「地域おこしのカリスマ」

◆「地域おこしのカリスマ」・・・「ローマ法王に米を食べさせた男」(高野誠鮮著・講談社)から
 高野誠鮮(じょうせん)著『ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』(講談社刊)1,470円という本だ。「誠鮮」とは珍しいお名前だが、実は日蓮宗のお寺のお生まれである。《科学ジャーナリストで、日蓮宗僧侶、平成6年から平成18年3月31日まで金沢大学理学部大学院等の講師も務めた》。
 本書の「著者プロフィール」には《石川県羽咋市役所農林水産課ふるさと振興係課長補佐。1955年、羽咋市生まれ。科学ジャーナリスト、テレビの企画・構成作家として「11PM」「プレステージ」など手がけた後、1984年に故郷に戻り羽咋市臨時職員となる。NASAやロシア宇宙局から本物のロケット等を買い付けて宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」を開館し、全国で話題に。正職員として神子原地区再生プロジェクトに成功し「スーパー公務員」と呼ばれる》。現在の所属は、同市文化財室・歴史民俗資料館付。AMAZONの本書「内容紹介」によると《過疎高齢化により18年間で人口が半分に落ちこんだ“限界集落”の石川県羽咋市の神子原地区を、年間予算60万円で、わずか4年間で立ち直らせた“スーパー公務員”・羽咋市役所職員の高野誠鮮氏。神子原地区の米をローマ法王に献上することでブランド化に成功させる》。《農家が株主となる直売所を作って、農民に月30万円を超える現金収入をもたらす。空き農家を若者に貸すことでIターンを増やす。アメリカの人工衛星を利用して米の品質を見抜く。『奇跡のりんご』のりんご農家・木村秋則氏と手をむすんで、JAを巻きこんでの自然栽培の農産物つくりを実践し、全国のモデルケースとなるなど、その活躍ぶりは際立っている》。《本書では同氏が手がけたさまざまな「村おこし」プロジェクトを紹介。これを読むと、仕事のアイディア力が増す、商売繁盛のヒントになる、そしてTPPにも勝つ方法を学ぶこともできる! 》。確かに本書は、「なるほど、こんな手があったのか!」と目からウロコのアイデアのオンパレードである。
 過疎の村を卓越したアイデアと行動力で再生させる。石川県羽咋市の市役所職員・高野誠鮮氏は2005年、過疎高齢化で「限界集落」に陥った農村を含む神子原(みこはら)地区の再生プロジェクトに取り組んだ。本書は同プロジェクトが大成功を収めるまでの経緯、顛末を高野氏自らが振り返ったものだ。プロジェクトの年間予算はわずか60万円。しかし高野氏は、「空き農地・空き農家情報バンク制度」「棚田オーナー制度」「烏帽子親農家制度」「直売所『神子の里』」等の数々のユニークなアイデアを打ち出し、驚くべき行動力で、反対したり自ら動こうとしない地元農業従事者たちとの、粘り強い交渉や激励によって実現させていく。その結果、4年間のうちに、多くの若者を誘致し、農家の高収入化を達成する。なかでも農家たちが自主的に運営する直売所は、平均年間所得87万円だった農家に十分な収入をもたらしただけでなく、さらなる発展にも寄与する「自分で考え行動する」農家を生み出した。
 「烏帽子(よぼし)親農家制度」では、酒の飲める女子大生が農家にホームステイしながら農作業に従事する。夜は酒を飲みながら農民とコミュニケーションする。女子大生は喜ぶし、農家は元気になる。マスコミで話題になるし、役場には1日1,500円の「体験料」が入る。一石四鳥の仕組みである。また神子原、神の子、キリストという連想からローマ法王を思いつく。 神子原(みこはら)地区で収穫される農産物をブランド化するために、高野氏は「ロンギング」(社会的影響力の強い人が持っていたり、飲食している、身に付けているものが欲しくなること)を使うことを思いつく。「神子原」の地名から「神の子」、イエス・キリストキリスト教と連想し、「ローマ法王に米を食べてもらう」という突拍子もないアイデアだった。高野氏はすぐにローマ法王庁に直接手紙を書き、数ヵ月後にはOKをもらう。同氏自らがバチカンに出向いて神子原米を献上し、それを全国紙が取り上げる。結果、役所への注文の電話が鳴りっぱなしになる。ブランディングは大成功だった。言葉だけで説得・交渉するのではなく、実際に行動することによって説得力をつくるのが高野氏流の人の「巻き込み術」といえる。
●本書からは、常識にとらわれない自由な発想法とともに、そうした「人を動かす」方法論を学ぶことができる。
第1章 「一・五次産業」で農業革命!
