「君の名は。」

◆父親と東京の都心に住む男子高校生・立花瀧(たちばなたき)と、岐阜県の山奥の糸守町(いともりちょう)に住む女子高生・宮水三葉(みやみずみつは)。朝起きると、ひょんなことから二人の意識が入れ替わり、ドタバタ生活が唐突に始まるところからストーリーが始まる。意識の入れ替わりがなぜ起こるのかは不明。二人は、当初、単純にリアルな夢を見ているのだと思っていました。しかし、朝起きると、週に2〜3回ランダムに二人の体が入れ替わっているので、これは夢の出来事ではなく、これが現実世界の出来事であると認識し、互いの実在を確信するようになっていく。入れ替わった先では、当然お互いの生活のディテールが良くわからないし、入れ替わりは突然起こります。対策として、入れ替わった日の一日の終わりに、お互いのスマホにメッセージを残し合うという風変わりな形で、二人は交流を始めた。戸惑いつつも、二人はやがてお互いの入れ替わった先の生活に次第に慣れて、楽しめるようになっていきます。三葉はあこがれだった都会生活を満喫し、瀧のアルバイト先のマドンナ的存在、大学生の奥寺先輩と交流を深めます。一方で、瀧は田舎の学校生活で一目置かれる存在になり、男子・女子限らずモテまくる毎日に。
 ところで、三葉の家系は、祖母、一葉の代から糸守町の氏神様、宮水神社の神主を務めてきました。三葉とその妹、四葉は、ともに巫女としての家業を務める毎日です。糸守選年の歴史が刻まれている組紐(くみひも)作りや、神楽を舞い、ご神体に奉納する口噛み酒を仕立てる神事などもこなします。口噛み酒作りは神聖な儀式ですが、衆人環視の前で米を噛んで自分自身の唾液と混ぜて、升の中にゆっくり吐き出して作る工程は、やはり見られると恥ずかしいもの。三葉の密かな悩み事でもあるのでした。ある朝、三葉と入れ替わっていた瀧は、一葉、四葉と山の上にある宮水神社のご神体へ、神事で三葉が作った口噛み酒を奉納しに行くことに。その際に、地域の伝承を一葉から聞くことになります。「口噛み酒はあんたらの半分なのだよ」と一葉に言われるもその時は意味もわからず、糸守町の方言で、「黄昏時(たそがれどき)」を表す夕暮れの「カタワレ時」を迎えるのでした。
 そんな二人が入れ替わり生活に馴染んできたところで、ある日、瀧は、あこがれの奥寺先輩とデートにでかけることになります。入れ替わっていた三葉が設定してくれていたのです。デートの日、瀧は本来の瀧として奥寺先輩と会うことになりますが、三葉はなぜか胸騒ぎがして、涙が流れてしまいます。(この時点でもう瀧のことが好きになっていた暗示)三葉は、結果が気になって実際に瀧に会いに行こうと東京に出掛けますが、デート当日、瀧への携帯はつながらず、二人のデートシーンには会えませんでした。三葉が代わりに会えたのは、中学生だった瀧でした。なんと、二人の間には3年の時差があったのです。2016年に生きる瀧と、2013年に生きる三葉。二人は、時空を超えて入れ替わっていたのでした。三葉の世界線である2013年は、瀧はまだ中学生。奥寺先輩とは面識がなければ、三葉にも会ったことすらないわけです。
 偶然、中学生の瀧を満員電車の中見つけてしまった三葉は、瀧の無反応にいぶかしくも思いますが、なんとか別れ際に一声かけ、自分の髪をゆわえていた組紐を瀧に渡して岐阜に帰り、失意のうちに髪を切ってしまうのでした。一方で、2016年の瀧は瀧で、何故か奥寺先輩とのデートだというのに、三葉のことが気になってデートに集中できません。デートで立ち寄った六本木の国立新美術館の展示で、偶然糸守町の写真展示を見つけてしまい、奥寺先輩をそっちのけで食い入るように見つめる瀧。奥寺先輩には上の空であることを見透かされ、「今は別の好きな人ができたんでしょ」と言われてしまう始末です。そして、それ以降なぜか二人の入れ替わりは、二度と起きませんでした。入れ替わりが途切れてしまった瀧は、三葉のことが気になって仕方ありません。そして、自ら描いたスケッチを片手にとうとう現地入りし、糸守町の場所をつきとめます。
 しかし、行ってみたら糸守町は3年前、2013年の彗星落下災害で消滅してしまっており、図書館で見つけた犠牲者名簿に三葉の名前を見つけてしまいます。瀧は、ようやくここで全体像を理解します。三葉は亡くなってしまったので、入れ替わりがストップしていたこと、実は入れ替わりは3年の時差があったことを悟ったのでした。その時、瀧は三葉となってご神体に奉納した口噛み酒を思い出し、これを飲めばもう一度入れ替わりがおきるのではないかと思い、衝動的にご神体のある山上へ向かいます。ご神体の中には、三葉が作った3年前の口噛み酒がありました。瀧が、ためらわず口にすると、瀧の推測通り、3年前、つまり2013年の彗星落下直前の三葉に入れ替わりが起きます。三葉は、代わって山上の2016年の瀧へと入れ替わり、眼前の糸守町の消失を見て呆然とします。2013年の三葉に入れ替わった瀧は、糸守町で幼なじみのサヤちんとテッシーの力を借りて、彗星落下から村人を安全な場所に避難させる作戦を立てます。瀧は、何故かその時山上のご神体に三葉の気配を感じ、三葉を呼びます。そして、神様が気まぐれを起こすという、カタワレ時(=夕暮れ時)がやってくると、互いの姿が目の前に顕れ、二人のこころとからだが元通りに戻り、二人は初めて対面を果たします。瀧は、3年前電車の中でもらった組紐を、三葉に渡して、彗星の災害から糸守町を守る作戦を引き継ぎます。しかし、カタワレ時が終わると、二人はまたお互いが見えなくなってしまい、お互いの名前すらなぜか忘れてしまいます。それでも、三葉は糸守町を守る作戦を成功させ、彗星は落ちて町は消滅したものの、大半の町民は無事に生き延びたのでした。そして、三葉や町民たちは、東京でそれぞれの新たな生活をはじめました。(つまり歴史が書き換わり、三葉は死ななかった)
 それから数年が経ち、大学生になった瀧は就職活動を経て、社会人になります。記憶が風化する中、「ずっと何かを、誰かを探しているような気がする」と漠然と心に引っかかりながら毎日を過ごす瀧。そこで、とうとう偶然に東京で瀧と三葉が出会います。お互いの名前は思い出せないけれど、大切な人。そして、二人は同時に、四谷の須賀神社の階段上で、「きみの、名前は・・・?」と問いかけをするシーンで、終わる。これからの姿がハッピーエンドかどうかはわからないが、それを想像させる場面で終了。