「日本人には何が欠けているのか」(山本七平著)について

 「企業も、また他の組織も、老化していずれは倒壊する。倒壊するものを無理やり存続させる必要はない。倒産は会社の危機ではなく、老化組織を無理やり存続させることが社会の危機なのである。いまの日本に必要なのは産業保護法ではなく、“老化企業倒産促進法”であろう。その対象にはもちろん、“親方日の丸企業”も入る。」ここで言われている「いまの日本」とは、昭和50年頃の日本を指す。本書は山本書店社長であり、社会評論家であった故山本七平さんが、「週刊文春」に1974年8月5日号から1976年9月30日号まで連載した時評の中から32編をまとめたもの。時は、日本がバブル経済になる10年以上も前。デフレではなく、インフレが心配されていた時代である。そして、ニクソンドクトリンからオイルショックを迎え、不況時代を迎えた時代でもある。
 競争に晒されないように特定の産業を保護し老化企業がゾンビになっても存続させ、新陳代謝を拒んできた。そういった根本的な問題を何十年も、蔑ろにしてきたことが、現在の日本の閉塞感につながっているのかも。
  ・いま日本社会に何が必要か? → 「民力の休養」「社会の養生」
  ・企業のあり方は? → 「老化企業倒産促進法」を!
  ・教育の根本問題は? → 教育とは「切り捨て」なり!?
  ・税金問題は? → 間接税的収奪を洗い出して排除する!
  ・エネルギー問題は? → 「ノーモア・石油ポツダム宣言」など
   山本さんの、こういった言及は、あまりにも先を見通しすぎて、当時の人には理解できなかった。
 しかし、私たちが今後の日本再生の方法を探るなら、問題の根本までさかのぼり、知の巨人と呼ばれた山本さんが、昭和50年頃の当時、何を感じ、世の中をどのように変える提言をしていたのかを知ることが、ヒントになるかも。40年近くたって、日本の何が改善されて、何が悪化したのか。
 学生時代から社会人になりかけたころ、会田雄次とともに読んだことのある山本さんの著書。久しぶりに、実際に読んでみると、大局的な視点でものごとを見る大切さを改めて実感。そして先見力に感心させられた・