『10分あれば書店に行きなさい』(齋藤 孝・メディアファクトリー新書) から

【ポイント】
・書店で知的な刺激を受ける
 日々の仕事は、いやがうえにも常に変化する。そのつど、最適な方法を考えて対応する必要がある。これは大きなストレス要因だろう。しかし刺激に慣れておけば、少なくともあわてふためくことはない。そのトレーニングとして、書店に通う習慣が功を奏するのである。いわば「刺激タフネス」を身につけるわけだ。ただし、たまに立ち寄る程度ではトレーニングにならない。できれば毎日、ほんの10分でも時間を見つけて訪問する、それをずっと続けることが最低ラインだ。
・書店で頭の健康を維持する
 健康のためにウオーキングなどを日課にしている人は少なくない。ではなぜ、頭の健康を維持するための工夫をしないのか。私の知る限り、地アタマというよりも頭の健康状態に問題を抱えている人は少なからず存在する。自分の能力に疑いを持ち始めたら、嘆く前にメンテナンスすることをおすすめしたい。そのための書店通いだ。しかも、これは体を酷使するよりずっとラクで、しかも大きな効果を得ることができる。実践しない手はないだろう。
・待ち合わせは書店でする
 たとえば、相手が10分遅れるとしよう。外で携帯電話をいじりながら待つ手もないわけではない。だが書店にいれば、その10分で得られる知的な刺激は相当なものだ。なんとなく店内をぶらぶらすると、ふと興味を惹いた本のタイトルが目に飛び込んでくる。手に取ってパラパラめくり、「こんな世界があったのか」と驚く。不意打ちを食らうようなものだから、こういう経験のほうが印象に残りやすい。
・書店で知恵を借りる
 書店に行けば、大学の先生をはじめ古今東西の各界のプロたちが、著者としてズラリと揃っている。言い換えるなら、彼らが自らの名にかけて相談に応じようと手を挙げ、ライバルや世間の動向も気にしつつ、手取り足取り指導しようと必死になって書いたのが書籍なのである。しかも、書店はいわば「読み手市場」だ。どれほど丁寧に書かれた一冊でも、丁寧に読んでやる必要はない。無数の本のなかから適当に手に取ってパラパラめくり、役立ちそうなメッセージだけをその場で吸収して「もう用はない」とばかりに書棚に戻す。この作業を繰り返せば、たちまちにして人類の叡智から幅広くヒントを集めることができるわけだ。
・書店でデザインやキャッチコピーのヒントを得る
 装幀を楽しむという観点で書店に行ってみるのもいいかもしれない。平台で展開されているのは、さながらカバーデザインの見本市である。新書や文庫に押され気味の、お世辞にも売れ筋とはいえない単行本が中心になるが、だからこそ必死の形相がうかがえよう。文字の色や配置、写真やイラストの使い方、オビとのバランスやそこに書かれたキャッチコピー等々、見どころは満載だ。本に限らず、今やデザインはどんな商品やサービスにとっても大事な要素だ。その感性を磨き、ヒントを得ようと思うなら、書店は最適な空間といえるだろう。