「小沢主義」_

 さほど長い本ではないんですが、「選挙の重要性、政治不在(政治家と官僚)、お上意識からの脱却、リーダーの条件、日本の外交、日本復興は教育から」と今の日本の問題点をストレートかつ明快に取り上げている。そして、いかにも小沢さんらしく「原理原則を曲げず」「正しいとことを恐れず行う」等々。あらためて「小沢さんにトップをやらせてみたらどうか」と本気で思いました。実は、小沢一郎もやはり日本を憂う、一人の政治家ということでした。志高い人です。
 1.選挙活動は地道な戸別訪問。今でも大事にしてます。
  まず、驚いたのは、選挙についてである。どぶ板選挙こそ、民主主義社会の原点であるという。選挙の時に、良く耳にするのは、「自分が今まで  や ってきた仕事での経験を政治に生かしたい」ということだ。小沢さんはこれに対して、一人の人間が仕事を通じて得た知識や経験だけで、政治をやってもらっては困る。世の中にはいろいろな仕事に就き、さまざまな境遇に置かれている人々がいる。そうした人たちの生活すべてを引き受けるのが政治なのだ。だから、新人政治家の第一の仕事は、そういうさまざまな人たちのところに飛び込んでいって、その人たちの話に耳を傾け、その人たちの抱えている問題を知ることである。
 2.官僚は無責任なので嫌い。
 とにかく官僚主導は止めましょうと終始徹底していました。理由は、官僚には結果責任がないからです。失敗しても責任を取る必要がないので真剣味に欠けるのだそうです。また、政治家が簡単に官僚を交替できません。そもそも、官僚は国民に選ばれたわけではないのです。政治家は選挙によって国民から選ばれ、政策を振るうのですが官僚は頭が良いという事だけで日本の方向性を決めてしまいます。「権力は腐敗しますが、絶対権力は絶対に腐敗する」
 3.自民党を離れたのは、二大政党制にしたいから。
 戦後の日本では自民党が長く与党の座にいました。しかし、政権交代のないところには真剣な政策論争も起きません。また政権与党からは自分たちが国民から国政を預かっているという緊張感も失われます。このままでは日本はマズイですと。だから自民党を離脱したのだそうです。
 4.尊敬する人は、福沢諭吉大久保利通坂本龍馬です。
 福沢諭吉は望めば政府に入れたのに在野の人であり続けたこと。大久保利通は旧友で同士であった西郷隆盛を私情を挟むことなく制圧したこと。坂本龍馬は当時誰も考え得なかった「船中八策」という新国家構想を提言したこと。現代は大正時代に酷似しているそうです。その中で答えは歴史にあると言ってました。そういった意味でも、小沢一郎さんは歴史にかなり精通していると言えそうです。
 5.実はこう見えて、日米同盟を一番重要と思ってます
 意外や意外、日米同盟を一番重要視してます。その上で、対等な関係を築きましょう、とありました。アメリカのご機嫌取りはやめましょうという事らしいです。
 6.小泉首相靖国参拝の問題点は、中途半端なこと
 堂々と靖国神社に参拝すればいいのに、と小沢さんは言ってます。「八月一五日の参拝」や参拝しても本堂には入らず、また「内閣総理大臣 小泉純一郎」という記帳もしてません。つまり、私人として参拝しただけですと。そういう姑息な事をせずに、説明して堂々と参拝すればいいじゃないか、という事です。
 7.毎年中国に行くのは、オヤジ(田中角栄)が成し遂げた日中国交正常化を絶やしたくないから。
 小沢さんは年に一回「長城計画」という名目で、中国との交流事業を実施しているそうです。マスコミとか見ると、「中国の犬」とか「中国のご機嫌取り」などの見出しがあり、あまり良いイメージはありませんでした。しかし、実際は小沢さんはそういった交流事業でも言うべきことは言っているそうです。中国に行くと度々靖国神社の参拝について話題   に上がるそうです。小沢さんはその都度こう説明しているそうな。「どこの国でも、自国のために命を捧げた国民に敬意を払うのは当然のこととされている。我が国においては、それが靖国神社であって、そこに行って日本人が感謝の念を示すことに他国から文句を言われる筋合いはない」とね。ちなみに、この交流事業は日中国交回復を成し遂げた田中角栄元首相の「両国の友好親善のためには草の根レベルの交流が大切」という精神から、自民党時代の昭和六一年から行っているそうです。
