『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』(高橋 秀実著)から時間管理を学ぶ

◎『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』について

●開成といえばお正月にどこかの進学塾が学校の前に生徒を連れて行って「かいせい、ごうかく!かいせい、ごうかく!」とやる風景のイメージが強烈に残ってるんですが(私が中学受験した頃=30年以上前の話です)、その後、大学の同級生に開成出身者がいたり、学校も会社も関係ないところで開成出身者と親しい関係になったりして開成高校の卒業生をリアルに知る機会が増えてくるに連れて、開成の人はスマートであると感じるようになりました。いわゆるガリ勉的イメージ(「ガリ勉」なんて言葉は今もあるのか?)とはぜんぜん違うんですね。もっとも、私が中学生だった頃でも、開成といえば(勉強一筋ではなく)運動会、というのは(東京都内局所的かもしれませんが)それなりに有名でした。中学生と高校生が混じってやってつねに骨折はじめ負傷者が出るというのは、どこかから伝え聞いてはいました。そんな開成高校(東大合格者数日本一)の野球部(東東京大会でベスト16!)を追ったこの本、大真面目なルポではあるのですが、著者が大真面目にとらえようとしている、厳しい制約条件の中で目的にを追う「考える若者」たちの思考と行動には学ぶ点が多い。

●「開成高校野球部のセオリー」でいちばん大事なことは、この本の最初のほう(16ページ)に書いてあります。
「一般的な野球のセオリーは、拮抗する高いレベルのチーム同士が対戦する際に通用するものなんです。同じことをしていたらウチは絶対に勝てない。普通にやったら勝てるわけがないんです」これ、青木秀憲監督(群馬県立太田高校→東京大学)の言葉です。すごく本質を衝いてます。同じようなことは、たとえば、スポーツ選手が子供にスポーツの楽しさを教えるのは正しくない(スポーツ選手はもともと運動が得意だったから楽しいに決まっているわけで運動の苦手な子供は運動ができる人に何か言われることがむしろ苦痛)、ビジネスマンの時間管理術は一般のサラリーマンには役に立たない(欧米由来の時間管理術は分刻みスケジュールで動いているエグゼクティブ向けのものだから)、といったことでもあるわけですが、高校野球でこんなことを言った人は見たことがないです。
●著者がピッチャーの選定基準についての話を監督さんに聞いているところで、
  - 安定的なら、ピッチャーはつとまるんでしょうか?
  「勝負以前に、失礼があってはいけないと思うんです」
  - 失礼?
  「球がストライクゾーンに入らないとゲームになりませんから、それは相手に対して失礼なんです。とにかくウチは試合をしたいわけです。試合をする  には、打たれるにせよストライクを安定的に入れなければいけないんです」
●著者が外野手をやってる子に、なぜ外野なのかと聞いたところ、
  「外野は涼しいんです」
  - 涼しい?
  「内野は緊張するじゃないですか。でも、外野って全体を客観的に見れるんです。気持ち的に余裕があって、それで涼しく感じるんですね」
●野球は不確実性のあるゲームだから甲子園にしても絶対行けないとはいえない、というので、
  - でも、強豪校と違ってグラウンドで週一回しか練習してないでしょ。
  私が指摘すると、彼はこう反論した。「それはどうなんでしょうか。僕は練習はしすぎるとよくないと思うんです。練習することが当たり前になって、  『明日やればいいや』とか考えて、集中力が欠けて意識が下がるような気がするんです」
   つまり、野球も哲学なのかな。とっても味わい深い本なのです。この中では、守備は下手で、練習環境にも恵まれない開成野球部が勝つためには、   「ドサクサ大量得点」を狙うというセオリーが云々、というのが主題なのだけど、私には野球のことはよくわからないのでそれはともかく。すごいな、  と思ったのはそこに集う人材(部員)の「続ける力」の強さである。
●「僕は集中力が1時間しか持たないので、勉強も1時間で区切るようにしているんです」という子は、まず夕食前に勉強して素振り、夕食は親に頼んで「7  時」と決めてもらっていて(そうすると夕食時間が休憩時間としての効果を持つから)、食後はまた勉強して素振り。そして風呂に入る(休憩時間とし   て)。それから9時から10時まで勉強して素振りしたあとに、弁当箱をきちんと洗う(これも休憩?)そしてまたちょっと勉強して11時就寝。
  この合理性と無駄のなさ…
● 別の、無駄の排除(バッティングの際の力の集中)がテーマだという子の場合、日常生活でも「ムダの排除」を実践しているそうで、学校が終わるとまず 塾の自習室にいき、「一気に集中して勉強」してしまう。家に帰ったら完全リラックス。「自習室ではとりあえず全教科にひと通り触れるようにしていま す。1日やらないと取り戻すのに2日かかるといわれていますから、そういう面倒なことを避けるためです。1時間ほどかけて全教科を見て、あとの時間で 宿題や苦手な分野、テストの準備などをします」行きの電車は英単語など暗記もの。帰りの電車はゲームなど遊びと決めている。

 自分に必要なことを見極めて、それに必要な作業をブレイクダウンして、緻密な日常生活に組み上げ、それをたんたんと実施する。こういう「努力のかたち」ってのは、できる人とできない人がいるもので、ここまできっちりできるのは才能というしかない。まさに、我々が学ぶべき時間管理がある。気分の切り替え、効果的な反復による記憶やスキルの定着。時間を限ることによる集中こうか。調子と状況による柔軟な計画。スキマ時間の活用。
 
 まさに、開成高校野球部に時間管理を学べ。

○ 『火鍋家西安』について
 今日は立冬。昨日とうって変わり、温かい一日であった。でも、これからは鍋が美味しい季節である。
 夕方秋葉原西安(シーアン)で火鍋を家族で仕事帰りに合流して食べる。まさに、辛いが身体が温まる。娘が疲れた時によく行く店である。たまには、家族で食事もよいものである。