「緊急!池上彰と考える ニュース総決算!2017・・・ニッポンが“危ない”」

◆「緊急!池上彰と考える ニュース総決算!2017・・・ニッポンが“危ない”」から(12月6日19時から21時まで TBSテレビ)
・挑発を繰り返す北朝鮮の脅威 核・ミサイル開発資金はどこから?
 池上彰が、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金はどこから出ているのかについて解説。北朝鮮の2016年のGDP成長率は、3.9パーセント増となっている。北朝鮮は武器の密輸やサイバー攻撃など、違法行為によって外貨を稼いでいる。アフリカでは国連加盟国のうち46カ国が、北朝鮮との取引について未報告となっている。ナミビア政府は、北朝鮮に軍事工場を発注し、戦没者慰霊碑なども北朝鮮製である。北朝鮮の万寿台創作社は国連の制裁対象に追加され、国連加盟国は原則取引が禁止されているが、ナミビア国防省の新庁舎を建設していた。北朝鮮はアフリカ各国で、巨大銅像を製作したり、武器や軍用機器の輸出を行っていた。ナミビア政府は国連の警告を受けて、北朝鮮との商業関係を断つことを表明した。ナミビア南アフリカから独立する時に、北朝鮮が軍事的に支援したことで、両国は現在まで緊密な関係にある。アフリカには他にも、北朝鮮の支援により独立した国がある。
 国連の制裁決議には、罰則がない。アメリカは北朝鮮への独自制裁として、ドル決済システムからの締め出しを行った。北朝鮮と取引していた中国の丹東銀行に、アメリカは取引中止を通達した。アメリカがバンコ・デルタ・アジアの金総書記の資産を凍結した際、北朝鮮は資産返還を条件に核開発施設の停止を約束した。
・災害大国に新たな問題
 九州北部豪雨により、37人が死亡した。記録的豪雨により、各地で被害が出た。愛知では、8月に6900個ものカミナリが発生した。超大型台風21号による被害も紹介。熊本地震では、老朽化したインフラが崩壊した。1964年の東京五輪の年、首都高や東海道新幹線が開通した。建設後50年を経過する道路橋の割合は、2033年には67パーセントとなる。ミシシッピ川にかかる高速道路橋が崩落し、13人が死亡した。海の砂を使ったコンクリートは、塩分を含んでいるため劣化や老朽化が早まる。山陽新幹線のトンネルのコンクリートが剥落した事故では、海の砂を使用していた。国内外の、道路が陥没する瞬間の映像を紹介。仙台市では、東日本大震災の3日後に、約60メートルの道路陥没が発生した。東京23区では、約1500箇所で、震度5以上で道路が陥没するおそれがある。下水管の老朽化により、地下の空洞が増えている。東京23区の下水管を合計すると、1万6千キロとなる。地面を掘らずに、下水管を治す新技術が注目されている。下水道管を内側から補強する新技術・オメガライナーを紹介。アメリカで開発された、塗るだけで補強できる塗料・ラインエックスを紹介。ラインエックスは、インフラの老朽化対策に期待されている。笹子トンネルの天井板崩落事故で、9人が死亡した。
・ものづくり日本のピンチ 中国が技術大国に変貌!?
 習近平氏の国家戦略で日本が危ないという。世界一の品質がメイドインチャイナなるという。中国共産党員は8900万人もいて、政治局常務委員は7人、従来は50代が2人入り、後継者が分かるが今回は全員60代で、習氏の独裁体制が続くとみられる。中央軍事委員会主席が習氏で軍の指揮権があり、党の人事権も持つ。国家主席として法律の公布権もある。台湾政策の権限、宇宙開発の指示権も持ちこれまで総書記・国家主席が持っていた権限である。だが新たな組織を作りトップに就任し、警察への指示権、インターネットの規制権、サッカー代表チームの強化権なども持つ。首相の権限を奪う形になり、首相の力はほとんどない状態だという。習近平国家主席に逆らえない状況で、共産党大会の開催中中国では習氏を讃える歌を歌う活動が行われた。毛沢東主席の時代に近づいているという。今力を入れるのが、2025年に向けた国策で、メイド・イン・チャイナ2025で、世界の工場から、技術革新に取り組み製造大国を目指すという。中国の生産量1位はパソコンなど家電やドローンなど世界一だという。パソコンの生産シェアは世界の98.3%、自動車も3000万台を超える。これまで中国はコピー商品で溢れてたが、インターネットなど紹介する雑誌「WIRED UK」では中国をコピーする時代が来たとしている。
