谷根千から「森鴎外記念館」へ。

◆「森鴎外記念館」
 西日暮里駅から地下鉄に乗り換え千駄木駅へ。駅を出てすぐ左の団子坂を登っていくと、左手に「森鴎外記念館」が見えてくる。この場所は鴎外が30歳から60歳で亡くなるまでの半生を過ごした旧居「観潮楼」跡地であるが、彼の没後"観潮楼"は焼失し、文京区が"本郷図書館鴎外記念室"を建て運営してきた。そして建物を一新し"森鴎外記念館"として開館したところである。
 斬新な外観で館内も美しい。1階エントランスには鴎外の横顔を象ったあの"浮彫像"が照明でクローズアップされている。展示室は地下1階にあり、常設展の展示室1と企画展の展示室2、その間に映像コーナーがある。全体に照明を抑え、必要な部分だけ照明があてられる方法で室内がなんとなく暗い。展示室1では、鴎外の生涯を年代順に分け、それぞれの時期の著作や日記・書簡などの自筆のものなどが展示されている。彼の書いた文字が非常に丁寧で綺麗だったという印象が残っている。また,展示室2では「アンヌコとパッパ」と題した企画で鴎外の次女である小堀杏奴やその弟と鴎外との間で交わされた手紙等を通して、親子の交流を紹介するもので、子供達の事を思う鴎外の姿が実によく現われていた。あと館内には1階にカフェとミュージアムショップがあり、いずれもきれいでしゃれた店である。2階には図書室、講座室などもある。カフェの窓側に見える大イチョウのある位置は記念館の裏口に当る"藪下通り側入口"で、ここに「観潮楼」の正門があったと言う事で碑が立っている。
 かつて、森鴎外については津和野にある居宅に近くにある森鴎外記念館を訪問している。津和野に生まれた森林太郎(鴎外)は10歳で父とともに上京し、ドイツ語の勉強をし、東京医学校(後に東京大学医学部)に入る。その後、陸軍軍医となり、陸軍軍医総監・陸軍省医務局長にまでなった人である。一方で27歳頃から本格的に文筆活動も始め、多数の名作を発表し、明治の文豪としての印象が私達には最も強い。
 しかし今回の展示の内容を見て、"文学者だが軍人で堅物"と思っていた鴎外に対する私のイメージは大きく変わった。軍医総監退任後に帝室博物館の要職につき、毎年秋に奈良に出張した。娘の杏奴は見送る東京駅で泣き出し、そんな杏奴を心配した鴎外は、奈良から毎日のようにはがきを送っている。そのはがきが沢山展示されていたのだが、子供の成長に合わせ、かな,漢字を使い分け、子供達への気遣いや家族を想う気持ちが強く現われているものばかりであった。
 「軍医」と「作家」という公私二つの人生を歩んだ彼は死に及んで「石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」という遺言を残したことは、生きている間縛られていた公人としての肩書・義務から解き放たれたいという願望のように思える。その心の中には50歳近くになって生まれた杏奴と類という二人の子供への強い愛情と成長を願い、行く末を案じる一人の父親としての感情が含まれていたようにも思える。

