「読んだら忘れない読書術」(樺沢紫苑著)

<ポイント>
1 アウトプット読書術で「文章力」を鍛える
 インターネットの時代では、「文章力」は絶対に必要不可欠な「仕事力」だといえます。
そして、「文章力」を鍛えるほとんど唯一の方法は、キング(※1)の言うように「たくさん読んで、たくさん書く」ことしかないのです。本を読まない。文章も書かない。それでいて、文章力を鍛えることは不可能です。言い換えると文章力を鍛える方法とは、インプットとアウトプットを繰り返すことです。アウトプットを前提にインプットを行い、インプットをしたらアウトプットをする。それをフィードバックして、また別のインプットをしていく。本書でお勧めする「アウトプット読書術」を実践するだけで、文章力は確実に鍛えられます。その中でも、アウトプットによって得られるメリットである「文章力の向上」は、多くの人が身につけたいと願うものではないでしょうか。多かれ少なかれ、私たちは自分の「思い」や「考え」を人に聴いてほしいと願っています。しかし、表現がうまくできないことによって、相手に伝わらなかったり、お互いに嫌な思いをしてしまうことも。
ですから、「文章力が高い」ということは、インターネット全盛の時代、自分自身の思いや考えを多くの人に共感してもらえる大きな力になるのです。そのためにも、読書を「インプット」と「アウトプット」のセットとして捉え、この流れの中で「文章力」を鍛えていくことが人生を豊かにすることにつながっていく。
 そのために、① メモをとる、マーカーでラインを引く。② 本の内容を人に話す。③ 本の感想や名言を、SNSでシェアする。④ 書評、レビューを書く。これらのうち1週間以内に3つ行えば、やらないときと比べて圧倒的に記憶に残る
2 本を読むなら楽しんで。
 「自己成長のため」「仕事に役立てるため」が全面に出ると、イヤイヤする読書につながってしまいます。「仕事のために、今週中に読まないといけない」「資料作成のために、明日までに目を通さないといけない」「レポート提出に必要だから、どうしても読まないといけない」「夏休みの読書感想文の宿題だから、読まないといけない」。このように、「仕事のため」に読んだり、「やらされ感」の中で読書したりすると、絶対にドーパミンは出ません。逆にストレスになり、せっかく読んでも記憶に残らないし、身につくこともないのです。
・本を読む理由は「楽しい」から。
 ただ楽しみながら読むだけで、記憶にも残り、学びも大きく、自己成長につながる。「自己成長」を目的にしないほうが、結果として猛烈な自己成長につながる。
・「何のために読書するのか?」
 これがワクワクするものでなければ、途端に「学び」や「気づき」は大きく減衰してしまいます。ものによっては、全く印象に残らなかったり、全然読み終わらないことも。
 つまり、“本そのものにワクワクする”ということに加えて読書して成長している自分にワクワクする、読書してスマートに仕事できるようになっている自分にワクワクすることを目的として本を選んでみるのであれば、「学び」や「気づき」を深めていくことは十分可能になる。
3 読んだら話す!最強のアウトプット復習法!
 読んだ本について話す。これを意識的に行うことで、本の内容を思い出すことができ、アウトプットによる復習効果が得られる。重要なのは、「おもしろい」「ためになった」を連呼してもだめで、具体的にどこがためになったのか、本の内容を要約しながら、相手に伝えるということです。
自分が「気づき」を得た部分、マーカーでラインを引いた部分などを紹介して伝えると、「気づき」を共感することになり、相手は本を読まなくてもそれだけでためになるのです。
人に本を勧めるには、本の内容を思い出し、さらにそれを頭の中で整理しないといけませんから、アウトプット効果は非常に高い。「アウトプット」は何も書くことだけではありません。最もカンタンで効果の高いアウトプットとして「人に話す」ことがあるわけです。例えば、要約して伝える、大事な部分だけを取り出して伝える、自分の知識と合わせて伝えるなど。インプットした情報を「自分の言葉」でアウトプットするためには、自分自身の中で情報を整理し、再構築しなければならない。
 インプット(読書)→【情報の整理・再構築→アウトプット(話す・書くなど)。このプロセスを通すことで、インプットされた情報の理解は大幅に深まる。読書や講座などを通して得た「学び」や「気づき」を自分の言葉にして伝えていると、いくつもの新しい「気づき」や「発見」「つながり」が見えてくる。
4 本は読みたいところから読めばいい
 本は、「学び」や「気づき」を得るために読むものです。ですから、「学び」や「気づき」を得るために最適な読み方をすれば良い。実用書と呼ばれる本の多くは、最初から一字一句読む必要はありません。なぜならば、それらは何らかの方法やノウハウについて書かれた本ですから、最も重要なのは「方法」の部分なのです。しかし、実際の書籍には「根拠」「裏付け」「実例」なども、ページの多くを占めている。まず、「この本で一番知りたいことは何か」を考える。その知りたい部分を先に読んでしまう。まず本を開いたら、目次を見て、一番知りたいことが書かれている部分が何章にあるのか目星をつけて、その結論が書かれていそうなところに、いきなりワープします。
5 スキマ時間を活用する
 まとめて読書するよりも、「スキマ時間」に読書した方が記憶において有利な点が多いといわれています。その理由は、制限時間を決めると集中力がアップし、脳が高いパフォーマンスを発揮するから。通勤電車のようなスキマ時間は、「電車が駅に到着するまで」という時間制限があります。この制限が集中力を高め、記憶力を高めてくれる。適度な難易度の目標を設定する。その際「頑張ればギリギリ達成できる、ほどよい難易度の目標」を設定すると、ドーパミンが分泌されてより集中力が高まるので、記憶にもさらに残りやすくなる。たとえば「◯◯駅に着くまでの15分で1章を読み終えよう!」「15分だけ早起きして、会社近くのカフェで1章を読んでから出勤しよう」といった目標を設定してみる。なぜ15分なのかといえば、それが「極めて高い集中力が維持できる時間の最小単位」といわれているからです。人間の集中力には限界がある一方で、誰にでも集中しやすい時間単位というものが存在します。それが「15分」「45分」「90分」です。中でも「15分」という時間は、脳科学的に見ても「極めて集中した仕事ができる時間のブロック」であるといわれている。
 また、何か物事を行う場合、初めと終わりには集中力と記憶力が高まることが知られており、心理学では、この現象をそれぞれ「初頭努力」「終末努力」と呼んでいます。「さあやるぞ」という最初の頑張りと、ゴールが見えたときの「もうひとふんばり」という最後の頑張り、このタイミングで集中力が高まった経験は誰もがあるでしょう。15分の読書なら、「初頭努力」で5分、「終末努力」で5分として、合計10分の「記憶力の高い状態での読書」が可能になるということです。 忙しくて読書をする時間がないという人でも、1日の中に「15分を超えるスキマ時間」というのは意外と多くあるもの。その15分の細切れ読書でも、60分の連続読書以上の効果が得られると知れば、読書のモチベーションも高まるはずです。スマホゲームやSNSチェックだけに使わずに、ぜひスキマ時間を読書にあててみてください。まずは「月に7冊」を目標に。この数字は、読書量において日本人の上位4%に入ることを意味します。「読書量と収入は比例する」「成功している経営者のほとんどが読書家である」「読書をすると文章力が磨かれる」など、読書のメリットを知るほど、細切れの15分の使い方について真剣に考えるようになるのではないでしょうか。