集団的自衛権と憲法

集団的自衛権憲法 分かれる見解(2015年7月24日放送 1:00 - 1:30 NHK総合クローズアップ現代 検証“安保法案”いま何を問うべきか」より)
 MHK世論調査では「集団的自衛権の行使容認と安保法制整備」について大いに評価は8%、ある程度は評価が24%、あまり評価しないが31%、まったく評価しないは30%の結果となった。また「安保法案は憲法違反ではない」という政府の説明について、大いに評価が4%、あまり納得出来ないが37%、まったく納得出来ないが29%の結果となった。現在、与党が衆議院で採決を行なった余波は大きく、現在も反対運動が起きている。10種類の案を「国際平和支援法」と1本にまとめた。その中で問題となるのが「集団的自衛権の行使容認」で、他国が攻撃されて日本の存立が脅かされる。他に適当な手段がない。必要最小限度の実力行使の内容となった事で衆議院憲法学者が、「憲法違反である」と指摘した事をきっかけに平行線をたどる事となった。また法整備を急ぐ理由など明確になっていない事から今後が注目される。
 衆議院の審議で定義となった「安保法案」について民主党岡田代表は、「違憲であるという声が強い。私も強い懸念を持っている」と述べると安倍首相は、「どの国も一国のみで自国の安全を守り得る時代ではなくなった。この正当性、合法性について完全に確信を持っている」と説明、この審議は採決当日まで続いた。ここで「日本国憲法 第9条」について「戦争の放棄、戦力の不保持」と綴られていて、これは歴代内閣が集団的自衛権は行使できないとしてきた事が伝えられた。1983年、当時の中曽根首相は「集団的自衛権に参加しようという事は憲法が許さない」と宣言。また2001年、当時の小泉首相は「集団的自衛権について政府は従来から憲法上許されないと考えてきております」と発言。その考え方がまとまったのは1972年、当時の田中首相の時で、「拳法は自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されない。自衛のための措置とし、必要最小限度の範囲にとどまるべき」としていた。そして、自衛の措置が認められるのは自国が攻撃された時のみとし、集団的自衛権の行使は拳法上、許されないと説明。今回の安倍内閣の政府見解では、安全保障環境の変容を理由に他国への武力攻撃であっても日本の存立を脅かす事も起こりえるとしている。
 ここで日本公法学会の憲法行政法などの研究者達1146人に今回の「安保法案」についてアンケートを実施、422人から回答があったと伝えられた。ここで違憲か合憲の歌議について377人が「違憲」と回答したと発表。回答例とし大分大学准教授の青野篤氏から、「名目が自衛でも日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、武力行使するのは違憲」と言葉があがっていた。また関西学院大学教授の長岡徹氏は、政府の解釈変更で拳法の根幹を揺るがす事は立憲主義にもとづく国家運営を否定するものだと発表された。また、政府の国会討論について西南学院大学教授の齊藤芳浩氏は、政策論と憲法解釈を混同し、政府は自らの拳法解釈を正当化している。どうしても必要ならば拳法改正を提起すべきだと述べている。一方、合憲を回答した28人の回答例も紹介。中央大学名誉教授の長尾一紘氏は、そもそも政府見解を変えてはいけないというルールはない。日本を取り巻く状況は一変したと発言。富山大学教授の木原淳氏は、自衛に必要かどうかの判断は、国際関係や軍事的な判断が不可欠と発言。九州大学准教授の井上武史氏は、日本国憲法を見ると集団的自衛権の行使についても明確な禁止規定は存在しないと伝えられた。法案が憲法上、認められるかどうか審査するのは内閣法制局である。中でも、横畠裕介内閣法制局長官は、集団的自衛権の限定的行使は自国防衛のためであり合意であると主張している。一方、歴代長官からは多くの批判が出ていて、元内閣法制局長官の大森政輔さんは、集団的自衛権は行使できないという事を尊重すべきと主張していて、政府は一貫して「条の下では認められないと説明した。
 1996年、中国が台湾近海でミサイルを発射。1999年には北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するなど緊急事態も起き、その時に元内閣法制局の大森政輔さんは、周辺事態法に携わっていたと説明。この時に安全保障環境の変化があったとしても、集団的自衛権の行使に踏み出せる理由にはならないとコメントした。しかし、安全保障環境の変化に応じて拳法を柔軟に解釈する、国際大学学長の北岡伸一氏。北岡氏は昨年、集団的自衛権の行使を進めていて、拳法の解釈を事実上、変えてきた歴史と合わせ、かつて「自衛のための戦争も放棄」と主張していた。ここで1954年に自衛隊創設し、自衛のために戦う事は合憲という解釈を打ち出した。当時について北岡氏は、「憲法の解釈を変えてはいけないという意見も多かったが、1954年の解釈が変わった事を認めてないのでしょうかと投げかけていた。更に、世界の情勢を考えると自国だけで守り抜ける国が、どれだけあるか、それを含めて審議してほしいと語っていた。
 現在、NHK世論調査では議論が尽くされていないという意見が56%、どちらともいえないが28%、尽くされたは8%だったと発表された事に田中氏は、政府は危機感を感じ、更に支持率低下になっている事から安倍首相が国民に直接、理解を得ようとテレビ番組への出演など対応していると説明した。また民主党憲法違反指摘したが、自民党憲法上認められていると反論している。
 安倍首相が「安保法案」について国民の理解を求めようと様々な番組に出演している。その1つ、自民党のインターネット番組で安倍首相は、「戸締まりをしている家には泥棒が入らないのと同じで、事前に戦争を防ぐことができる、それが抑止力である」と説明した。戦後、安全保障の柱としてきたのは「日米同盟」で日本は安倍政権の姿勢を歓迎している。ここで対日政策に携わってきた、アーミテージ元国務副長官は、「長年、日本が集団的自衛権を容認しない限り、日米間の協力が難しくなると私的し続けてきた。今回の安倍政権は正しい判断をしていると思う」と語っていた。ここで元自衛隊統合幕僚長の齋藤隆さんは、たこつぼ掘って中に入って、弾が飛び去るのを持っていた。それは対応出来ないんじゃないかと思っていたと語った。今回、安全法案が成立すれば自衛隊アメリカ軍などと実践的な訓練も可能と告げた。現在、アメリカでは他国間軍事演習「RIMPAC」が2年に一度、開かれ22ヶ国が参加したが日本は、集団的自衛権の決まりから一部の演習には参加しなかったと明かされた。これについて元統合幕僚長の齊藤隆さんは、集団的自衛権が行使できる「限定的」になるにせよ。出来ることによって多国間での共同訓練がやれるようになる。まさにアメリカなどとスクラムを組んで、いろんな外交的シグナルになっていくと説明した。
 一方、日本の安全に繋がらないと指摘する元内閣官房副長官補の柳澤協ニさんと主張。2005年、自衛隊イラク派遣で中心的な役割を担っていた人物である。今回の集団的自衛権の行使を容認する事は、アメリカ側に従属を深める道にもなりうると説明した。更に、政府の判断によって、どんな事もやらざるを得なくなる可能性を示唆していた。集団的自衛権の行使によって政府が抱える裁量がポイントを説明。武力行使の新3要件とし、他国が攻撃されて日本の存立が脅かされる事、他に適当な手段がない事、必要最小限度の実力行使とあげられた。政府は要件にあてはまる事例として中東のホルムズ海峡での機雷の掃海活動などをあげ説明するも、安倍首相は安全保障上の対応は、こと細かに事前に設定するのは避けた方が良いとしている事で混乱を起こしていると説明した。
 今回の政策見直しの中から集団的自衛権の限定行使と、外国軍隊への後方支援、グレーゾーン事態への対処など拡大内容があげられている。これを受け、野党から外国軍隊への後方支援と国連PKOなどへの協力への懸念が説明された。ここでNHK世論調査の結果が発表。安保法案の成立と政党・与党の方針について賛成は18%、反対が44%、どちらともいえないが32%と伝えられた。ここで安倍首相が安保法案の成立を急ぐ理由は、来年には選挙も控えている為、いま落ち着いている間に進めたい。自民党にとって、来月は戦後70年談話、9月に入ると自民党総裁選挙を迎える中、十分な議論が行われるかについてトーク。国民の目も厳しくなっている事から理解をはかろうとするだろうと説明した。また安全保障について実感は湧きづらいが国民の命や暮らしに直結するテーマになるだろうと語っていた。