中国の経済成長の象徴と言われる都市が深セン。現在深センはキャッシュレス社会で生鮮市場からチップまでQRコードを利用のスマホで行われている。自動販売機では顔を近づけ、肌の状態をチェックし、オススメの顔パックを診断する自動販売機がある。ファストフード店では世界初の顔決済システムが利用され、キャッシュレスからスマホレスになっていた。深センでは近年世界を驚かす技術が誕生。今年8月に深センのメーカーが発売した「Insta360 ONE」は紐や自撮り棒を自動で消去し、カメラが宙に浮いたような世界初の自由視点360度カメラとなっている。また暑さ0.01mmの最先端ディスプレイなどもある。深センものづくりの代名詞がドローン。世界の7割を占めるドローンメーカーDJIの本拠地でもある。今年7月Makeblockから小学生向けの手作りドローンが開発された。パーツを組み換え、水陸両用となる。すでに世界中から100万台の注文があるという。26歳で企業し、企業価値は200億円を突破した。一攫千金を求め世界中から深センに集まる若い人材、若者を政府が支援し、深センで企業すると最大7億円近くの補助金を受けることができる。急成長の深センに目をつけたのが世界の投資企業である。投資家らは第2のシリコンバレーになることを期待している。池上が30年前に深センに行った時はビルが一本建ってるだけだったという。第2のシリコンバレーを創った理由は国の政策によるもので、外国企業の買収を繰り返し技術力を吸収せよというものだった。
自動車産業勢力図に異変?中国が手動するEV化
 中国が世界に先駆け進めているのが、NEV法。2019年中国国内で販売する自動車の10%以上をNEVに義務付ける。未達成の場合実質的な罰金が課せられる。中国は国策としてガソリン車から電気自動車への転換を図っている。これに追随し、イギリス・フランスは2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止、インドは2030年までに全ての新車をEV化するという。大気汚染に悩まされる中国の都市に比べ、深センの空は青い。その一因にあるのがEVバスである。今年全てのバスをEV化し、排気ガスの減少に成功した。また警察車両やタクシー、スポーツカーなどもEV化している。EV充電スタンドに加え、バッテリー交換スタンドが登場し、充電8時間のところ交換3分で完了する。北京だけでも100ヶ所が設置されるなど、インフラ整備がEV化を加速している。交換スタンドを開発した「北京新能源汽車」を訪ねた。北京汽車は7月、ダイムラーとEV生産に835億円の共同投資を発表した。その壇上には習近平国家主席の姿もあった。中国がEV化に舵を切ったのは、ガソリン車では中国が日本が先に開発を進めたが、EVでは世界一になることも難しくないとの考えである。池上は遅れて発展した国が、先に発展した国より新しい技術の恩恵を受ける「リープフロッグ」を紹介。電話では日本は電話線を引き、当時のアフリカは電話がなかったが、携帯電話はアフリカの方が普及が早かった。日本の自動車メーカーも動き出し、トヨタマツダデンソーがEV開発で新会社を設立、世界一売れているEVは日産リーフが新型を発表している。車載向け電池はパナソニックが世界1位のシェアを持っている。
人生100年時代の到来
 10月の総選挙は自民党が圧勝。最大の功労者と言われる小泉進次郎議員は「人生100年時代」を何度も繰り返し発言していた。政府も9月、安倍首相の肝いりで人生100年時代構想会議が開かれた。人生100年時代を強調する裏には日本の危機が隠されていた。人生100年時代構想会議は超長寿社会で人々がどのように活力をもって生き抜いていくかの会議。議論の背景に日本を待ち受ける危機がある。高齢者世帯の約3割が老後破綻するという。東京で暮らす夫婦なら年収220万円に満たない人を、生活困窮高齢者世帯とし、20年後には562万世帯となり全高齢者世帯の約3割となる見通し。老後破綻に陥る要因は長生きである。明治・大正時代の平均寿命は45歳前後で、がん・認知症など発症前に死亡していた。現在は男・80.98歳、女・87.14歳となり医療費・生活費がかさむことになる。100歳以上の高齢者数は1967年で253人、現在は6万7824人だという。1963年以降、国は100歳を超えた人に純銀製の銀杯を贈っていたが、去年から銀メッキに変わったという。50年後の100歳以上の人口は64万人と推定されている。現在10歳の子どもの半数が107歳まで生きるともされている。これで老後破綻も増えるという。日本より先にこれが問題となっているのが韓国である。OECD加盟国の高齢者の貧困率ランキングで1位である。高齢者の貧困が多い韓国の実態から無料給食所を取材。午前10時前から近所の貧しい高齢者が集まり、365日昼食が無料で出されている。中にはご飯を持ち帰る人もいる。無料給食所は韓国全土で増加している。ソウル・江南の高層ビルの裏に建ち並ぶバラック街は全て無許可で建てられたもので、1080世帯が居住している。そこには数多くの高齢者がいた。生活が苦しい理由は年金に加入していないことだった。年金制度は1988年に開始し、高齢者の6割が年金を貰っていない。そのため韓国は定年後も働くのが当たり前で、引退年齢72.9歳でOECD加盟国で最も高い。高齢者が働く社会を調査。ソウル中心部に早朝から仕事を求める高齢者が集まるという。高齢者の仕事で急増しているのが宅配業である。高齢者が持つ地下鉄の無料シルバーパスを使い、ガソリン代を浮かせ儲けを増やしている。チョ・ヨンミンの宅配に同行した。チョさんは韓国造幣公社に勤務していたが、年金だけで生活が苦しく69歳から地下鉄宅配を始めたという。高齢者宅配は荷物を電車と徒歩で配達する。同行日の配達先は初めての場所で、迷うことも多いという。電車内では同じ宅配業の高齢者とも遭遇する。その中、地下鉄では高齢者トラブルが増加中である。