カンボジアに日本企業が続々… 成長市場めぐる日中の攻防

カンボジアプノンペンに日本企業の進出が相次いでいる。市街地で本格的な生産が始まった「タイカ」、その従業員の大半が農村出身で初めての工場勤務。日本式の挨拶の仕方などから教わり、衝撃吸収材などを生産している。タイカカンボジアの後藤貴俊副社長はチャイナ+1というところとコスト的にメリットがあるなどと話した。チャイナ+1の動きはカンボジアにも及び、東京ドーム59個分の区画は完売、その多くが日本企業となっている。またプノンペン中心部では6月開業を目指してイオンが大型ショッピングモールを建設中。
 カンボジアが日本の未来に影響を与えるのは理由がある。ネアックルンではメコン川の対岸を結ぶ橋の建設が進められている。その総事業費120億円は日本がODAで無償支援していて、バンコクホーチミンが結ばれる事で日本企業の戦略も変える。ASEANは2015年に域内の関税撤廃を予定していて、カンボジアは生産・物流の拠点となり、日本にとって戦略的な国になりつつある。そのカンボジアには2013年11月に日本の総理として13年ぶりの公式訪問となる安倍首相が訪問、その存在感を示し、中国に対する牽制という狙いもみられた。しかし中国の影響も大きく、カンボジアにある日本橋の周辺で中国の支援による新しい橋の建設が進められている。そしてカンボジア政府への援助額はこれまで日本が一番だったが、現在では中国が一番となっている。
 その一方で中国流の開発は国民から強い反発も出ている。ポンコック湖は埋め立てられ、周辺住民が強制退去させたが、その計画には中国企業のオルドス鴻駿投資公司が関与していた事がわかった。しかしマンション建設などの開発は住民による反対で進んでいない。キム・レイ博士は、中国からの投資は汚職と関係し透明性がない、国民の利益にならないし貧困の削減につながらないなどと話した。
 一方、バッタンバンでは本来有望な輸出産業に発達する地域だが、カンボジア米の精米技術の低さから安く買い叩かれている。その状況にタイワ精機が目を付け、精米業者とともに自社製品を披露した。カンボジア米は日本の精米機では役にたたず、2年の研究開発を経てカンボジア現地で精米が始まった。