<今日のニュース>
◆各地で猛暑日 四国では梅雨明け。
 きょうは各地で35℃以上の猛暑日となった。きょう梅雨明けしたと発表された四国・松山市では「暑い」との声があがった。兵庫・豊岡市で36.6℃、大分・宇佐市院内で35.8℃の最高気温が観測された。
 そして、気温の上昇により、午後に関東を中心に広い範囲で大気の状態が不安定になった。東京・世田谷区では午後2時50分すぎまでの1時間の間に49.5ミリの激しい雨が降った。雨が上がって数時間後、午後5時半前の東急東横線渋谷駅では雨水によって改札のあたり一面が水浸しとなった。ホームや線路には影響はなかったとのこと。関東や東北ではこの後も1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降る恐れがあり、気象庁は低い土地の浸水、急な川の増水などに十分注意するよう呼びかけた。

<7月24日生まれの先人の言葉>
●後藤 新平(政治家)
 ・よく聞け、金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。よく覚えておけ。
 ・人は日本の歴史に50ページ書いてもらうより、 世界の歴史に1ページ書いてもらうことを心掛けねばならぬ。
谷崎潤一郎(作家)
 ・我という人の心はただひとり、われより外に知る人はなし。
 ・恋というのは一つの芝居なんだから、筋を考えなきゃだめだよ。

<本の紹介>
・「アメとムチ」の構図―普天間移設の内幕 http://d.hatena.ne.jp/asin/4871271897/hisatunenet-22