「大都市制度のあり方について」 (私見)

                      
1 基本的な考え方
 大政奉還、王政復古令等の明治維新を経て、明治政府による天皇親政体制へ日本の体制は転換をされ、中央官制・法制・宮廷・身分制・地方行政・金融・流通・産業・経済・教育・外交・宗教政策など多岐にわたる体制を整備した。富国強兵政策等により、欧米列国の背中をみながら、追いつけ、追い越せと日本をアジアで最初の西洋的国家体制を有する近代国家へと変貌させた。
 そして、戦後は、敗戦により、日本国憲法を施行し、国民主権体制による民主国家へ大きく転換し、主権在民象徴天皇制戦争放棄、男女同権などの理念を盛り込んだ。また改革の大きな柱として戦争協力者の公職追放財閥解体、農地改革などが行われた。講和条約を経て、アメリカの支援により、高度経済成長を果たし、世界でも有数な経済大国となった。
 そして、今、構造改革政権交代が行われたにも何も変わらず、GDP世界第三位の経済国、40数千振りに、貿易収支赤字に転落するなど、いま、日本はまさに没落しようとしている。こうした根本原因は、明治以来の様々な分野における中央集権体制体制や中央省庁による規制のひずみが大きな要因であり、国の役割と地方の役割・国と大都市圏の役割等、地方分権のあり方を含め、新たな制度設計をし、国の仕組みを構築しなければならない。例えば、東日本大震災という国難に対しても、国が内容を決めて、財源を配分するという現状の実施方法では、1年をまもなく経過してもまだまだ何ら進展していないことに代表される。国が最低限の方向性を示し、財源を移譲し、具体的な計画は各地方公共団体に計画策定・実施することにより、再生していくのではないだろうか。原発事故の復旧を国が早急に行うことを優先し、エネルギー対策についても、産業・経済と関連するものであり、地方に任せる方向でいけばより、地域の特性を生かしたものができるのではないか。確かに、中央集権型の国家システムは、確かに戦後日本の発展を支えてきたことも否定できないが、一方で、時代が変わり、国の成長とともに社会は成熟化して多様化も進んでいる。地方交付税や国庫負担等により、全国一律の仕組みでは対応しきれない問題が多くなってきた。50年度の推計人口が3割減し、勤労者一人が高齢者を支えるという世界にも類を見ない少子高齢社会を迎えた中では、なおさら国の仕組みを大きく変革しなければならない。