◆『“物語”が人を動かす 未来をひらく“物語”の力 市民の力』(2014年1月7日放送 19:30 - 19:58 NHK総合クローズアップ現代」より)
 様々な課題を抱える日本において、市民運動NPOに大きな期待が集まっているが、多くの現場では支援があつまらず、活動の輪が広がらないことに頭を悩ませている。先月、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が講師となり、全国のNPOなどの代表者が集まり勉強会が行われた。そこで語られたのは物語の力。物語が社会をどう帰るかを探る。世の中の為に何かをやりたいという人たちの意欲や、知的エネルギーを色々な形で引き出すことができれば、よりよい社会に向けた大きな変化が期待できる。今日のテーマは市民の力を如何に引き出すかがテーマ。内閣府の調査によると東日本大震災後、ボランティに興味があると答えた人は58パーセントに上るのに対して、実際に参加した人は27パーセントにとどまる。やりたくても1歩を踏み出せない人も多い。一方で各地のNPO市民運動は人や資金の不足といった悩みを抱えている。先月このようなNPO市民運動の代表者を集めた勉強会が開かれ、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が講師を務めた。彼は長年草の根活動に携わっていると共に、2008年のアメリカ大統領選では初の黒人大統領オバマ大統領を誕生させた人物として知られている。彼は人を動かすためには感情移入ができる物語が必要だと語る。
 先月東京で日本各地で活動する市民活動家やNPOの代表が集まる勉強会が行われた。社会活動家の社会的に孤立する人を支援している湯浅誠さんや、紛争地域で難民支援のNPO代表を務める大西健丞さんなど、多くの人たちがどうすれば人々に行動を起こしてもらえるのかという悩みを抱えていた。講師を務めるハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士はまずリーダーの役割について語った。ガンツ博士の言葉に熱心に耳を傾けるのは東日本大震災の復興支援を行う佐野哲史さん。佐野さんが活動拠点にしている宮城県南三陸町津波で地域漁業が壊滅的な被害を受けた。佐野さんは地域の漁師を助けるため観光客を呼びこむ漁業体験ツアーを主催している。ツアーの企画から案内役まで佐野さんは1人で切り盛りしており、一緒に活動をしてくれる人が現れないことに焦りを感じていた。ガンツ博士は多くのリーダーは責任感から多くの事を抱えすぎていると指摘する。求められるのは周りの人を巻き込み、周囲の人が自発的に活動することを促すこと。ガンツ博士は「リーダーとは肩書きや地位のことではなく目標を達成するために仲間を募り力を発揮してもらえる環境を整えること。それができる人こそが真のリーダーだ」と話した。周りの人を巻き込むことの大切さを博士は体得してきた。自分が前にでるのではなく、当事者である市民1人1人の共感を得てきたことがより大きな活動へと広がった。博士は「人はきっかけさえあれば誰かと思いを共有し行動したいと願っている。そこで信頼を結び関心をもってもらえば、また別の人へと自然と活動は広がっていきます。1人1人の力は弱くてもそれらがつながれば大きな力となっていく」と話した。
 社会福祉法人につとめる平田智子さんは障害やひきこもりなどで社会から孤立している人に雇用をつくる就労支援を行っている。平田さんの元には連日、自治体や企業が視察に訪れ、理念には賛同してくれるものの、実際に職場を提供してくれるところはなかなか現れない。平田さんは「職場が優しくなる、笑顔が増えるということでは説得力が薄くてなかなか受け入れてもらえない。受け入れ先をなんとかひろげていかなければならない」と話す。ガンツ博士は人々に行動するきっかけや勇気を与えるのが「物語」だと話す。いくら立派な活動でもそれがなければ誰もついてこない。物語には3つあり、自分の活動の背景である「セルフ」、相手と共有する価値観である「アス」、今行動する理由である「ナウ」があるという。アメリカでいじめを無くす運動を3年前に始め全米で約50万人が賛同した男性の例をあげながら、ガンツ博士は物語のエッセンスを伝えていった。ガンツ博士は「人々が行動を起こしてくれるのは理念ではなく感情に響いたときです。大事なのは自分を突き動かす動機。その根底にある価値観を言葉で表し相手と共有すること」と話す。また、ガンツ博士は参加者の大西健丞さんの「セルフ」の物語から物語を共有することの重要性を教えた。参加者は「自分の物語をつたえることが非常に重要であるということを短時間で学ぶことができた」などと話した。
 糸井重里さんはガンツ博士の主張に対して「企業や宗教は歴史的にすべてこのやり方をしてきた。セルフはまず自分が裸になってみせること。ある種の古典だと思った」と話した。また「アスは私とあなたの利害が一致し握手すること。ナウは具体的になにをするのかということだと思う」と話した。自分の動機について、糸井重里さんは「大したことないと思っているが、大したことないという事実を語っている」と語った。首都大学東京准教授の室田信一さんは「このワークショップをするのに8年間かかった。自分で発進をしてきたつもりだがなかなか人の心に届かなかった。今回自分について語ることを改めて学んだことで、さらに今後の展開を期待している」と語り、何故自分の事をかたれないできたのかという問について、「多くの活動家は人に対して平等に働きかけなければならないという思いが強いため、自分について語ることが難しくなっている。しかし、ストーリーオブセルフをアスに転換していくことで広げていくことができる」と話した。糸井重里さんは日本の活動家が自分の活動を語りにくい理由について、「私利私欲でやっているという見え方をしたくないからではないか。しかし、良い活動をやっている人たちは平気で楽しいからだと語る。その飛び抜けた感じはかえって信用できる。そういうほうが手伝いたくなるし、「私」のない活動は無いと思う」と話した。室田信一さんは「物語はだれでももっている。しかし語り方をしらない。大事な事は語る環境をどのように整えるのかということ。安心して語れる環境があれば人々は安心して語りだすと思う」と話す。また、糸井重里さんは「知的エネルギーをもっている人が活躍するためには具体的なアイディアが必要だと話す。営利企業が考えていることを善意の人たちも考えるべきではないか」述べ、これに対して室田信一さんは「大事なことは自分が問題意識をもっていて行動をとっている。そしてそのストーリーを共有して一緒に歩んでいく仲間を広げていくこと」と話した。

<今日の出来事>
生活保護 過去最多の216万人。全国で生活保護を受けている人が去年10月の時点で約216万人にのぼり、過去最多だったことが厚生労働省の調査で判明。世帯数で見ると159万5000世帯だが、この内65歳以上が45%をしめていて無年金などで生活保護に頼らざるをえない高齢者が増えている。厚生労働省は全体の受給者数について「リーマンショック以降急増した時期と比べると伸びは落ち着いている」としている。

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