『池上彰のJAPANプロジェクト・ギモン解決!憲法って何だろうSP』

池上彰のJAPANプロジェクト・ギモン解決!憲法って何だろうSP』(2015年9月9日放送 21:00 - 22:48 テレビ東京より)
 池上彰が「私達の何気ない暮らしを支えているものが日本国憲法。きょうはニュースと憲法を読み解き日本の未来を考える」と番組の趣旨を伝えた。日本国憲法について、峰竜太は「正しく知って正しく理解したい」と話した。池上は「前文と11の章から成り立っている」と説明し「どういうことが書かれ、憲法がニュースや私達の暮らしにどう関わっているのか取り上げる」と話した。
 日本国憲法の原本は東京・千代田区にある国立公文書館で厳重に保管されている。その原本を1980年に取材したVTRが流れた。ページをめくると昭和天皇と当時の吉田茂内閣の署名が並ぶ。前文と11の章の本文から成り立っていて、天皇が国の象徴であることを定めた1条や戦争放棄を謳った9条のほか、国民の権利や国の仕組みなど暮らしに関わる様々な決まりが書かれている。この日本国憲法をめぐっては変えるべきか守るべきか、これまで何度も議論が起こってきた。その理由は憲法が作られた経緯にある。きっかけは1945年8月、太平洋戦争の敗戦。1946年11月、日本国憲法が公布された。当時の日本は連合国軍の占領下にあり、GHQの総司令官のダグラス・マッカーサーは民主的な憲法の作成を要求。しかし日本は明治憲法と大差ない案を出した。それに激怒しGHQが草案作りに着手。「天皇を国のトップに」「戦争放棄」「封建的制度の廃止」という3つの条件を盛り込むよう指示した。この3原則をもとに9日間で草案が完成。それから70年近く憲法の条文は一字一句変えられていない。
 憲法護憲派改憲派に分かれ長年論争が続いている。自民党憲法改正が党の基本方針にしている。池上彰憲法と法律の違いについて、憲法は国家の最高法規で“法律の親分”のようなもの、また国の権力者が守るべきもので、立憲主義によって国民の自由や権利が守られていると解説した。池上彰憲法第9条について、これまで二通りの解釈ができるとして議論になってきた。すべての戦争を放棄するという解釈と、自衛権まで放棄したわけではない、自衛のための力を持つことまでは否定しないという政府の解釈と解説した。
 尖閣諸島ではかつてかつお節工場が建設され200人以上が生活をしていた。また、つがいのヤギが持ち込まれ自然に繁殖したといわれている。周辺の海域では海上保安庁の船をいくつも目撃され、その中には5年前に中国漁船に追突された巡視船「よなくに」もあった。中国船による領海侵入は今年に入っても度々起きている。さらに海だけではなく空でも緊張状態が続いていて、沖縄・那覇市にある航空自衛隊那覇基地では緊急発進訓練が行われていた。緊急発進も急増していて昨年度は中国によるものだけで464回にのぼっている。池上彰は、個別的自衛権は自国が攻撃された場合は反撃することができる権利で、アメリカなど日本と密接にある国が外国から攻撃されたとき一緒に反撃することができる権利。これまでの内閣は個別的自衛権は行使できるが集団的自衛権憲法第9条で戦争を放棄しているから憲法違反で使えないと言ってきた。しかし安倍首相は集団的自衛権を今の憲法でも使えるように解釈を変えて自衛隊を動かすための法律をつくろうとしている。これはアメリカとの関係が強まれば周りの国に対して抑止力が働くという考え方と解説した。
 池上彰は、フィリピンやベトナムが領有権を主張している南沙諸島が今回の安保関連法案の鍵を握る重要な場所。その南沙諸島に自分たちの海と主張する中国が7つの人工島を作った。人工島には滑走路や移動式の大砲の存在が確認されていて、その背景には習近平国家主席が海洋国家の復活を目指している、台湾独立を阻止するための拠点という2つの思惑がある。南シナ海を巡ってはフィリピンと中国が衝突するようなことがあればアメリカがフィリピンを助けるために中国と衝突する可能性がある。オバマ大統領は南シナ海で中国が台頭するのを抑えたいため、日本にも集団的自衛権を行使して助けて欲しいと考えていると解説。南シナ海は東アジアと中東を結ぶ海の道(シーレン)で、石油や資源を運ぶ貴重な海の道となっている。ここが封鎖され存立危機事態といった日本の存立が危うくなったときに集団的自衛権を行使することがある。何が存立危機事態なのかはそのときの内閣が判断する。安倍晋三総理大臣はアメリカとの協力を一層強めていざというときにはアメリカに助けてもらおうという思惑がある。つまり中国に対して抑止力になるという考え方と解説した。こうした事態を想定してか、実際に日本とアメリカは合同で軍事演習をして関係を深めている。9月上旬、アメリカ・カリフォルニア州で離島奪還を想定した日米統合訓練が行われた。アメリカ海軍のフィリオン准将は「両国が望む限り関係はもっと深くなるだろう」と話している。
 沖縄本島には国内のアメリカ軍基地の74%が集中。那覇空港では航空自衛隊も滑走路を使用。本島では安保関連法案に反対の声が大多数だった。一方、石垣島アメリカ軍も自衛隊も駐屯しておらず、自衛官6人が所属する出張所があるだけ。そんな島では安保関連法案に賛成という声が大多数だった。中国船の領海侵入は今も収まる気配はなく、こうした事態を受け海上保安庁は今年度中に警備艇6隻から12隻に増やす予定。7月6日に行われた衆院安保特別委沖縄地方参考人会で石垣市の中山義隆市長は「平和安全法制の整備によって抑止力が強化されるのは大変心強い」と話した。
 池上彰は、安保関連法案が通ると自衛隊の危険が増えて自衛隊に入る人が減ってしまうのではないかという議論があり、徴兵制ができることを心配する人がいる。7月30日に行われた衆院安保特別委員会で安倍首相が徴兵制は明確な憲法違反でこのような憲法解釈を変更する余地は全くないと発言したことを受けて、憲法の解釈を変えた人が信用できるのかという批判もある。安倍総理憲法違反の根拠としている憲法第18条の“意に反する苦役”にあたるので徴兵制はありえないと主張。その一方で国を守ることが“苦役”ということが納得できない人もいると解説した。
 池上彰は、戦争の真っ最中でも後方支援が可能になる、危険度が高まるのは確実。これまで自衛隊の海外派遣はその都度国会で法律を作ってきたが、今後は政府が決定すれば新法なしでも行くことができ、いろいろなところに行く可能性が高まってくると解説。さらにドイツ軍のアフガニスタンへの派遣でタリバンの攻撃などの攻撃を受け55人が死亡したという例を挙げ、自衛官の精神的なケアをどうするか考えなければいけないと話した。
 憲法第24条について池上彰は、結婚は男女二人の合意で成立するという規定だと、同性婚憲法違反という指摘があると解説した。東京・渋谷区に住む増原裕子さんと東小雪さんは2013年東京ディズニーリゾートで結婚式を挙げた。法的に夫婦と認められていないことについて、病気や事故など人生で大きなことが起こったときに法律的に守られていない関係はハードルになると話した。大阪・大阪市に住む吉田昌史さんと南和行さんは同性婚憲法違反では絶対にないと主張。大阪・大阪市に住む吉田昌史さんと南和行さんは同性婚憲法違反では絶対にないと主張した。4月、東京・渋谷区で同性パートナーシップ条例が成立。結婚に相当する関係として認め証明書を発行する全国初の試みで、渋谷区在住で20歳以上の同性カップルが対象。夫婦として区営住宅の申し込みが可能になり、病院の面会で家族として扱ってもらえることなどが期待されている。こうした動きは東京・世田谷区や横浜市、兵庫・宝塚市など全国に広がりつつある。同性婚違憲?合憲?について池上彰は、憲法14条の“国民は平等で差別されてはいけない”という観点で考えると、同性婚憲法違反にならないのではないかと解説した。また、アメリカではオバマ大統領が同性婚を重要政策の1つに挙げていて、6月に連邦最高裁の判決で同性婚が全州で合法となっていると紹介した。
 池上彰は、北朝鮮と中国の憲法を紹介し、憲法が守られておらず中国共産党憲法の解釈権を持っていてる中国を例に挙げ、冒頭で憲法は権力者を縛るものと解説したが、国民の権利が無条件に保証されているわけではないと解説した。また、憲法97条を読み上げ、今の憲法が将来改正されるとしても維持されるとしても、憲法というものが権力を抑制し国民を守る存在であるということ、そのための努力として私達は日頃から憲法と接しておくことが大事と話した。

