もう一度、『全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書 』に学ぶ

「全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書 」(森田 直行著)をもう一度整理してみたら、
アメーバ経営は、組織を小さなアメーバに分割し、それぞれを一つの会社のようにリーダーが経営するというもの。そのため、アメーバ経営のポイントは、フィロソフィー教育とアメーバ管理会計の2つ。
①フィロソフィー教育とは、アメーバのリーダーに経営者としてあるべき考え方を教える。
②稲盛経営12カ条
 第1条 事業の目的、意義を明確にする
 第2条 具体的な目標を立てる
 第3条 強烈な願望を立てる
 第4条 だれにも負けない努力をする・・(p62)
◆アメーバ単位の収支は社内取引により月次で発表され、計画との差を報告。黒字であれば問題ありませんが、赤字であれば対策を打ちます。このどんぶり勘定と正反対の仕組みが、
組織を赤字を出さない体質に変えるのです。月初に開かれる業績報告のための経営会議・・・前月の予定を達成できていれば会議はスムーズに進行しますが、下回っていた場合には、本部長はその理由と対策を示して、経営陣を納得させなければなりません(p59)
◆アメーバの経営者として、リーダーは結果に対する責任を取らなくてはならない。稲盛さんは、自分の部門の実績を人ごとのように発表する本部長に向って、「君は人ごとみたいに言うとるが、これは君のリーダーとしての結果なんや」と叱責しました。「この結果が出たのは私のせいじゃありません」「おまえがその結果を出しているんだ!」と怒りを爆発させました(p96)
<ポイント>
●京セラでは、「アメーバ経営」で全社員が経営者感覚と採算意識を持つようになる仕組みを持っている。そして、「京セラフィロソフィ」の教育を徹底、社員の人間力を高めることで道を外れないようにし、またリーダーの影響力を強めている。数字だけを追い求めると問題が起きる。逆に「社会に貢献」「社員の幸福が一番」などとキレイ事を言っているだけでは経営は成り立たない。その両方が必要だ。(p4)
アメーバ経営とは、京セラの創業者である稲盛和夫名誉会長が企業経営の実体験から編み出した経営手法で、「経営は一部の経営トップのみが行うのではなく、全社員が関わって行うべきだ」という考え方が貫かれています。この経営手法の最大の特徴は、採算部門の組織を5?10人という小さな単位(アメーバ)に細分化し、それぞれがまるで一つの会社であるかのように独立採算で運営することです。各アメーバの売上、利益、経費などの収支は、月が終わると直ちに集計され、全社員にオープンにされます。これにより、経営者はどの部署がどのくらい儲けているか一目瞭然でわかるようになり、社員も自分がどれだけ利益に貢献できたかを知ります。その結果、社員一人ひとりが利益を意識し、それを生み出す意欲と責任を感じるようになるのです。各アメーバにはリーダーがいます。その人物がメンバーの知恵を結集しながら経営者のごとく収支の舵を取り、「売上を最大、経費を最小に」を合言葉にメンバー全員で経営目標を達成するー。これが、アメーバ経営が目指す全員参加の経営の姿です。( P14)
●製造業の場合、製品の生産高は製造アメーバに計上され 販売を担当した営業アメーバには販売額の5〜10%前後の手数料が支払われる仕組みになっています(p21)
●人件費は経費に含まれません。その理由は、組織を小さく分けているため、個人の人件費の開示につながってしまうからです(p21)
アメーバ経営の最大の特徴は、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団組織に分け、各アメーバのリーダーがまるで経営者のように小集団組織の経営を行う。仕組みを支えるのが、経営数値を正確かつリアルタイムに把握する部門別採算制度です。自分たちの努力の結果がすぐに数字に表れるーーここが、アメーバ経営のキーポイントと言える部分。「目標値」と「現在値」が数字で明確に見えるからこそ、その「差異」を縮め、なくしていくにはどうしたらいいか考えることができる。この差異が明確になると、人は努力を始めものである。稲盛氏がアメーバ経営を生み出したキッカケは、京セラ設立3年目、新入社員が自分のことばかり考えて昇給など要求し、経営者の思いを理解していなかったことにあるといいます。会社を大きくすること、売上を伸ばすことが、ひいては社員の生活向上につながる。社員も経営者と同じ考えで経営に参加してもらわなければ企業経営はうまくいかない、と稲盛さんは痛感するようになった。(P.32)
●製造現場がマーケットプライズで動くことによって、利益に対する意識と責任が生じてきます(p49)
●京セラグループでは、全従業員に「京セラフィロソフィ手帳」を配布し、さまざまな機会をとらえ、この手帳を活用してフィロソフィの浸透を図っている。たとえばこんな話があります。ある商品を1セット申し込まれたお客様に対して、「1か月後の展示会でこの商品は特別価格で販売されます。もしよろしければ、 その際に購入されてはいかがでしょうか」と弊社の販売担当者が正直に伝えたところ「大変いい情報をいただいた。ありがとう」とお客様に感謝されました。そしてお客様な展示会に来場され、なんと2セットを購入された。(P.72)●アメーバリーダーの役割の一つめは、「部下を幸せにすること」です。では、「部下の幸せ」とは何でしょうか。 それは「部下の生活を守る」ということです(p75)
