えっ?東京劣化?そしていつもどおりの週末。

◆『東京劣化』(松谷明彦著・PHP研究所)から http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569824811
 本書は、政策研究大学院大学名誉教授であり、国際都市研究学院理事長も務める松谷明彦氏が、人口減少社会の経済について述べた、ものであり、都市への一極集中、地方劣化の議論とはまったく異なる視点で、迫り来る「東京劣化」の現実を浮き彫りにしている。地方の集落の消滅を危惧する声が高まっているが、これまでの政策の方向性を変えれば日本の農業や集落を維持する術(すべ)はある。むしろ、地方よりも東京のほうがより急激な変化に見舞われると考えられる。東京の高齢化はすさまじい。2040年には、2010年に比べて高齢者が143.8万人増加する。1.5万人減少する秋田県とは対照的だ。その結果東京の貯蓄率は低下し、インフラが維持できず、都市がスラム化するおそれがある。年金の給付水準は大幅に引き下げられ、その結果多くの高齢者が家を失い、老人ホームが新たに100万床以上必要になると考えられる。もちろん、税率も上昇する。ならばどうするか。本書では、人口減少高齢社会にはしてはいけないこと、つまり「タブー」を三つ指摘(少子化対策、経済成長の追求、増税による財政再建)している。その理由は、少子化対策が財政を破綻させる可能性が高いこと、国内余剰労働力、外国人労働力の活用がかえって成長率を低下させる可能性があること、増税よりも財政規模縮小の方が理にかなっていることなどを挙げ、このまま進んだ場合、日本経済にどんなことが起こるのか、その時東京と地方に何が起こるのか、シミュレーションしている。著者によると、確かに今後、地方の人口は減るが、死亡者の大部分が高齢者であるため、財政難に陥る可能性は少ない。反対に、東京は「人口がさほど減らないのに、高齢者だけは急激に増加する」という人口構造の急激な「悪化」に直面し、最悪インフラが維持できずスラム化する。
①東京では高齢者が三〇年間で143.8万人増える
②2040年の東京における高齢者数は411.8万人
③適切な維持更新ができないインフラが年々増加して、東京の街がスラムと化すおそれが出てくる。
 大都市東京が没落することを、現在の政権は行っていると指摘している。
そして、モノに溢れた都市型の生活様式からの脱却、「小さな財政」でサービスの水準を維持しながら行政コストを低下させる、高齢者の生活コストも引き下げることが必要であり、まさに、一極集中して巨大都市化した東京にゆったりした田園の生活を取り戻すことが肝要と述べている。
<ポイント>
・25〜39歳の女性人口は、当然のことだが、すでに25年も先まで確定しており、わずか四半世紀で37.1%もの減少である。その大幅に少なくなった女性が次の世代を産むのだから、半世紀でその年代の女性人口が55.1%減少するという「社人研」(国立社会保障・人口問題研究所)の推計は、当然の帰結と言える。
・およそ福祉政策というものは、少数の気の毒な人を世の全員でサポートするからこそ、持続可能性を持つのである。
・国内余剰労働力や外国人労働力の活用については、そうした未熟練労働力や相対的に非能率な労働力の導入は労働生産性の低下要因となり、かえって成長率を低下させる可能性がある。
・長寿化は人々を確実に貧しくさせる。寿命が伸びるほどに、労働可能期間は伸びないからである。
・大都市の企業や工場の進出は、地場産業を確実に衰退させる。その結果、地方の生産性は再配置前よりかえって低くなり、一方、大都市では、低生産性の部分が転出したことで、平均生産性が上昇する。
・地方に存在し、大都市に比べても優位性を持つリソースとは何だろう。筆者は、「高度な職人技」ではないかと指摘。
・近年、米が生産過剰となり、農家は野菜や果物の生産にシフトしているが、野菜や果物は少量多品種の作物であるため、販売に当たっては、どうしても広域的な流通業への依存度は高くなる。したがってそれらの作物から生ずる付加価値のうち農村に落ちる割合はかなり小さなものにならざるを得ない。だから、多量少品種である小麦や大豆の生産を拡大すべきなのである。
・今後は日本全体の貯蓄が縮小するのだから、東京が使える貯蓄も縮小する可能性が高い。そうなると適切な維持更新ができないインフラが年々増加して、東京の街がスラムと化すおそれが出てくる。
・東京圏の成長率は2025年まではおおむね今の状態が続きますが、その後急速に低下する。
・既婚女性の出生率が安定してからは、出生率に最も影響するのは婚姻率。
・東京は世界の情報が集まらない「田舎の都市」。
アメリカでは研究者・技術者の半分は外国人、ヨーロッパでも研究者・技術者の三分の一は外国人といわれる。しかし、いまだに日本だけは、世界の優れた人材を招こうとせず、日本人だけで研究・開発を進めようとしている。

<3月28日生まれの先人の言葉>
西尾末広
 ・政権を取らない政党は、ネズミを捕らぬネコと同じだ。
 ・この道が正しいと思ったら、勇気をもって、常にはっきり直言する。これが私の流儀である。
岩谷時子
 ・悩んでも、なにも解決できないと思ったら、頭を切り替えて悩むというエネルギーを前向きな方向に使うことです。
邱永漢
 ・やっていてすぐ時間がたつような、人生を短く感じられるような仕事を選ぶことです。

<今日のトラックバック
・来週から6月にはいる。『大村益次郎鋳銭司郷土館』http://d.hatena.ne.jp/ks9215/20140530/p1

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◆いつもとおりの週末。実家へ。