<今日の言葉>
小篠綾子(ファッションデザイナー)
 ・あんたら三人を生んだのはお母ちゃんやねん。もとを辿ればお母ちゃんのオリジナルや。

<日本の言葉・方言>
兵庫県姫路市のお国言葉
・『せんどぶり=久しぶり』
  例)「せんどぶりやなぁ〜!最近どないよ?」⇒久しぶりですね。最近どうしていますか?
 姫路と言えば、国宝であり世界文化遺産の「姫路城」。長い修理期間を終えて、今年3月にグランドオープンしましたが、「一際目を引く真っ 白な姫路城は、美しくて雄大で、圧巻」であった。

<9月12日生まれの先人の言葉>
徳田球一(政治家)
 ・相手をほんとうにやっつけようと思ったら、じっと辛抱しながら、時機を待たなければだめだ。
●豊田英二(経営者)
 ・人間も企業も前を向いて歩けなくなったときが終りである。
河野一郎(政治家)
 ・飯は外で自分より偉そうな奴と食うものだ。
大村はま(教育者)
 ・昨日よりも今日というように、気づいたり工夫したり、教師自身に成長の実感がある。ありあわせ、持ち合わせの力で授業をしない。何事かを加える、何事かを加えられて教室を出る。
小田実市民運動家
 ・何でも見てやろう。
高橋洋一(経済学者)
 ・小泉時代国民所得が下がった、格差が広がったと誤解している人が多いね。私がいた小泉安倍時代国民所得が減少したと粘着する人がいるがそんなウソはすぐばれる。
長友佑都(サッカー選手)
 ・誰よりも準備をし、誰よりも走って、誰よりも努力しているという自信はある。