「知好楽」を実践した二人の経営者。

パナソニックの社名が松下電器だった時期、山下俊彦という社長がいた。昭和五十二年、先輩二十四人を飛び越えて社長になり、話題となった人である。
この山下さんが色紙を頼まれると、好んで書かれたのが「知好楽」である。何の説明もなしに渡されると、依頼した方はその意味を取りかねたという。この出典は『論語』である。『子曰く、これを知る者は、これを好む者に如かず。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。』(これを知っているだけの者は、これを愛好する者におよばない。これを愛好する者は、これを真に楽しむ者にはおよばない)極めてシンプルな人生の真理である。仕事でも人生でも、それを楽しむ境地に至って初めて真の妙味が出てくる、ということだろう。
 そして、稲盛和夫氏。京セラの創業者であり、経営破綻に陥った日本航空を僅か二年八か月で再上場に導いた名経営者である。この稲盛氏が新卒で入社した会社はスト続きで給料は遅配。嫌気がさした稲盛氏は自衛隊に転職しようとするが、実兄の反対を受け、そのまま会社に止まった。鬱々とした日が続いた。会社から寮への帰り道、「故郷」を歌うと思わず涙がこぼれたという。こぼれた涙を拭って、こんな生活をしていても仕方がない、と稲盛氏は思った。自分は素晴らしい会社に勤めているのだ素晴らしい仕事をしているのだ、と思うことにした。無理矢理そう思い込み、仕事に励んだ。不思議なもので、あれほど嫌だった会社が好きになり、仕事が面白くなってきたのだ。通勤の時間が惜しくなり、布団や鍋釜を工場に持ち込み、寝泊まりして仕事に打ち込むようになる。仕事が楽しくてならなくなったのだ。そのうちに一つの部署のリーダーを任され、赤字続きの会社で唯一黒字を出す部門にまで成長させた。稲盛氏は言う。「会社を好きになったこと、仕事を好きになったこと、そのことによって今日の私がある」知好楽の人生に及ぼす影響がいかに大きいかを示す範例である。

(今日のニュース)から
◆「歴史に残る大きな政治家」 世界から追悼の声 サッチャー元英首相死去 (日本経済新聞 2013/4/9)
 サッチャー元英首相の死去を受けて、世界各国から同氏の功績をたたえる声が相次いだ。
 中曽根康弘元首相は8日、「第2次世界大戦後、自由世界でレーガン米大統領とともに記憶されるべき政治家で、旧ソ連に対抗し、自由世界が協力団結すべきことを訴えた傑出した政治家だった」との談話を出した。
 「日本企業がトルコのダーダネルス海峡で仕事をとったとき、サミットの会合で『あれは欧州の企業がとるべき範囲だ』と私の席まで告げに来たことを思い出す。心からご冥福をお祈り申し上げます」とも記した。
 ゴルバチョフソ連大統領は「初めて1984年に会って以来、サッチャー氏とは人間関係をはぐくみ、それにより高まった相互理解が東西冷戦の終結につながった。歴史に残る大きな政治家だった」と語った。
 キッシンジャー元米国務長官はCNNに対し「(サッチャー氏は)米国にとって信頼できる心強い盟友だった」と述べた。サッチャー氏は冷戦終結への先見の明を持った最初の指導者の一人だったとも指摘。「一般的なイメージとは異なり、非常に暖かい人物だった」とも語った。
 各国の現役リーダーもサッチャー氏の死去を悼んだ。日本の安倍晋三首相は「意志の力を身をもって示した偉大なリーダーであり、国家国民のためにすべてをささげた尊敬すべき政治家だった。英国民と深い悲しみを共にしたい」とのコメントを発表。
 オバマ米大統領は「世界は偉大な自由の闘士を、米国は真の友人を失った」と追悼する声明を発表した。「彼女は破れない『ガラスの天井』はないという見本を我々の娘たちに示した」と指摘。「レーガン米大統領と共に、我々は信念と不屈の勇気、鉄の意志によって歴史の潮流を作ることができるのだと世界に知らしめた」とたたえた。
 オランド仏大統領は声明で、フランスとの率直で誠実な関係を持続させたと評価したうえで「国の利益を思い、首相の職についている間、多くの仕事をやり遂げた」と述べた。
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 イギリス保守党復活の象徴と言われ、轍の女とも称されたサッチャー元英首相が亡くなられたそうである。行政改革に取り組み、NPM理論を具体化され、世界にその手法を広げた人物でもある。一つの時代の終わりを象徴している。
 不況とストライキの多発で「英国病」と呼ばれた経済低迷を金融分野の大胆な規制緩和や国有企業の民営化推進、緊縮財政の断行などで克服。競争原理に基づいた市場経済路線を定着させ、社会構造に大きな変革をもたらした。82年のフォークランド紛争では大艦隊を送り込み、アルゼンチン軍を撃破した。
 「小さな政府」の思想は日本の行政改革にも影響を与えた。79年の総選挙でキャラハン労働党政権を破って英国初の女性首相となった。内政では「揺りかごから墓場まで」のスローガンに代表される高福祉政策に大なたを振るった。84〜85年の炭鉱ストでは強硬姿勢を貫き、労働組合を弱体化させた。経済自由化と国民の自助努力を最大限に追求する「サッチャリズムサッチャー主義)」は経済再生に大きな役割を果たす一方、貧富の差の拡大や治安悪化などの「負の遺産」も残した。



(4月9日生まれの偉人)
◆山下 太郎(やました たろう、明治22年(1889年)4月9日 - 昭和42年(1967年)6月9日)は、日本の実業家。その業績から「満州太郎」「アラビア太郎」などと呼ばれた。
 戦後、日本の復興のために石油資源の獲得に奔走、1957年ペルシャ湾海底油田の開発利権を獲得、1958年アラビア石油株式会社を創立する。サウジアラビアクウェートの両国から採掘の利権を獲得したが、数多くのライバルの中からクウェートが日本に権利を与えたのは欧米諸国に対する民族意識があったと言われる。山下が苦心して採掘権を得、設立したアラビア石油は1960年1月31日に採油に漕ぎ付けた。
◆野間 省一(のま しょういち、1911年4月9日 - 1984年8月10日)は、日本の出版人、実業家。講談社第4代社長。日本書籍出版協会会長。出版文化国際交流会会長。日本雑誌広告協会会長。旧姓高木。戦後の講談社を牽引した。


<本の紹介>
 ●日本人が成功すんなら、アジアなんじゃねぇの? 起業に役立つ現地情報&稼げるノウハウ!
  http://worldgateway.asia/campaign2011/plus3/
 ●プリムローズ・リーグの時代―世紀転換期イギリスの保守主義
  http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E2%80%95%E4%B8%96%E7%B4%80%E8%BB%A2%E6%8F%9B%E6%9C%9F%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E4%BF%9D%E5%AE%88%E4%B8%BB%E7%BE%A9-%E5%B0%8F%E9%96%A2-%E9%9A%86/dp/400024633X
 ●アジアビジネスで成功する25の視点 (PHPビジネス新書)
  http://d.hatena.ne.jp/asin/4569796230
 ●アジアをみる眼 三井物産戦略研が読み解く経済の行方
  http://d.hatena.ne.jp/asin/4764106434