久米宏が安倍首相を「完全に独裁者」と激烈批判! 国立競技場見直しを「セコい」とも
 衆院特別委員会と衆院本会議で強行採決された安保法案だが、テレビ局の報道は腰砕け。NHKにいたっては特別委での強行採決当日、国会中継すらしなかった。他の民放も批判が鈍い。短くデモの模様を流して茶を濁し、国民の不安の種である戦争法案の問題点にはさほど尺をとらないでいる。比較的がんばっているのはTBSの『NEWS23』、そしてテレビ朝日の『報道ステーション』ぐらいか。しかし、それでも『報ステ』キャスター・古舘伊知郎の頼りなさに、オールドファンからは“あの人”の再登板を望む声も根強い。そして久米宏が、1月18日、TBSラジオ久米宏 ラジオなんですけど』で、安保法案と安倍首相を苛烈に批判した。番組冒頭、久米は、安倍首相が新国立競技場計画の見直しを宣言したことについて、こう語った。「国立競技場、先週まで『もうこれでやらないと間に合わない、このままいくんだ』と総理大臣が言ってたんですけど。こういうのを“舌の根も乾かないうちに”って言うんでしょうね。ゼロから見直し、もう一回コンペから見直すんだって。こんなことで人気を回復しようとするセコい考えが許せないんですけど」久米は、新国立計画見直しは目くらましだと一刀両断し、そのうえで安保法案について、こう断じるのだ。
「そんなことより、今週あの安全保障関連法案というのが衆議院の委員会で強行採決、そして本会議で賛成多数で成立ということで参院に送られるわけです。まあ、日本が民主主義国家であるかどうか、それは僕、ひとつ疑問ではあるんです。戦争が終わってね、アメリカさんに(民主主義を)押し付けられたわけですから。日本人が自ら獲得したものではないので、ちょっと本物ではない可能性はあります。が、とりあえず民主主義国家で、とりあえず民主主義国家の総理大臣たる者ですがね、ほとんどの憲法学者がこれは憲法違反だと言っている法案を成立させようってことですから。これは、本質的に憲法改正と同じなんですよ。改正するということと実質的に同じなので、それを民主主義国家の総理大臣が勝手に強行していいのか、という大問題があると思うんですね。本来なら憲法改正というのは国民投票をしなければいけないんですけど、それもしない! 最低でも、僕は衆議院を解散すべきだと思うんです」なぜ、主権者である国民を無視して、首相の一存で事実上の改憲ができるのか。解散して国民に信を問うのが当たり前ではないのか。
 「こないだの去年の12月には、一応、アベノミクスというなんだかわけのわからないものを争点にして、衆議院解散総選挙をやったんです。これは、最低限、国会議員というのは国民の代表ですから、そういう民主主義システムに日本はなっているわけですから、どうも、かなりの国民が疑問をもっているような法案を成立させようという場合には、これを争点にして衆議院解散総選挙をするのが常道だと思うんです。(しかし安倍首相は)それはする気がない。でも、国立競技場は見直すというね。このわけのわからない考え方がね、納得できないんです」
 安倍首相は今年5月の会見で、「先の総選挙においては、昨年7月1日の閣議決定に基づいて、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の審判を受けました」とうそぶいたが、昨年の衆院解散時の会見では冒頭ではっきりと「この解散は『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります」と明言していた。
 久米は、番組でこの点を強調し、さらに安倍首相を強い言葉で弾劾する。「つまり、衆院の解散をしないで、総選挙でこの法案の是非を問わないってことは、はっきり言って、こんなこと言うのもなんですけど、独裁者ですから。完全に。民主主義国家のリーダーは独裁者になってはいけないんです」
 安倍晋三は独裁者である──久米さんががそう評すのは、いま、世論ははっきりと“戦争法案にNO”を示しているのに、民主主義国家の宰相であるはずの人間が、まったく聞く耳をもたないから。「たぶん、将来子どもたちが、戦場で戦死する可能性が減りはしないんです、この法案ができると。減りはしない、どちらかといえば増える方向にいくのは間違いないんですけど、なんでこんな法案を安倍さんは通すのかというと、一部の人は、『そりゃあれだよ、安倍ってのは子どもがいないからさ』って言っているぐらいのレベルになっている。あれは子どもがいないからね、子どものことなんか考えていないんだから、だからああいう法案をつくるんだ、という噂が出るほど評判が落ちているってことを、安倍さんは考え直したほうがいいですよね」
 そして久米さんは、再度「独裁者、なっていいの?」と念を押すのだ。
 むしろ、メディアに必要なのは、久米が口にしたような激烈な批判もほしい。学者が違憲といったからなのか、若者のデモもきちんととり揚げるべき。反対にせよ、賛成にせよ、きちんと今回の動きをしりたい。マスコミはきちんと報道すべきではないか。どうも報道管制に負けているしか思えない。いま、現役でテレビに出ているキャスターやコメンテーターも、この程度の批判くらいは口にしてもらいたいものである。

<本の紹介>
安倍晋三と翼賛文化人20人斬り: 新・佐高信政経外科 http://d.hatena.ne.jp/asin/4309246931


<7月21日生まれの先人の言葉>
細野邦彦(テレビディレクター・プロデューサー)
 ・ビジネス上の競争でも、喧嘩でも、やる以上は勝たなきゃならない。ところが自前のパワーを考えると、どうしても勝てない奴ってのもいる。その見極めがポジショニングだ。俺は男だ、根性だというようなやり方、そんなのは駄目だ。しかし、負けそうだからやらないと言うんじゃなくて、どうやれば勝つかを考え、勝てるアイデアや戦力を備える。