江戸検合格のために、再び『東大首席弁護士・山口真由に学ぶ「7回読み勉強法」とは』に学ぶ。

<東大首席弁護士・山口真由に学ぶ「7回読み勉強法」とは>・・・「頭のいい人」になれる最良の手段は、「勉強法」を身につけること
◆「頭がいい」人、「勉強ができる」人とは
 では、私たちが日常で出会う「頭のよい人」とはどんな人たちかを考えてみましょう。頭の回転がすさまじく速い人、「論理的思考」に優れた人、問題が発生したときに柔軟な発想で解決する人、その場その場で求められる行動を適切にとれる(=空気を読める)人……などなど、これまた、様々な人物像が浮かんできますね。その中で、もっとも単純でわかりやすい基準といえば――。実は、「勉強ができる」という評価ではないでしょうか。「勉強ができる」は「頭がいい」と完全にイコールではありませんが、大きな要素のひとつです。そして同時に、非常に「得やすい」評価でもあります。意外に感じられるでしょうか。では、少し補足してみましょう。シャープな論理力や発想力、空気を読む力などによって「頭がよい」という評価を受けようとすると、簡単に壁にぶつかります。なぜならそれには、瞬発力、センス、コミュニケーション力といった能力が問われており、これらの能力は先天的な要素を多く含んでいるからです。さらにいえば、瞬発力やセンス、コミュニケーションカについては、客観的な基準がないのです。したがって、いくら自分はコミュニケーションカに優れた人間だと思っても、それを誰にも疑いようのない方法で証明し、他人からの評価を得るのは非常に難しいことなのです。しかし「勉強」は違います。どんな人であっても、ひとつの方法でじっくり積み重ねていけば、知識はかならず頭に入り、成績へと反映されていきます。簡単にいうと、勉強によって得られる知識は「誰でも必ず身につく」ものなのです。
◆「理解と認知の最短距離」=勉強法を身につけよ!
 では、「勉強のできる人」になるには、何が必要でしょうか。それは、「自分の勉強法」を確立することです。そもそも勉強とは、新たな知識に触れ、それを理解していくプロセスのこと。このプロセスをいかに短時間で確実に行えるか。勉強法とは、その方法論です。つまり知識を自分のものにするための最短距離を心得ていて、それを実践している人が、すなわち「勉強のできる人」ということになります。勉強法が確立できていると、ある意味とても「楽」です。自分の勉強法というレールに乗るだけで、他のことは考えなくてもゴールにたどり着けるからです。
 もし、このレールがなかったらどうでしょう。この参考書を選んで正解だったろうか? ほかの参考書のほうがよかったのでは? いや、そもそもただ参考書を読んでいるだけでいいのだろうか? 無駄なやり方をしているのでは? 自分は要領が悪いのでは? ――といった疑念が必ず頭をよぎるはずです。そして、そういうちらりとした疑念は、頭の中でどんどん大きくなっていき、徹底的に検証しなければ気が済まなくなります。別の参考書を何冊も買い込んだり、ほかの人のやり方を真似ては「やっぱり合わない」と引き返したり、勉強を進めるという本論ではなく、疑念の解消に時間を使い、回り道を重ねてしまいます。「無駄なやり方をしているかも」と心が揺らいで、さらに無駄を重ねてしまう、なんとも皮肉な展開になってしまいがちなのです。
 勉強法というレールさえ敷いてあれば、そうした迂回の一切をシャットアウトできます。 私の場合、偶然かつ幸運なことにこのレールをかなり早い段階で敷くことができました。それはどういうことか。私は、小さいころから活字に触れる機会が多かったのです。両親が様々な絵本を読み聞かせてくれたこと、身の回りに多くの本があったこと、それを好んで読みふけっていたこと……こうした経験は、後年、「読むこと」を中心とした勉強法を確立させていく基盤となりました。そしてこの勉強法の確立こそが、決して天才ではない私を、「東大首席」にまで押し上げてくれたのだと思うのです。つまり、これまで得たものはすべて、「読む」ことに特化した、自分に合った勉強法を確立できたこと、そしてその勉強法をひたすら繰り返し続けてきたことの成果だと思うのです。
<POINT> 「勉強法」というレールを敷けば、知識は身についていく。

「読む」には3つの方法がある
◆調べ物をするなら、「リサーチ読み」が一番