 8.国連に軍隊が必要。先駆けて日本から出したら良いかも。
 これ、初めて聞いたのですけど、小沢さんはかねてから理想として提唱していることがあり、それは日本が世界に先駆けて、国連に軍事力を提供しようということです。国連にたくさん問題があることは認識しているけど、190カ国も加盟している組織なんて、国連以外ありません。この巨大な組織を活用しない手はありません。しかし、国連で一番弱いのは、警察力と軍事力がないことです。そのため、国連が警察力を持てば、世界平和に貢献できる、そこでまずは日本が軍事力を提供しましょう、とありました。ちなみに、自衛隊ではなく、国連向け専門の軍隊を派遣しましょう、とのこと。この軍隊は国連の指揮下に入り、国連の指揮のもと任務に当たります。
 9.愛国教育を必要と思わないのは、強制するものじゃないから。
 民主党って、愛国教育嫌いそうじゃないすか。見方によっては、反日的な教育を目指してんのかな、と映ります。しかし、愛国心は強制的に与えるものじゃないから、という哲学が小沢さんにあるからだそうです。第二次世界大戦時は、徹底して愛国心を植えつけました。お国のために命を投げ出す覚悟を持つために。しかし、捕虜となった日本人の中には速攻で情報を漏らした人もいたそうです。なので、強制的な愛国心にはあまり意味はありません。本当の愛国心は日常生活の中、家庭生活や社会生活の中で生まれていくものだと、小沢さんは言います。
 教育ついでに言うと、今の日本の教育の問題は最終責任者が不在という事なんだそうです。教育方針を決めるのは、教育委員会文部科学省です。しかし、お互い責任を持たないような法制度になっているから、やりたい放題の最悪の無責任体制になっているそうです。ここに大問題があるとありました。そこで小沢さんは、国家に最終責任を持たせれば良いのではないか、と言ってます。これだけで、かなり違った形になるとありました。
 そして、小沢さんは、「リーダー」について次のように語っている。小沢さんによれば、日本はコンサセンス社会であるという。コンサセンス社会とは、何事を決めるにしてもメンバー全員一致を旨とする社会のこと。(60p)たとえ正しいことであっても、そして反対する者がごく少数であったとしても、反対を押し切って物事を決めるタイプの指導者は「人徳がない」と批判され、人々からの支持を得られない。それが、日本社会の伝統だ。私は、このコンサセンス社会こそが、民主主義であると考えている。しかし、それは、平穏な時代に限ってのことではないかと思うようになった。合議制では、「誰が最終責任者か」ということを不明瞭にしてしまう。「みなで決めた」とは、結局は「誰も責任を取らない」ということに他ならない。ここに日本型コンサセンス社会の限界があると僕は思う。危機や難局に直面したとき、何よりも必要とされるのはスピーディな決断だ。ぐずぐずと合議にかけ、日本的な「根回し」をやっているうちに危機はさらに深刻なものになる。太平の世ならば議論を尽くすこともプラスはあるが、現代の日本にはそれだけの余裕はない。変化の激しい現在の社会では、限界があることを感じたのだ。 このようなことで、リーダーというと、独裁とかワンマンとか感じるところもある。しかし、リーダーを選ぶのは、あくまでも国民である。結果がでなかったのならば、国民の幸福とは違う方向へ向かったのであるならば、権力の座から引きずり下ろすこともできるのだから、いったん国民が選んだ人物に任せてみてもいいのではないかと思ったのだ。
 いま、まさに、日本は、世界は、大きな変革期にあろう。この本を読んで、100%理解し、100%賛同すると断言することはできないが、小沢一郎さんという人物を信頼してみようと思った。