第2章 「限界集落」に若者を呼ぶ
 14.「酒が飲める女子大生」で話題作り
 17.口コミで農家カフェを流行らせる
第3章 「神子原米」のブランド化戦略
 21.「ローマ法王御用達米」に認定!
 23.売りたい時に売らないのが、売る方法
 24.エルメス書道家が米袋をデザイン
 27.人工衛星でおいしい米をさがす
 28.大手商社より格安。行政ビジネス第1号
 31.農家経営の直売所「神子の里」を開店
第4章 UFOで町おこし
 35.レーガンサッチャーゴルバチョフに手紙
 36.AP、AFP、ロイター。外電で情報発信
 40.「UFO国際会議」で宇宙飛行士を呼ぶ
 41.「コスモアイル羽咋」に本物のロケットを
第5章 「腐らない米」。自然栽培でTPPに勝つ!
 44.“奇跡のリンゴ木村秋則さんを口説く
 45.「自然栽培実践塾」で未来の農業を!
 42.農業大国フランスに殴り込み
17.口コミで農家カフェを流行らせる
人間は、山の過疎集落のようなまさかと思う場所に、本格的に自家焙煎したコーヒーを出してくれる店があったりすると、「ああ!」と驚くものなんです。そういう意外性のある体験をすると、別の人を連れて来て同じ体験をさせたがるんですよ。それが店の宣伝をしようと国道筋に看板を置いたりすると人は来なくなる。「ああ、知ってるよ」と店の名前を認知する人間は増えるけど、そういう人はそれだけで興味を失ってしまうので、絶対に来ない。人を連れて来ようとも思わない。看板がないから来るんです。
23.売りたい時に売らないのが、売る方法
東京の田園調布から電話があった時には絶対売りませんでした。白金の人にも売らない。成城や目白の人にも売らなかった。全部で60件近く断りました。高級富裕住宅街から電話があった時は、「先日まではございましたが、たった今、売り切れました」と答えるようにしたんです。「行きつけのデパートにお問い合わせされてはいかがでしょうか。ひょっとするとあるかもしれません」と。でも、ないですよ。私たち、デパートと取り引きしていないですから。何をしたかったかといったら、神子原米を高級デパートの食料品売り場に置いてほしかったんです。お客からデパートに問い合わせるように仕向け、「えっ、何で置いてないの?」と言わせるのだ。デパートは、あわてることだろう。
28.大手商社より格安。行政ビジネス第1号
それ、嘘だと思ったんです。衛星ビジネスを知らないからだまされたんだと。調ぺてみると、専用のハードなんか買わなくても、家庭のパソコンでも十分わかるんです。知らないからだまされるんです。行政やJAはバカだと思って、赤子の手をひねるようにしてやって来る業者がいるんですよ。デジタル・グローブ社に、何月何日にこの地区の上空を飛ぶ時に撮影してくれってオーダーを入れて、その画像解析をソフトがやって、データをダウンロードするだけなんです。家のパソコンでも十分です。初期投資はほとんどなく、あえていうならばソフトだけです。1人でも出来ますよ。人工衛星を使って、田んぼの米の食味測定(タンパク質含有率の測定)ができるのだそうだ。大手商社に頼むと1,200万円(測定料300万円+専用ソフト代)かかるところ、直接アメリカの商用衛星に依頼すると37万円でできる。これを羽咋市の「行政ビジネス」にしたのである。
31.農家経営の直売所「神子の里」を開店
POSシステムを導入して、直売所のレジをピッて通ったら、メールなどで生産者に通知が届くようになっています。「高い金を出してそんなシステムを導入する必要なんかない、普通のレジでいい」と反対する声もあったけれど無視しました。生産者にとっては、売れたらすぐに反応が返ってくるわけだから、いっそうの励みになるんです。生産者側に立つと、それぐらいのコストはかけても必ず元はとれます。
35.レーガンサッチャーゴルバチョフに手紙
まずは羽咋の自己紹介を書き、そして、「この羽咋でUFOによる町づくりを始めました。これに対してゴルバチョフ書記長はどのようにお考えになりますか。ご感想と出来れば我々に激励のメッセージを下さい」と書いて出したんです。その次に書いたのは、レーガン米大統領です。3番目にサッチャー英首相。他にもローマ法王など、世界を動かせると言われているVIP120人に手当たり次第書いたんです。(中略)だいたい45%くらい返事が来ました。けっこう来るもんなんです。それで返事が来たらマスコミに流したんですね。1粒で2度おいしいんです。
