自治体が高齢者を取り合う時代?

自治体が高齢者を取り合う時代?
 日本創生会議という政策提言集団が、話題となっている。2011年の東日本大震災の後、元総務相岩手県知事でもあった増田寛也氏を座長として発足した政策提言グループで、特に大きな話題になったのが、昨年 5月の「若年女性の流出により、2040年には全国 896の市区町村が、人口減少による消滅の可能性がある」としたレポート。これ、インパクトが大きかった理由は、「消滅可能性都市」の個別名を列挙したことにある。
 今後は日本の人口がどんどん減っていく、だから全自治体が今までどおりの人口を維持するのは不可能。とはいえ一般論としてそう言われただけなら、「大変ですなー」とか、他人事みたいなことを言ってても済んでしまうが、ところが、具体的に「あんたの市は無くなるでごじゃる」と名指しされたら、「大変ですなー」とは言ってられない。さすがに自治体にも当事者意識が出てくる。
 ところが、その組織が出した今年の提言が、「東京圏高齢化危機回避戦略」であった。具体的には、
 ・これから、千葉県、埼玉県、神奈川県など(東京圏)で、医療・介護需要が急増する。
 ・それらの地域では、医療・介護従事者への求人が非常に多くなる(人の争奪戦が起こる)。
 ・一方、地方では医療・介護需要はそこまで増えないので、このまま放っておくと、地方から東京圏へ、医療・介護従事者が大量に流出する。
 ・すると、地方の人口減少が更に加速する。
 ・これ(=地方の更なる衰退)を防ぐには、一大産業である医療・介護産業を地方に維持すべく、東京圏から客(=医療・介護を必要とする高齢者)を呼び込む必要がある
 この提言について、「東京で行き場がなくなった高齢者を地方に押しつけるなんてケシカラン!」とか「高齢者を地方に追い出すのか!?」また、「高齢者になる前に地方に行っても生活できない。」などと、の意見もあるようである。
 高度成長期には東京圏にだけ建設需要があり、地方にはそこまでの需要はなかった。だから建設現場で働くため、地方からどんどん東京に人が集まった。それと同様に、今後は医療&介護分野で起こり、地方に客(高齢者)を呼び込めないと、働く人がみんな都会に行っちゃいますよ。とも聞こえる。 つまり日本創生会議は、昨年の提言で「若い人を東京一局集中させずに地方にも呼び込もう!」と言い、今年は「高齢者を東京一局集中させずに地方に呼び込もう!」と言っており、一貫して「地方に人を呼び込む方法」を提言している。この組織は常に、「地方をなんとかしなければ」目線です。
 このため、この提言に対する地方と都市部の自治体の反応は、真っ二つに分かれている。移住先に例示された自治体は総じて歓迎ムードだ。大分県別府市は「評価されたことは正直にうれしい。交流人口を増やし、別府を気に入ってくれた人に定住してもらう」(企画部)と語る。人口が年約3千人のペースで減少し「消滅可能性都市」にも挙げられた北海道函館市も「医療施設が充実し、介護面でも有料老人ホームなどには空きがある」(企画部)と歓迎する。
 一方、神奈川県の黒岩祐治知事は今月4日、「移住策には違和感を覚えざるを得ない」と不快感を示した。東京都の舛添要一知事も住み慣れた場所で暮らす重要性をかねて指摘している。高齢者が地方に流出すれば、経済の活力がそがれ、税収も減るとの危機感もある。
 つまり今や高齢者は、「他の自治体に押しつけたい邪魔者」などではなく、「貴重な人口ソースであり、今後の一大産業となる医療・介護業界の主要顧客」として、都市部と地方の自治体が取り合いをする対象です。
 最近は「地方に移住する若者が増えている」みたいな特集をするメディアも多いけど、んなもん数としては“びびんちょ”(めちゃくちゃ少ないという意味の関西弁?)で、今でも東京中心部には、どんどん若い人が流入している。2014年に東京 23区では 5万人以上も人口が増え、その大半が 10-29才の若者でした。東京の「若者を呼び寄せるパワー」は今でも圧倒的である。それに、10年後(2025年)には 20代の人数が 1176万人なのにたいして、75才以上人口は 2179万人とダブルスコアに近い多さなんだから、人口減少に悩む地方の自治体が(来て欲しいのは若者だけ、などと言って)高齢者を無視するなんて、できるはずがありません。
 これから地方の自治体は、地元の雇用を守るため、「我が市は高齢者にこんなにやさしい環境です!」と必死でアピールし、様々な優遇策を打ち出し始めるはず。かつえ、「我が市は工場立地にこんなに向いています!」と必死でアピールし、様々な優遇策を打ち出していたごとくである。他の産業は維持できず流出させてしまったのに、医療・介護業界だけは維持できるって考えるのは、少し甘いように思える。工場なら優遇税制とかで誘致できるけど、マーケット感覚無くして、長年 都会で暮らしていた高齢者を誘致するのはかなり難しいはず。そういう人達が何を求めているのか、彼らのインセンティブシステムを深く理解し、求められているものを供給する、そんなことができる自治体なら、今でも衰退してない。

<6月29日に生まれた先人の言葉>
●海部 八郎(実業家・元日商岩井副社長。)
 ・我れ百倍働けど悔いなし。
野村克也(野球)
 ・覚悟に勝る決断なし。
 ・信頼というのは、自分を大事にするところからスタートする。どれだけ自分を愛しているか、と同義語のような気がする。
 ・自分の可能性を自分で限定するな
●幡掛大輔(クボタ元社長)
 ・下問を恥じず
●白石達(大林組社長)
 ・人間、失敗を経験したほうがより成長します。失敗を恐れずに自分の考えを主張し、途中失敗しても最後に成功したら、「ほら、上手くいったでしょう」と胸を張ればいい。私自身、そうでした。
 ・私は曖昧さが好きです。ものごとをあまり堅く考えません。何か新しいことを始めるときにも、最終的な結論を出してから動くのではなく、新しい可能性が見えたら、原案をもとにまず動き始め、その都度判断しながら、変える必要があれば変えていくやり方です。
 ・一番困るのは、結論が出るまで動かず、その結果を最後まで変えない頭でっかちな人間です。そんな人は変化に取り残されるでしょう。