにあり、脳の15%を占め、サルからヒトに「進化」した際にヒトで最も大きく発達した。これが、人間性知能(Humanity Quotient)である。
●「前頭前野」の役割
脳の監督役であり、働きはまさに、脳のコントロールセンター。多くの脳領域から多様な情報を受信し、多くの脳領域をコントロールする。
前頭前野のダメージを失うと、血液も多く、出血多量でなくなりやすい。仮に前頭前野損傷して生命が維持できても失うものが大きい。疾病例からみると、「未来志向性」がなくなり、将来の展望、計画性がなくなる。チンパンジーには未来志向性がない。感情の制御、思いやり、協調性もなくなり、社会性に欠け、自己中心的になり、まるでビースト(獣)である。
人間性知能(HQ)とは
やる気、集中力、好奇心、探究心、主体性、独創性などが「人間性知能」である。人間が対人関係等で社会関係力を発揮し、さらに人として、やる気と好奇心と主体性の三角形トライアングルを形成できるのは「未来志向的行動力」である。まさに、それは、これからの激動時代を生き抜く力、明確でぶれない信念、諦めずに道を切り開く気概であり、他者のありがたみを知ること、相手の立場を意識した行動が「社会関係力」である。HQとは「人間性知能」という意味で、勉強的な頭の良さではなく、脳をコントロールする役割をしている。そして「未来志向的行動力」と「社会関係力」を司っている部分ということ。「未来志向的行動力」が高ければ、明確なビジョンを持つことができ、諦めずに頑張れる。「社会関係力」が高ければ、協調性が高くなる。この2点により、社会的に成功し、幸せになれる。
・人は「HQ(人間性知能)」を高めることで、
 ①gF(一般知能)・・・これが高いと、学業・仕事・社会生活において成功する率が高くなる
 ②未来志向的行動力・・・将来を見越して、夢を実現しようとする力
 ③問題解決能力
 ④器用さ・運動能力
 ⑤語彙と言語能力  以上が向上する、
●HQと子ども・若者などの現状、特徴
・最近の若者みると、30%〜40%、厚労省の統計で12%が一流大学から一流企業に入社してドロップアウトしてニート化している若者が激増している。これらの特徴はHQが低い。勉強が出来てもHQが高いとは限らない。逆は真なり。
・HQが高い人ほど仕事を継続し、高度な職に就く可能性が高い。高度な職に就く人HQは高く、途中退職者ほどHQが低い。相対的に年収が高い人ほど、経済的に成功している。
・HQの高い女性ほど、良好である。「モテる女性とは」とは、「C、Dカップの女性」であり、「胸が大きい女性は、より女性ホルモンがあって、健康で繁殖力が強い。」から、「胸の大きい女性は、モテる(男性が選ぶべき)」ということらしい。それから、「 ヒップ:ウエスト = 1 : 0.7 」が理想であり、みるだけで胸がドキドキし、また顔が対照的な女性を見ると、ドーパミン(*)系が活性、元気が出て、モテやすい。韓国の「少女時代」がこれらに該当する。ドーパミンが出た状態でないと効果が望めないので、嫌々では効果が出にくい。
 *「ドーパミン」とはドーパミンは交感神経節後線維や副腎髄質に含まれるホルモンの一種です。脳のどこから分泌されるかと言うと脳の深部から出るのです。ドーパミンニューロンと位置づけされる部分が二箇所あり、そこから分泌されます。簡単に言うと、脳から出る大事なホルモンですが、常に出てるわけではなく、ここぞというときに出て来るものです。そのドーパミンニューロンは本来,いろんな行動の動機となるものを学習する因子です。例えば,なぜ,歯を磨くのかとか,顔を洗うのかその動機を考えてそれを学習する働きをしているのです。根本はそういうところなのですが,それと,行動に対して,快感を得るとドーパミンを分泌する ことも有名です。では,分泌されるドーパミンの量によってどうなるのでしょうか。分泌が少ない,または出ない人は,《パーキンソン病》と呼ばれています。パーキンソン病は,思っていても行動ができなくなるを言う症状のようです。分泌を促す薬と言うものがあり治療もだんだん可能になってきています。