 効果的な勉強法としての「7回読み」についてはこれまでも何度か触れてきましたが、私が日ごろ行っている読書の方法は、実は3つあります。ひとつ目は、「平読み」。いわゆる普通の読み方です。流し読みでも精読でもなく、普通のスピードで文字を追う方法です。小説や雑誌、新聞記事などを読むときはこの方法をとります。2つ目は「リサーチ読み」。調べものをするときに役立つ読み方です。学生の方が課題のレポートを書くときや、ビジネスマンが情報収集を行うときにはこの方法がおすすめです。
 「リサーチ読み」は、たくさんの本に目を通すのが特徴です。ここで強い味方となるのが図書館。まずは検索機に調べたいテーマやキーワードを打ち込み、関連のありそうな本がどこにあるか確認します。その棚に行けば、検索結果に出た書籍以外にも役立ちそうな本が目に付くので、それらも含めてすべて棚から出し、それぞれに目を通します。きちんと読んでいると時間がかかるので、サラサラと目を通すのがコツ。目次を見てどこに何が書かれているかをチェックし、流し読みしながら関連性の高い部分を探します。このときの読み方のコツは、文章を読むのではなく、文章の中にあるキーワードを見つけることだけを意識して読むこと。関係がありそうな文献はあとから「平読み」するのですから、この「リサーチ読み」は、文章の意味がとれなくても全く気にする必要はありません。それが終わったら、役立ちそうな本以外は元に戻します。1冊の中の数ページだけが役立つ、という場合は該当箇所をコピーして、棚に戻します。あとは、このコピーと残りの本の関連部分を熟読します。これでかなりの量をカバーしつつ、質的にも充実した情報を得られるでしょう。なお、「リサーチ読み」のサポートとして役立つのがインターネットです。調べる事項に関して予備知識がないときは、まず「ウィキペディア」などで簡単にアウトラインをつかんでおくと、「どんな本に有用な情報が載っているか」という見当がつけやすくなります。
◆「7回読み」誕生秘話!? 総長賞の選考で……
 そして3つ目が、「7回読み」。試験勉強はもちろん、知識を身につけたいとき全般に役立つ方法です。「7回読み」という言葉をはじめて口にしたのは、東大を卒業する際のことでした。成績優秀者として「東京大学総長賞」をいただいたのですが、その選考時に「どんな勉強をすれば、ここまで『優』を多く取れるのか」と聞かれ、「7回読めばだいたい覚えるもので……」と答えたのが、そもそものきっかけです。実はそれまで、自分の勉強法を客観的に考えたことはありませんでした。「7回読み」の勉強法しかしたことがなかった私にとって、この勉強法はまさに王道。ごくごく普通の勉強法。「それ以外に勉強法なんてあるの?」むしろそういう気持ちだったわけです。
 しかし、選考委員の方々からは、意外にも少し驚いた反応。そのときに、はじめて、この方法はちょっと特殊なのかもしれないと意識しました。それ以降は、「7回読み」という自分の方法を明確に意識するようになりました。そして、飛び抜けて要領がいいわけでも、頭の回転が速いわけでもない私が、東大で首席を取ることができたのは、この方法に助けられたのではないかと思うに至ったのです。この方法の特徴は3つあります。
 (1)「読むこと」の負荷が小さいこと。
 7回読みは、1回1回が流し読みです。しっかり読んで理解しなくては、と思いながら本に向かう集中力とは無縁です。
 (2)情報をインプットするスピードが速いこと。
  同じ文章を、「読む・書く・話す・聞く」で速度を比べたら、言うまでもなく、もっとも速いのは「読む」でしょう。まとめノートを書いたり、講 義を聞いたりするよりも短時間で大量の情報をインプットできます。
 (3)いつでも、どこでもできること。
  本が1冊あれば、時と場所を選ばずに勉強できます。多忙なビジネスマンが通勤時間やスキマ時間に行えるので、時間が無駄になりません。短期集 中型の勉強にも適しているといえます。なお、「7回」という数にこだわる必要はありません。7回でわからない難しい内容は、さらに何回か読み足 すのが、私の方法です。

サラサラ読んで数を打つ!必勝の読書法「7回読み」
◆「認知」から「理解」への道筋を作るには
