『失敗を失敗で終わらせたら失敗だけ。』『上下関係や立場を超えて、共感によって人を動かすことが出来る人』がプロフェッショナル。(マーケター・小林正典)

◆「マーケター・小林正典、熱きスゴ腕サラリーマン」(2015年6月22日放送 22:00 - 22:50 NHK総合プロフェッショナル 仕事の流儀」)
 昨今、お菓子がブームを起こしている。このブームの仕掛け人は菓子開発マーケターの小林正典で、緻密な市場調査を武器に伸び悩んでいた看板商品の売上を50億円ほど伸ばした。今回はそんな小林正典の仕事の流儀について迫る。週頭の月曜日は社員らがライバルメーカーのお菓子を食べて状況を確認している。この日は新商品の発売について厳しい報告があがり、売上が達成に届いていなかった。ラインナップで初めてビジネス向けに特化した商品だが、原因はキャッチコピーの曖昧さだった。みんなでこだわった”濃厚”という言葉が客に届いていないと判断、新たなキャッチコピーで再チャレンジすると決めた。小林正典は「失敗を失敗で終わらせたら失敗だけ」だと考えており、次の段階を考えることは失敗ではないという。小林正典は暇さえあればデパートへと足を運んでいる。主に女性向け商品のコーナーをチェック、雑貨を買う女性とお菓子を買う女性は同じ客層なのだという。このようにしてニーズを掘り起こすのが彼のやり方で、これまでに”おつまみスナック”などの独特のジャンルを開拓した。小林正典の真骨頂は消費者の心理を細やかにつかみとる事で、目からウロコの商品を求めている。
 この日、小林正典は1人の部下から開発中の新商品について報告をうけた。部下の妹川陽香はとある食材を半生の状態で挟んだお菓子を提案しており、既に試作もしたが魅力が明確ではない。魅力をどこまで研ぎ澄ませられるのかが課題で、小林正典は議論により問題点を指摘した。ようやく質問がやんだのは1時間後の事だった。ここからが小林のミーティングの本番で、ヒントになるデータを元に徹底的に商品の狙いを洗い出していく。正解などは持ち合わせていないが、客の心に響く何かを見つけ出すまで議論を続けている。1か月後、妹川はもう一度商品のコンセプトを打ち出してきた。半生食材の売りを”素材感”という言葉に込めており、更に競合する製品との比較も報告した。この報告に対し小林は厳しい意見を浴びせ、更に開発を粘る事にした。これは妹川が提案を生んだ直感の中に説明できない何かがあると感じているからで、それが見えるまで何度でも突き詰めていく。
 この日、小林正典は神戸で新入社員の研修を行った。部下とともに斬新なヒットを生み出してきた小林はもともと営業部の出身、個人で店舗をまわり売り込みをかけていた。入社10年目に商品開発への異動を命じられ、ヒットを生んでやろうと意気込んでいた。狙いを定めたのがお酒のお菓子市場だったが、出てくるアイデアは平凡なものばかりで精神的に一番厳しかった時期だという。上司の助けを借り、3年かかってようやく1つ売れ筋を送りだしたが、底知れぬ不安を感じていた。そんな時、社内でとある試作品をみかけフシギな味わいに惹かれた。作ったのは研究部の細川誠司で、ヒットに恵まれないなか1人で開発を続けたという。以来、連日2人で商品化のアイデアをぶつけあう仲となり、2人の熱意で九州の工場が協力してくれた。そこから少しづつ仲間が増え、1年後に発売した商品が予想を超えるヒットとなった。
 この日、小林正典は来冬に売り出す新製品の開発会議を行った。方向性は大筋で合意しているが、お菓子の具体的な姿はまだ見えていない。担当に抜擢されたのが福田浩史で、今回が初の新商品開発となる。福田の力を引き出すことが小林の役目で、この日は福田の答えが出ずにひとまず終了となった。5日後、福田は新たなコンセプトを考えなおした。主婦をターゲットに昼用・夜用のお菓子を作るという方針を打ち出した。福田は研究部の細川に急ぎで試作を頼み込み、2種類のチョコをマーブル状態に混ぜたものとブランデー入りのチョコが完成した。だが、細川は明らかな欠点があることに気づいており、味が混ざりすぎて2つの味の変化が感じられないという。福田の元にも試作が届いた。試しに食べてみると福田自身も失敗に気づき、頭を抱えていた。翌日に再び会議を開くと、福田は小林に開発の方向性を提案した。ブランデーを特別な形で加えたチョコを夜用にしたいとし、寝る前に一人でゆっくり楽しむというチョコだとした。しかし、小林は客の心が動くまでは行っていないと再びストーリーを考えるよう指示した。この日の夜には小林と細川が食事を食べながら、福田について話していた。3週間後、製造部から思わぬ情報が入った。ブランデーを加える製造ラインは予算上難しいのだという。そこで福田はプランの変更を考え始め、本物のブランデーは諦め香料で凌ぐ案を提示した。小林はブランデー入のチョコについて、狙いを諦めずに投資する価値があると決まるまで掘り下げようとアドバイスした。8日後、更に張り切る福田の姿があった。ブランデータイプ以外にも別のタイプの商品も開発したいと意気込んだが、小林は厳しく意見を突き返した。小林正典はプロフェッショナルについて伺うと「上下関係や立場を超えて、共感によって人を動かすことが出来る人」だとの考えを示した。

<6月25日生まれの先人の言葉>
愛川欽也(タレント)
 ・面白くなかったらテレビじゃない。
小渕恵三(第84代内閣総理大臣
 ・ボキャ貧だからな、おれは、ボキャブラリーが貧困だから、いい言葉がなかなか出てこない。お疲れさまの一言だ。
 ・多数決はいかんというが、選挙で得票の低い人から当選するとなったら、私を含めここにいる先生は全員落選してしまう。
本宮ひろ志(漫画家)
 ・マンガは、先を考えて描いているわけではない。どの人間も、明日がどうなるかわからないように、マンガの主人公も、明日がわからないのである。
吉野敬介(教育者)
 ・今、頑張れないヤツは一生頑張れない。

<今日のニュース>
◆土石流が発生し避難勧告も
 鹿児島県垂水市では記録的な大雨で土石流が発生し、75人に避難勧告が出ている。JR指宿枕崎線前之浜駅近くで崖が崩れ、線路に土砂が流れ込み、JR指宿枕崎線では一部区間で運転再開の見通しは立っていない。
浅間山 観測開始以降で最多の火山ガス
 浅間山で観測が始まってから最も多い火山ガスが確認された。きょう1日あたり5600tの二酸化硫黄を観測。気象庁は地下マグマの動きが活発化しているとみているが、ガス以外の観測データに目立った変動はない。浅間山で行われた現地調査で、二酸化硫黄の放出量が増加。1日あたりの放出量が5000トンを超えたのは平成21年1月以来である。気象庁は、浅間山では今後も火口周辺に影響をおよぼす小規模な噴火の可能性があるため、火口から約2キロ以内には立ち入らないよう呼びかけている。