・離婚や家庭内不和は子供の脳発達に悪影響であり、脳は萎縮する。前頭前野が正常に発達しないと「切れやすい」子供や「他人の痛みが解らない」子供になってしまう。脳がそうなっているので中高生になっても遅い。小学生1・2年が大事。「豊かな環境」で育った子供は脳も発達する。この「豊かな環境」とは、兄弟が3人くらいいる家庭であると思って良い。また、読書をすると前頭前野を使うが、TVゲームをやっていると「認知症」に似た脳の状態になる。TVゲームは子供の成長には良くない。
うつ病でHQは低下。特に30代から40代。自殺に結びつきやすい。日本もアメリカナイズして仕事集団からスポイルされ、自殺する原因になっている。
●加齢、老化症、認知症との関係
・耳の裏側にある「海馬」が老化に伴い、低下してくる。前頭前野の萎縮により老化。
・海馬の老化に伴い、前頭前野の老化を招く⇒進行した老化
                    ⇒認知症
・進行した老化と認知症の分かれ目は50歳から60歳が分かれ目。前頭前野の萎縮により認知症に進行した場合には、治療と緩やかな改善が必要。
認知症の兆候は、社会性や計画性の低下。金銭的計画性も低下。社会性の低下により、相手のうそや嫌味がわからない。記憶障害により、「オレオレ詐欺」にひっかかりやすく、また万引や他人の家に行くなどの行動がみられる。自己制御力が低下し、怒りぽくなったり、泣きやすくなる。また、新しく何かに取組むなどの好奇心・探究心の低下、絶望感、うつ的症状、やる気の低下を招く。
●HQの向上策
・HQを高めるには、まず、一番は幼少期が大切。母乳や抱っこが、大切。幼少期を過ぎてしまった大人でも、HQを高めることは可能。
・脳年齢の若返りにより、前頭前野に対して知的刺激により、若返りしやすい。若い脳ほど効果的。⇒脳トレ向上法、1日10分から20分で良い。HQとIQは比例する。
・『脳力道場』(人間性脳科学研究所)が効果的。任天堂脳トレは疑問。
・具体的な方法
 ① ピアノの稽古(「HQ」を高めるためには5〜8歳ぐらいの頃に「HQ向上法」を行うと効果的らしいのですが、この「向上法」と同じぐらいに効果があるのが、「ピアノのおけいこ」。他の習い事(塾、習字、スポーツなど)の中でも「ピアノ」、余暇の過ごし方(スポーツ、勉強、将棋や囲碁など)のなかでも「ピアノ」が、一番効果がある、という結果がでる。しかも、「ピアノのおけいこ」は脳の構造を発達させる効果まである。)
 ② ジョッキング、ラケットボールなどの有酸素運動
 ③ インターネット利用法
 ④ 「社説法」・・・社説を呼んで、理解し、要約し、批判する。
●まとめ
人間性」を脳科学・生物学的に解明するための理論としてのHQ論,つまり人間性知能HQ(Humanity Quotient)に関する理論は,その本質上,実践的にもかなりの意味をもつ。人間性知能HQは「人間的な人生」を送る上で最重要な知能であり,また,通常の知能とは導き方が逆で,脳機能から導いたものである。
その一方で,やはりHQの本質上,HQは「夢をかなえること」に深く関係する。夢を抱くこと自体が人間の本質的特徴であり,HQの主要要素としての未来志向的行動力と密接に関係する。また,どんな夢も(やはり人間の進化的本質上)社会から離れては実現できず,夢の実現には社会関係力が相当に関与する。なので,HQ ≒ 夢を実現する脳力と言ってよい。
 というわけで,夢をかなえる能力の程度(指数)もその方法論もHQ論からは容易に導けるのだが,それに,HQ論では,「夢をかなえるべく努力すること」は人間の本質的側面で誰もがそうしているはずだと推定しているので(学業や仕事関係のみならず,恋愛⇒結婚⇒育児も当然ながらその基本的な例),あえて「夢の実現」に特化した議論をする意味を見出せなかった。しかし,この困難で激動する社会にあって,それぞれの方が自分なりの夢をかなえることは大きな意味をもつことは当然といえば当然である。そうした方法論も既に多く出ているとはいえ,それらの多くは非科学的か事例証拠的(anecdotal-evidence based)あるいは表層的なように見える。そもそも,夢をかなえることは,宇宙の悠久たる運行にあって微分点でしかない私たち一人一人のまさに「夢(メタ的な)」であり,あえて言うなら「責務」だと思う。