36.AP、AFP、ロイター。外電で情報発信
羽咋がUFOで町おこしを始めた」というニュースを、まず北海道に流しました。羽咋から遠ければ遠いほど効果があると思ったからです。(中略)次は九州。各県ごとにメデイアを調べて、情報を流したんです。その次、東北地方です。石川、富山、福井という地元のメデイアには、半年間だんまりをきめこんだままだったんです。なぜそうしたかというと、理由があるんですね。自分の家で知らないことがあると気になるじゃないですか、何がおこっているんだろうと。さらに次はもっと大きな「外堀作戦」だと、海外に目を向けました。APとかAFP、ロイターという外電にバンバン情報を流したんです。アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙、旧ソ連の「コムソモリスカヤ・プラウダ」など16紙が書いてくれました。そういうことがあると、今度は東京の新聞も気になり、情報を流してくれたんです。うーむ、これは逆転の発想だ。「遠くの神さん 有り難い」というが、海外とか遠方のマスコミが報道すると、地元では「何だ何だ」と大騒ぎになるのである。smoothさん(ビジネス書のコンシェルジュ)のブログ「マインドマップ的読書感想文」(http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/52024519.html)が、詳しい感想を紹介している。
●著者の高野さんの肩書は「石川県羽咋市役所農林水産課ふるさと振興係課長補佐」であり、いわゆる「市役所職員」になります。ただし、上記でご紹介した通り、やってきたことはマーケッターや広告代理店、PR会社真っ青の破天荒ぶり。そもそも、何でこういう人が市役所職員なのか疑問に思われる方も多いと思いますが、実は高野さんはアマゾンの「著者略歴」で触れられているように、以前は雑誌のライターやテレビの構成作家の仕事をしており、家庭の事情で帰京し、しかたなく市役所の職員となったとのこと。それを知って、やっと高野さんのアイデアの豊富さやユニークさが腑に落ちた次第です。ちなみに構成作家時代の『11PM』の仕事の関係で、UFO評論家として有名な矢追純一さんともよく会っていたそうで、それが後の「UFOによる町おこし」につながってくるのですが。
●本書の中心となるのが、この「UFOによる町おこし」と、タイトルにもある「お米」のお話。当初「ローマ法王にお米を献上する」とは、なんて大それたことを、と思ったのですが、上記ポイントの5番目にあるように、町おこしの時点で「VIPアタック」を経験済みだったんですね。袋の字を書いたのは、エルメスのスカーフをデザインしたことのある、書道家の吉川壽一先生。平成23年度 神子原米 精米(標準精米)5kg そのことも「あえて」クレジットしていないのも、「他人に話したくなる物語性」を作り上げるためなワケです。この「神子原米」で展開されているブランド戦略だけでも、本書を読む価値はあると思われ。こうしたマーケティング的なお話と並行して語られているのが、「コミュニケーション」の話である。「限界集落に都会の人を呼ぶ」と言えば「よそ者は村の秩序を乱す」と反対する村民。「JAに頼らず、自分たちで売ろう」と言えば「おまえが売ってみせたら、俺らが売ってやってもいい」という農民。シンポジウムを開くためにお金を集めたら、冬の除雪費用に回せという市議会議員。それ以前に「事なかれ主義」で固まっているのが、公務員というものです。何かやろうとすると、必ず「人」という障害が立ちふさがることばかり。そんな中、人を納得させ、人を動かすために、高野さんがどうしたか、という部分もぜひお読み頂きたいな、と。
