今日は一月下旬なみの天気だそうだ。そして 「世界の中で求められる新しい日本人像」

 あすも最高気温9度で二桁に行きそうもない。12月に入り、例年になく寒い日が続いている。今日は一日デスクワークの生活。

 帰宅後、部屋の掃除をして夕食。疲れたせいか、入浴してそのまま床に就く。

講師:寺島実郎氏(日本総合研究所理事長・多摩大学学長)
日時:2012年12月19日(水)19:00〜20:30
場所:長崎大学 主催:長崎大学 共催:長崎新聞社
■今回のリレー講座のテーマは「長崎からグローバルを考える」ということだが、私は、空海が日本の国際人の原点だと思う。「空海?」と思われるかもしれないが、いろいろな文献を調べたところ、大変すごい人だということがわかった。
さらに、国際人の先駆けとして、鈴木大拙(※)、新渡戸稲造などが続く(※川嵜注:鈴木大拙は、禅に関する本を英語で書き、海外に禅の文化を伝えた仏教学者)。
空海は唐に渡っている。日本からいうと遣唐使だが、中国から見ると朝貢使節の一環だ。それが、空海は今でいうと、留学してMBAをとったぐらいじゃなくて、大学の学長になって帰ってきたようなもの。それくらいすごい。
当時の長安はグローバル都市だが、そのトップに立って日本に帰ってきている。
空海は、論理的なところなどから、理科系の人だったのではないかと思う。
真言密教の経典だけでなく、先端技術を日本に持ち帰ってきている。薬学、土木工学、冶金工学など。修験種智院は、技術を教える学校だ。
空海は、当時の日本の都心のど真ん中に活動の拠点をおき、高野山に精神の拠点をおいた。彼は、一種のシステムエンジニアではないかと思う。組み立てて、システム化して、展開していく力をもっていた。
最澄は、空海に比べるとたいしたことのない人とも見られているが、最澄もすごい人だったと思う。最澄はエリート中のエリートだ。最澄に比べ、空海は末席で遣唐使に行っている。その末席で年下の空海に、最澄は頭を下げて教えてもらう謙虚さがあった。また、自分の下にたくさんの人を育てている。
新渡戸稲造は、明治期の日本から世界に飛び出していった人。札幌農学校の2期生だが、クラーク博士には会っていない。なぜなら、クラークは、1期生の8カ月で帰国しているからだ。
・クラーク伝説と現実というのがある。クラークは、お金で雇われたアメリカ人の一人だが、血の騒ぐ人、やっかいな情熱家、山師的な性格であったと思われる。帰国後、訴訟沙汰になっている。8カ月で帰ったのがよかった。1期生が語ったクラークのイメージが、会ってもいない人たちに伝わって、膨らみ、伝説になった。新渡戸稲造も会っていないのに、影響された一人。
新渡戸稲造は、多面性をもった人で、自分に誠実であるがゆえに鬱的でもあった。新渡戸は、アメリカのボルチモアで、経済、文学、歴史を学んでいる。超ベストセラーを出し、ものすごい大金持ちになって、6000坪の家を買っている。ベストセラーになった本は、よく知られている「武士道」ではなく、「世渡りの道」という立身出世のハウツウ本。
新渡戸は、世俗的な成功者であったため、内村鑑三に「堕落した」と言われた。内村鑑三は、内に向き合った人。新渡戸は、日本人に目を開け、広い世界を見よと言っている。
・国際社会は、自己主張が吹き荒れるところ。そこで、日本の立場をどう説明するか。自己主張の嵐の中、苛立ちの中でのゲームである。きれいごとではすまない。日本人で、国際社会で活躍している「プロジェクトマネジメント・スペシャリスト」は少ない。多国籍軍を率いて、尊敬を勝ち得るのは難しい。メンバーは、自己主張が激しく自信家の人たち、専門性に優れている人たち、そんな人たちを率いていくには、宗教、思想、哲学など、きちんとしたものをもっている必要がある。
・「グローカリティ」という言葉がある。グローバルに考えながら、地域性、アイデンティティをもっている。地域に愛着をもって、グローバルな視点で問題点を解決するあり方だ。
・多摩大で、「多摩学」というのをやっている。多摩は、相模川多摩川に挟まれた土地。ここに八王子という場所があるが、「千人同心」という、普段は農民で、何かあれば武器をもって戦う仕組みがあった。新選組に2人も送り込んでいる。千人同心は、1800年蝦夷地防衛にも行っている。
・長崎も世界史につながる場所であり、これからは「グローカリティ」をもった人が求められる。
■片峰学長との対談から
・オランダは、実利を重んじる商人国家で、出島に来ていたのは、東インド会社という一企業。オランダの国の代表が来ていたわけではない。
・日本は17世紀のオランダ(黄金時代)を参考にしたほうがよい。
・さらに、今、オランダ、デンマーク、ドイツなど、北欧の経済は持ちこたえているが、これらの国は、まじめにコツコツと働くのをよしとするプロテスタント。何か示唆的な部分がある。
・私は、以前、「アメリカを見るのならオランダの目線で見ないといけない」と言われたことがある。欧州の視点で見ないと、確かに、正しい姿は見えてこない。
・戦後の日本人はアメリカを通じてしか世界を見ていない。けれども、欧州や中東、大中華圏などからの見方がある。一面的な見方ではなく、ネットワーク型で日本を考える必要がある。たとえば、中国を考えるとき、本土のみならず、シンガポール、台湾など、華人、華僑の連結した中国、大中華圏で考えたほうがいい。
同様に、イギリスも、イギリスの影響力のある国、いわゆる英語圏を見る必要がある。
・長崎は、恵まれている故に気づいていないことも多い。
・地域活性のプロジェクトを立ち上げ、いろいろな人が参画するようにしたほうがいい。
・たとえば、3.11の後、防災のプロジェクトを行なっている。携帯、コンビニを活用するというものだ。水回り、トイレ、風呂などもユニットで考えればよい。泊まるのも、カプセルホテルの技術が使える。カプセルごと運べばよい。医療カプセルもできる。
・日本の現状で問題なのは、知的基盤が劣化しているということ。昨年度の大学院卒は9万6千人。このうち2万4千人が無業者、3万人が非常勤。いわゆる高級フリーター。大学院を出ても働く場所がない。仕事の基盤が危うい。社会不安の原因にもなる。産業基盤を整える必要がある。
がある。グローバルに考えながら、地域性、アイデンティティをもっている。地域に愛着をもって、グローバルな視点で問題点を解決するあり方だ。