2 大都市圏の将来像
① 現状の課題・・・現行の市は基礎自治体としては広すぎ、広域行政を担う組織としては狭すぎる。もはや前世紀の遺物と化し、住民や企業にとってはむしろ不合理な存在になっている。所得向上や雇用拡大の都市戦略、住民に密着した行政サービスの両面で、現行の市域に固執する意味は全くない。今の大都市といわれる、東京や大阪にしてもこのままの状態では、国際的な都市間競争に負け続けることになろう。現在の大都市といわれる大阪にしても大阪都構想の現状からみると競争に耐える基盤整備ができていないようである。現在の大都市は、中央集権化し、制度面でも、財政面でも自立できず、さらに都道府県と政令指定都市の二層構造になっており、地域全体の成長戦略、大胆な投資で意思統一ができない。世界的にみても中途半端な都市になっている。
② あるべき方向性
 地域を足場にする企業も、いまや国境を越えて地球規模で競争する時代である。日本の貿易の50%を超える相手国である上海・シンガポール台北・香港等の中華圏やソウルの韓国等のアジアの大都市と競争していくには現状改善型の行政改革ではなく、過去を壊して新たな国の仕組みを作り直すような改革が必要である。
 国体を考えれば、社会保障制度や教育、産業等の
シビルミニマムは国で基本を決めるべきという意見もあろうが、国の権限の一部を地方に移譲するだけでは、本来の地方分権にならない。権力を手放す側の中央省庁が抵抗し続け、改革も中途半端な結果につながる。2年半前、「明治維新以来の中央集権体制を抜本的に改め、地域主権国家へ転換する」と政権公約で高らかにうたった民主党政権であっても、官僚の抵抗にあい、省益に負けて、新しい国づくりの道筋さえ、示されていない。中途半端な改革では国は、省益を守り、何の改革もできない。
ダイナミックな改革をするために、国は外交や防衛、司法など本来果たすべき役割に限定し、内政面は基本的に地方に担わせる。具体的には、金融・流通・産業・経済・教育など多岐にわたる内政面は地方に任せ、地方交付税制度・国庫負担制度を廃止し、地方に財政自主権をもたせるべきである。地方において、その地域における広域行政を担当するのが、大都市圏である。東日本大震災で大きく傷ついた日本が復興を果たし、再び世界で輝くには個性豊かな地方の潜在能力を生かすことが重要であり、地域主権型の国づくりは欠かせないものである。でも、現実には復興特区を国が認可するという旧態依然の中央集権体制である。
いわゆる指定都市と呼ばれる大都市は、横浜のように、川崎市を挟んで東京圏と隣接している都市もあれば、韓国の玄関となっている福岡、日本海の物流の中心となる港湾を抱える新潟、歴史的観光資源を抱え、大阪府に隣接する京都など、様々な都市がり、広域行政体が誕生すれば、アジア等の海外だけでなく、国内の都市間競争を行えば、日本全体の経済成長も夢ではない。仕組みについても、都市により異なるものであり、一国多制度の地方の仕組みの大都市制度を構築すべきである。そして、最終的には、道州制などの広域行政圏として、は国と地方の役割を抜本的に見直し、財源も含め地域政策の決定権を地方に移譲していくべきである。まして、昨年11月のダブル選挙圧勝という大阪府民・大阪市民の意向を踏まえ、政府は国の出先機関を原則廃止して事務や権限をブロック単位で地方に移管する方針を決め、今年の通常国会に関連法案を提出する予定のようだ。ただ、国がしてきた仕事や組織を丸ごと引き継ぐだけでは意味はない。地方の組織が膨れるだけで、行政の効率化や地域活性化にはつながらない。

③ 大阪都構想について
大阪都構想は、府と政令市の役割を見直し、広域行政を都に一本化する一方、特別自治区中核市並みの権限を持たせ、住民に密着した機能を担わせる現在の東京都の都区制度である。膨大な行政資産、豊かな個人資産、就労していない女性の労働という3つをうまく活用することができれば、サービス業を主体にした内需を喚起できる。ビジネスも海外からの資金や人材を取り込む試みを大阪全域で展開できる。鉄道、水道などインフラ整備を戦略的な輸出事業にすることも可能であろう。
 現在、都区制度のある東京都は、アジアネットワークを活用し、中型航空機の開発、水道などのインフラ整備等の輸出事業を展開し、都内中小企業の技術セールス、観光サービス等も実施し、またファンドを活用し、エネルギー問題のために天然ガス発電所建設計画も検討している。まさに、大都市としての広域行政の一例であるが、都区制度を活用した事例である。(この東京都であっても、アジアヘッドクオーター構想でも、国の特区構想に認可するなど、国は、規制と権限を譲る気がないが。)
 特別区である基礎自治体大阪都である広域自治体は、あくまでも主役は基礎自治体であり、ここの利害を超えて圏域全体の視点で考えるべきものを広域自治体である大阪都が担うものである。福祉・子育て、保健・衛生、義務教育等住民の「安心」を支える役割を基礎的自治体である特別区が担うものであり、大都市としての圏域における都市計画、産業・雇用政策、広域インフラ整備など圏域全体の視点の役割を担う広域自治体が大阪における自治体像であり、大阪都構想である。
 大阪都構想を推進する大阪府民。大阪市民が、松井知事、橋下市長を昨年11月に選んだものであり、まさに、大阪の住民の意思であり、大阪都構想を実現することが、日本国憲法地方自治の本旨に沿うものである。
 この選挙結果は、地方分権を推進するうえでも非常に重いものであり、府民ではない私も支援していきたい。国の統治機構全体の改革を進めるうえで、中央集権体制へ大きく風穴を開ける好機であり、実現できるものと信じている。