 「コスモアイル羽咋」に本物のロケットを”のくだりである。コスモアイル羽咋という博物館の玄関に実物大のロケットのレプリカを置こうとした。見積もりを依頼すると工事費込みで1億6千万円と年3回のメンテナンス料、塗り替えには1回3百万円かかるとのことだった。しかしNASAに行って、かつて宇宙を飛んだ本物のロケットを買い付けると、わずか1千万円で買えたという。しかも本体はマグネシウム合金なので錆びない(メンテナンス料も塗り替え費用もゼロ)。高野氏は昨年、テレビ東京カンブリア宮殿にも出演された。
● 復興=地域再生へのヒントがいっぱい
 「震災復興=地域再生」ですが、高野さんは平成14年(2002年)から羽咋市役所農林水産課で「限界集落」の神子原の再生・活性化に取り組み、さまざまな成果をあげられています。彼のモットーは「可能性の無視は最大の悪策だ!」。ほとんどの人が、「そんなこと出来っこない」と言うことに対して、自ら果敢にチャレンジし、成功させているのです。その象徴が、ローマ法王に神子原のお米を食べさせたことです。なにせ、自分でローマ法王に手紙を書いたというのですから、その行動力には脱帽します。しかも、ローマ法王側から返答が来るまで2〜3ヶ月の期間があったのですが、「ローマ法王がダメならアメリカの大統領に働きかけよう」と準備していたというのですから、大変なものです。
 高野さんがやったことをそのまま真似をしてもダメですが、彼の想像力の豊かさ、それを行動に移す突撃力(行動力)に学べば、私たちも大いなる想像力と行動力を獲得できると思います。想像力と行動力こそ、震災復興=地域再生への最大の原動力です。
● 型破りの役人
 神子原という地区は昭和59年から平成16年末までの20年間で人口が37%も減り、耕作放棄地が平成12年度末の31haから平成17年に46haに増えたという典型的な「衰退する中山間地」でした。3つの集落から成りますが、その1つ、菅池集落の高齢化率は57%だったそうです。
 高野さんは、平成16年10月に初当選した橋中市長から、「㈰過疎高齢化集落の活性化、㈪農作物を1年以内にブランド化する」というミッションを与えられました。ローマ法王に米を送るというのは、この㈪のミッションを達成するために考えついたアイディアなのですね。
 ところで、本書の目次を見ると、「物騒な」小見出しが並んでいます。
「会議はやらない。企画書も作らない」
「上司には、すべて事後報告でスピード化」「会議はやらない。企画書は作らない。上司には事後承諾。反対意見は知恵を使って丸め込む。本当に「役に経つ」のが「役人」です。」 役所の「ルール」、常識を破る、型破りの人です。 稟議書をまわしていると、上司から「なんで、そんなことをやるの?」などと言われて、時間ばかり食い、事がスムーズに運ばないというのです。
 そして、このことは彼のモットー=「可能性の無視は最大の悪策だ!」と深く結びついているんですね。これまでの役人の常識では「やってもダメさ」ということでも、少しでも可能性があって、「やらなきゃ!」と思えば、どんどん実行していく。そういう姿勢なんですね。まさに、固定観念を捨て、奇手・妙手を含めあらゆる可能性を考えて、果敢に実行することを高野さんから知らされた。
● しっかりした調査と理論に裏打ちされている
 高野さんの行動はしかし単なる無鉄砲というものではありません。
 神子原米のブランド化のためには、その旨さをきっちりと調べ上げています。そのために人工衛星のデータまで使うというのだから驚きです。
 そして、「1.5次産業で農業革命」という考え方をしっかりとうちたてています。
「農林漁業の一次産業の最大の弱点は何かというと、自分で作ったものに自分で値段をつけられないこと。」「ならばどうするか。一次産業者である農家が希望小売価格を最初からつけて売ればいい。自分たちで作った商品を加工して付加価値を高めて売るという1.5次産業化を進めればいい。従来の流通を変えていく戦略で、これこそが村を救う根本治療だと思ったのです。」
 昨今では「農業の6次産業化」が流行りですが、それよりも以前に高野氏はこういう考えを自ら編み出し、農民たちと何度も何度も議論して、神子原米のブランド化、そして地区内での直売所設置を成功させていったのです。

◆【女性技術者が現場を変える】(2013年11月19日放送 22:00 - 22:54 テレビ東京ガイアの夜明け」より)