韓国地下鉄で急増する高齢者トラブルは優先席をめぐる喧嘩である。優先席トラブルは2011年100件から2014年には200件に増加。トラブルの恐れからチョさんは座らないことも多いという。午前9時から午後5時と食事の時間もまともにとれず、歩いた距離は14kmとなった。1日3件の宅配を行い、収入は3300円で、週5日勤務で生活できるレベルだという。近年の経済悪化から就職先も減少し、期間限定の仕事が多いという。街中で見かけるのが高齢者の古紙回収である。高齢者の7割が肉体労働に就いているデータもある。犯罪に手を出さざるを得ない高齢者もいる。韓国の滋養強壮剤「バッカス」を高齢男性に販売し、売春をもちかけるもので、バッカスおばさんと呼ばれ社会問題になっている。最近は都心部での取締りが厳しくなり郊外 に拠点を移している。その1つが韓国の登山スポット「逍遥山」である。登山道には取締中の垂れ幕が至るところにあった。登山道入り口で女性(63)が取材に応じた。ここでは酒・つまみを売り売春を持ちかけるという。売春高齢者の摘発件数は年々増加しているという。
 日本の年金はこれまで60歳で定年の人が多く、受給開始が65歳のため65歳まで働きたい人は会社で雇ってもらうことになっている。受給開始が遅くなると定年も遅くなるという。老後豊かに働くために永田町界隈で「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」という本に注目が集まっている。「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」人生100年時代ではグラットン氏は7、80代まで働こうと提唱している。そのため「学び直し」を提唱している。人生を教育・仕事・引退に分けた時、仕事機関中に学び直しすることで老後の仕事選びの選択肢を広げるものである。都内の英会話教室では60歳以上の入学希望者が増え、シニア向け専門コースを増設した。学ぶ理由に3年後のオリンピックに民泊をやりたいという人がいた。「パソコン教室 かるん♪」ではマンツーマンで教えている。老後に働けば健康で長生きするという報告もある。健康寿命でトップクラスは山梨・静岡などで、高齢者の就業率もトップクラスだという。
働き方改革は”待ったなし”日本と欧米 働き方の違い
 欧米と日本の働き方の違いを解説。高度経済成長期のサラリーマンの様子を紹介。気合・根性で目標っを達成する時代だった。真也に営業研修が行われていた。当時は長時間労働を男が担ってきた。産業革命時の欧米は女性や子どもも働いていた。日本は段階の世代が引退し、働く世代が減り続け、限られた人に長時間働いてもらうと過労死になる。外国人に日本にあって欧米にない働き方を聞いた。朝礼・サービス残業・入社式・定年退職金・人事異動は日本だけだった。日本は4月に一斉入社だが、欧米は空いたポジションに募集をかけるため入社式はありえないという。欧米では自分の選んだ仕事を続けるため「就職」で、日本では就社である。働き方改革のポイントはいかに効率よく働くかである。日本のGDPは3位で、労働生産性では主要先進7ヶ国で1970年から最下位である。第二次世界大戦の敗戦国ドイツでは、日本の1人あたり年間労働時間に比べ、1371時間で約2か月分休みが多いという。ドイツ・ヘルツォーゲンアウラハに本社を構える「PUMA」有名サッカー選手が愛用する他、ファッション業界にも早くから進出。PUMAの働き方を取材。オフィスでは男女カジュアルファッションで仕事をし、午後3時に帰宅する男性がいた。出口で社員証をかざすと、残業時間の合計が出る。年間120時間まで貯められ、有給や早く仕事を切り上げたりできる。上司への報告も必要ない。労働時間貯蓄制度はドイツ企業の8割以上が導入している。ドイツの労働時間は1日8時間で、企業が労働時間を減らすのには、行政が労働時間を厳しくチェックし、悪質だと経営者側が罰金や1年間の禁固刑になる場合もあるという。そのため効率的な仕事が必要となる。時間内に高い成果をあげる方法を取材。PUMAでは少人数での会議が至るところで行われ、時間は15分程度である。上司への報告も最低限である。プロジェクトに取り掛かるスピードも早く、そのため変更・中止の決断もしやすいという。会社側は集中して働ける環境を整えている。防音室があり、集中したい時に使え、話しかけないでというサインにもなる。キッズスペース付きの仕事部屋も用意されている。PUMAには効率アップのため重要視しているのが、ブランド力だという。これまでボルトやペレなどスター選手らとスポンサー契約を結びブランド力を高めてきた。ブランド力を発展させ、高額層を掴むという。ヨーロッパでは良い品は高く売っていくという。日本企業も最近考えるようになり、レクサスは日本車の高性能なのに安いを払拭し、良い品なら高くの成功例だと紹介した。レクサスはBMWメルセデスベンツアウディに次いで4位にまで成長した。これからは高くても買えるよう給料が上がるような循環を作れば労働時間も短くて済むようになる。
●キーワード ・・・日本の危機を紹介してきたが「機」は機会でもあり、チャンスに変えるヒントがある。(池上彰