●私は2010年1月から、JALの管財人代理、そして副社長として2年間、稲盛さんとともに経営に携わりました。JALという会社に入ってみての率直な感想は、素直で優秀な社員が多いな、というものでした。と同時に、「どうして優秀な社員がたくさんいるのにこんなことになってしまったんだろう」という思いがよぎりました。2009年12月初旬ごろ、稲盛さんは政府と企業再生支援機構から、「JALの再生を引き受けてほしい」と要請されていたようです。再生支援機構は、再建を担う経営者として、運輸関係ではなく異業種の経営者で、内外に知名度が高く創業経験があり、なおかつ大企業の経営経験があるという3条件を満たす人が適任と考えていました。そして、その三つを兼ね備えている人物といえば、稲盛さん以外には考えられなかったといいます。しかし、当初、稲盛さんは「航空業に関しては素人であり、私の任ではない」と断りつづけていました。12月中旬、京セラ本社で会議があり、私も出席していました。会議のあと、稲盛さんに呼び出され、「JALの再建を頼まれている。もし引き受けたらついてきてくれるか?1週間後に返事をくれ」と突然言われ仰天しました。京セラの業務とはまったく関係のない異業種の会社の再建など引き受けないほうがいいのではないか。私は正直そう思いました。しかし、稲盛さんが行くなら、答えは決まっています。12月下旬、私は返事をするために、京セラの東京の事務所に行き、稲盛さんと会い、こう言いました。「名誉会長がいらっしゃるなら、お供させてください」1月初旬から、再生支援機構などといろんな打ち合わせがあり、最終的に2010年1月13日、稲盛さんは「自分の力は及ばないかもしれないが、全身全霊で再建に当たりたい」と決断されました。そして、2月1日に、稲盛さんと私と、稲盛さんの秘書として長年勤めていた大田嘉仁さんの3人がJALに初めて出社し、経営再建がスタートしました。(P78〜P79)
JAL再生を成し遂げた稲盛氏は、2013年3月にJAL取締役を退任。マスコミなどから「破綻前のJALに後戻りすることはないのか」などと何度も質問を受けたそうである。これに対してJAL植木社長は「もう元に戻ることはありません」と断言。こんな言葉を残している。もしかすると違う人でも再建できたのかもしれません。ですが、少なくとも今のJALはなかったということは確信をもって言えます。よく 「名誉会長が来られて三年でこの会社と社員の何がいちばん変わりましたか」と聞かれます。一言で答えるならば、「採算意識が高まった」と言えばわかりやすいと思います。ですが、私は、何より社員の心が美しくなったことがいちばん変わったことだと感じています。それがすべてにいい影響を及ぼしているのです。(P.83)●アメーバ経営を実現していくうえでは、1)組織の役割、責任の明確化、82)採算部門、非採算部門の明確化、(3)ダブルチェックが機能的に働く組織体制、(4)実績と活動が結びつく組織体制、の4つが重要です(p126)
JALの再生計画の主な骨子
 ・航空機機種の削減・・
 ・機材のダウンサイジング・・
 ・路線ネットワークの最適化・・
 ・航空運送事業への経営資源の集中・・
 ・機動性を高める組織、経営管理体制の構築・・ 
 ・自営空港体制の大幅縮小(空港コスト構造改革)・・(p94)
●30万円を超える購買はすべて調達本部を経由するように 変えました。社内では「調達させない部」などと揶揄されましたが、結果的に1年間で800億円の経費削減に成功しました(p101)
●関連会社は本体依存から脱却。親会社であるJALとの取引も「人件費+経費+数%の利益」で行うペイロール方式から、マーケットプライスを前提にした値決めを行うように変えました(p113)
●航空事業というのは、季節によって売上の変動が大きく、7?9月の旅行シーズンで大きく稼ぎます。逆に底となるのが2月です。JALでも創業以来、2月は黒字になったことがない。そこで私は、「2011年の2月は黒字にできないかもしれないけれども、2012年の2月は黒字にしよう」と言ったのです。それを聞いたある部長は、「森田さん、そんなことができたら奇跡ですよ」と言いました。ところが、アメーバ経営で組織改革を実施した直後の2011年2月に、黒字を達成することができました。奇跡が起こったのです。JALにおけるアメーバ経営の導入で何が変わったのかということについて、JALの大西会長が2013年2月22日の日本経済新聞のインタビューに次のように答えています。会長の大西賢はアメーバを「収支管理を徹底させるための仕組み」と見ていたが、導入してみてその威力に驚いた。「キミたち実は勝っていたよ、と2カ月後に試合結果を教えられても、ちっとも燃えない。3万人の団体戦では自分が貢献できたかどうかもわからない。しかし10人のチームで毎月、勝敗がわかると、『やったあ』『残念だった』と社員が一喜一憂する。かつてJALは泣きも笑いもしない組織だったが、アメーバ経営で生きている会社になった。」JALの経営改革の成功は、フィロソフィとアメーバ経営の実践によりもたらされました。稲盛さんを筆頭にJALの全社員が経営に関心を持ち、利益とサービスの向上を目指し、それぞれの持ち場で改善・改革に取り組んだ小さな結果の積み重ねが大きな成果として結実しました。まさに全員参加の経営が、JALを大きく変革したのです。
(P114〜P116)