 外環自動車道を地下に建設している現場を訪れ、奥村卓也さんから測量などを行う女性技術者がいることなどの説明を受けた。10月1日に大成建設では来年の新入社員の内定式が行われた。内定者233人中37人が女性で、うち19人は土木技術者を希望している。大成建設では10年前まで現場で働く女性技術者はほぼいなかったが、現在は70人いる。土木現場で働きたいという女性もいて、ドボジョ(土木女子)という言葉も生まれている。大成建設の社員である町田恵津子さんは首都高速道路第三京浜を結ぶ港北ジャンクションの建設現場で現場監督を任されている。作業の安全面だけでなく工事全体の進捗状況を作業員に伝え、コンクリートの質を最終チェックする仕事も担っている。建設現場で現場監督を任されている町田恵津子さんは作業で細かい指示を出し、作業員が効率よく安全に作業できるように気を配っている。町田さんは自宅の本棚に土木に関する専門書を収めていて、お気に入りは世界の橋の写真集。
 大阪・東大阪市にあるエストロラボでは女性社員が機械を使いこなし細穴放電加工を行っている。この加工によって直径0.15ミリからの穴あけが可能で、医療やエンジン部品など様々な用途がある。エストロラボの東山香子社長は全国でも数少ない細穴放電加工に着目し、女性社員が加工を行うことで製造業界に新風を巻き起こせるアイデアをしたためていた。そして2006年にエストロラボを設立し、現在は社員6人、うち5人は女性。エストロラボでは女性社員が手作りのおかずを用意し、伴に食事を楽しんでいる。社長の東山香子さん以外の社員は既婚者だった。スタッフの中で最も若い34歳の塩谷恵美さんは出産後に仕事を探すも、就職に苦闘していた。その折にエストロラボを知り、未経験技術者ながら入社した。就業時間はフレックスタイム制で、塩谷さんは夕方4時過ぎに退社して娘の萌香ちゃんの迎えに行っている。娘の萌香ちゃんは母親を励ます手紙を贈っていて、将来は母親とともに働きたいという。エストロラボでは納品した部品が相手先から突き返されてきて、社内では緊張状態に包まれていた。長さ7cmの合金に細穴放電加工によって直径0.4ミリの穴を貫通させる依頼だったが、繋ぎ目の誤差を1000分の5ミリ以下にして欲しいという要求だった。東大阪市にあるエストロラボでは納品した部品のやり直しが取引先から要求され、塩谷恵美さんが作業を担当することになった。依頼は長さ7cmの合金の両サイドから穴を開け、繋ぎ目の誤差を1000分の5ミリ以下にするというものだった。塩谷さんは試行錯誤の末に作業を終了し、協力関係にあるダイニチの計測機器でチェックしたところ誤差は1000分の2ミリ以内だった。その後、発注元からは申し分ないという評価を頂けた。エストロラボの東山香子社長は作業員の塩谷恵美とともに、原子レベルで物質の解析が可能な研究施設「スプリングエイト」を訪れた。研究施設では塩谷さんが合金加工で開けた穴が使用されていて、正確にデータを解析するのに欠かせない存在だった。エストロラボの東山香子社長は新たな取引先を開拓すべく、関西 機械要素技術展を訪れた。展華精密工業では穴加工の技術を行っておらず、東山社長は取引しないかと売り込みをかけた。エストロラボで穴加工を行う塩谷恵美さんは台湾にある取引先の企業に持っていくサンプル作りを任されていた。1ミリの幅に直径0.6ミリの穴を貫通させ、東山香子社長は翌日にも台湾に到着。
 男性のイメージが強かった企業では女性が登用され、活躍している。2002年の4人だった女性の駅員、車掌は今や129人が働いている。アート引越センターでは200人の女性が引っ越し作業員として働いていて、パナソニックでは女性が美容製品の開発を担っている。大阪・吹田市にあるサトーシステムサポートは印刷機械の保守点検を行っていて、昨年には女性のエンジニアチームが創設された。チームリーダーの小竹美穂さんは工具カバンを携え、アシックス物流でラベルやタグを印刷する機械の定期点検を僅か10分で行った。小竹さんは幼い頃からエンジニアを目指していて、入社した当時はシャンカラ珍しがられたという。9割が女性で、洋服にタグをつけて出荷している。印刷機械の保守点検を行う小竹美穂さんはファミリアを訪れ、機械のメンテナンスを行った。!