 様々な分野の知識や情報に触れるとき、いつも感じることがあります。それは「知らないことは、理解できない」ということ。こう言うと、不思議に思われるでしょうか。「知らないことを知るのが、理解するってことでしょう?」「知らないことを理解できなければ、どんなに勉強しても知識なんて得られないってこと?」と。ある文章を理解するときには、必ずそれについて何らかの予備知識を前提にしているのです。たとえ、明確に意識していなくとも。ということは、こうも言えます。「理解する前には、まず『認知』というプロセスが必要である」認知」と「理解」とは、似て非なるものです。たとえばある文章を見て、「こんな言葉が書いてある」と視覚的に感じ取るのが「認知」。それに対して、イメージを汲み取り、意味を読み取り、メッセージを把握するのが「理解」です。これは、知らない人同士がはじめて会うときの状態とも似ています。初対面の人と挨拶を交わして、いきなりその人を理解するのは至難の業です。
 「理解しよう」と思って本を読みはじめる人は、いきなり初対面の相手と親友同士になろうとしているようなものです。当然、「難しい」と感じて、投げ出してしまいたくなるでしょう。大抵の人間同士は、いきなり親友にはなれません。最初は単なる「知り合い」です。「認知」は、この「知り合い」の状態を作ることを意味します。少しずつ頭に情報をすり込んで、書かれていることと「知り合い」になっていくのです。それを何度も繰り返すと、文章との間に親密さが出てきます。難しい言葉もすでに1回目で目にしているので、「ああ、さっきのあれだな」と思えます。回数を重ねるごとにその頻度が増えて、知り合いはだんだん慣れ親しんだ「友人」、そして信頼に足る「親友」へと近づいていきます。7回読みは、そのための作業です。まず「認知」し、それを「理解」へとつなげていく道筋を作ることが大切なのです。
◆「30分の流し読み」を7回繰り返そう
 「7回読み」の1回あたりの速度は、非常に速いものです。私の場合、300ページ程度の本を、1回30分程度で読んでしまいます。これは決して速読ではありません。特別な技能をもってして、速く読んでいるわけでもありません。正直、単なる流し読みです。だからこそ、この程度の時間で済んでしまうのです。7回読みの各回の間は、それほど時間を置かずに読むのがおすすめ。記憶が薄れないうちに次の回を読めば、定着も早まります。私も学生時代の試験勉強では、できるだけ時間を空けないで読むようにしていました。「1日以内」に読めれば理想的です。社会人になるとまとまった時間は取りにくいもの。でも、「サラサラ読み」の場合には、各回30分から1時間ですから、まとまった時間を取りにくい忙しい人でも、1冊を途中で切らずに読み切ることができます。まとまった時間を取れない中で、ゆっくり1回読む場合には、途中まで読んでやめて、また本を読み直してということをしなければならず、前の記憶を呼び覚ますために、すでに読んだページに戻ったりして時間を使ってしまいます。しかし、「7回読み」の場合には、1回ずつにかける時間が少ないので、そういった心配がありません。
 各回30分から1時間、1日1回のペースで7回読むことができれば、ちょうど1週間で読み終わることになります。「300ページの本を1週間で読み終わる」とすると、トータルの所要時間は「平読み」で1回読む普通の方法とほぼ同じか、もしかしたらやや短いくらいでしょう。それでいて、「7回読み」は何度も通読しているので、平読み1回よりも記憶への定着度が断然強いのです。
 また。読むときは[気負わない]ことも大切です。短い時間で読むなら、神経を集中して読むべきではないのか、と思われるかもしれませんが、実際はその反対です。集中しなくてはいけないと思うと、それがかえって雑念になります。「本を開いてページをめくっているなら、読んでいるということだ」と思って、気楽に読み流しましょう。特に1回目に読むときは、文章を追っていくのが疲れるということもあります。わからないところは、次に読めばいいのだから、意味が取れなくても気にすることはありません。そのときは、見出しだけを目で追う「助走の1回」を加えるとよいでしょう。
<POINT> 書かれていることを「理解」する前に、まず「知り合い」になっていく。
<POINT> 調べ物なら「リサーチ読み」。知識を深めるには「7回読み」を活用しよう。