<偉人記念館>
佐藤忠良館(佐川美術館)http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/plan/sato/exhibition.html
佐藤忠良記念館(宮城県美術館
佐藤忠良記念子どもアトリエ(札幌芸術の森http://artpark.or.jp/tukuru/tukuru-kids/
◆吉野俊彦の紹介
 日本銀行の理事から山一證券経済研究所理事長として活躍して数年前に亡くなった吉野俊彦氏(1915年生まれ)は、サラリーマンと執筆活動の両立という境遇を生きた鴎外に関心を持って研究した人物である。吉野俊彦は、軍人と文筆を両立させた鴎外に関心を持ち、師として仰いでいた。氏が書いた本によって、鴎外の生き方が脚光を浴びた時代があるが、今の時代ももっと陽があたってもいいと思う。鴎外、吉野俊彦、という系譜は、二足のわらじを履きながら、仕事とライフワークを同時に高いレベルで達成しようとした人たちの系譜である。軍人という仕事とライフワークとの間に迷いのあった鴎外は、渋江抽斎を発見し、その生涯の研究に没頭した。それは自分の迷いの回答を探す旅であった。吉野俊彦も、日銀マンという誇り高い仕事と文筆の両立のモデルとその理由を鴎外に求めたのようだ。

<今日の出来事>
・“セクハラ”やじ問題 自民党議員が電話謝罪。衆院総務委員会で4月17日に日本維新の会上西小百合議員の質問の際に、「早く結婚して子供を産まないとダメだ」とヤジを飛ばした大西英男議員から電話で謝罪があった事を明らかにした。
・舛添流“おもてなし”構想 東京に新たな「和風迎賓館」。舛添知事が、東京に新たな和風迎賓館を作るおもてなしを構想している。きょう、舛添知事は京都迎賓館を視察、東京オリンピックを前に東京に迎賓館を作りたいと話している。1909年に建てられた迎賓館赤坂離宮は、国宝に指定されている。去年3月にはIOCメンバーが招かれた。舛添知事は赤坂璃宮は西洋風なので和風迎賓館が必要だと考えている。らに舛添知事は六義園小石川後楽園清澄庭園などをお忍びで視察した。また、舛添知事はコスト削減などを理由に計画の見直しを進めているが、都民からは迎賓館にお金が使われるのではないかと話している。

<今日の巨人>
・巨人4―3中日(4日・東京ドーム)。大竹が6月18日以来の登板で、約2か月ぶりに白星を挙げた。6回1/3、6安打1失点の好投で6勝目。坂本が3打点の活躍を見せると、阿部も8号ソロ。1点差逃げ切りで球団創設80周年記念事業の一つ「ジャイアンツメモリアルウイークス」の初日を飾った。
 試合前の始球式で、長嶋茂雄終身名誉監督(78)と巨人OBの400勝投手・金田正一氏(80)との1打席限定勝負が行われ、金田氏の3球目を長嶋終身名誉監督が見事に打ち返した。

<今日のトラックバック
・『全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書 』に学ぶ http://d.hatena.ne.jp/ks9215/20140628/p1
・『稲盛和夫の『燃える闘魂』から日本の再生を考える。』http://d.hatena.ne.jp/ks9215/20140414/p1

<昨年の今日>「選挙戦スタート」http://d.hatena.ne.jp/ks9215/20130704/p2