子供服メーカーのファミリアは従業員の9割が女性で、洋服にタグをつけて出荷している。印刷機械の保守点検を行う小竹美穂さんはファミリアを訪れ、社員に正しい手入れ方法を指導し、社員から感謝された。印刷機械の保守点検を行っているサトーシステムサポートでは、女性エンジニアチームが現場で汲み取った課題を全社員で共有している。同社の夢野信一さんは「女性の場合は小さなことでも話して貰えることがあるので、今後の対応に役立てられることができる」とコメント。女性作業員が働くエストロラボでは台湾に売り込みをかけようと、社長の東山香子さんはパイプの1ミリ幅に0.6ミリの穴を貫通させたサンプルを持って展華精密工業を訪れた。社長の陳輝宏さんは「女性がこんなに専門的で繊細な技術を持っているなんて感心します」とコメント。エストロラボの東山香子さんは細穴放電加工機を作っているオーシャンテクノロジーを訪れた。同社は社員33人のうち12人が女性で、サニー・リャオさんは女性を積極的に登用することで売上を伸ばしてきた。東山さんは作業員に金属のネジやボルトに細穴放電加工して穴を開け、ワイヤーで繋ぎあわせたアクセサリーをプレゼントした。台北市に滞在中、東山さんののもとに新たな取引先から見積もり依頼が届いた。

→*「男性が主流だった現場に女性が進出していくことは女性の選択肢だけでなく、現場の活性化、新たな視点が加わることで新商品が生み出されるのではないか。」

(今日の出来事)
ケネディ新大使 天皇陛下と初面会。アメリカのキャロライン・ケネディ新駐日大使が、天皇陛下に信任状を手渡す「信任状捧呈式」に臨んだ。キャロライン・ケネディ新駐日大使が記者会見で、天皇陛下に初対面した感想を語った。キャロライン・ケネディ新駐日大使は、儀式用の馬車に乗って皇居に向かった。沿道には大勢の観覧者が集まり、馬車は100人態勢で警備された。
・東京上野の東京国立博物館で開催中の展覧会特別展「京都 洛中洛外図と障壁画の美」の来場者数が20万人を突破。特別展京都は、12月1日まで開催される。

(11月19日生まれの偉人)
◆厨川 白村(くりやがわ はくそん、1880年11月19日 - 1923年9月2日)は、英文学者、評論家。京都市生まれ。本名・辰夫。病没した上田敏の後を受けて京都帝国大学英文科助教授となる。19年、教授となるが、この頃足に黴菌が入り左足を切断、23年の関東大震災に際し、鎌倉の別荘にあって逃げ遅れ、妻とともに津波に呑まれ、救助されたが泥水が気管に入っていたため罹災の翌日死去した(厨川蝶子「悲しき追懐」)。

<昨年の今日>http://d.hatena.ne.jp/ks9215/20121119