“豊洲問題”の深層に迫る 緊急出演 小池都知事

◆“豊洲問題”の深層に迫る 緊急出演 小池都知事(2016年9月27日放送 22:00 - 22:25 NHK総合 クローズアップ現代+
 小池百合子都知事は築地から豊洲市場への移転をめぐって約30年にわたって議論が進められてきたが、環境大臣時代に土壌の浄化に立ち会っただけにこの問題に関心を寄せていたと明かした。そして1人の消費者として安全性についても考え、築地市場というブランドと同様に豊洲もブランドであるべきとして一度、立ち止まることを提言した。すると次から次へと課題が噴出し、驚きを禁じ得なかったが都政を変えていく試金石と考えるに至ったという。
 築地市場の移転先となる豊洲市場の地下では存在するはずのない巨大な空洞が広がっていた。問題の発端は環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されたことで、都は土壌汚染対策として敷地全体の土壌を入れ替えて盛土をした上に建物を建設すると説明。だが主要な建物の地下で盛土が行われておらず、地下空間が建設されていた。築地市場でマグロ専門の仲卸を営む吉野悦松氏は移転準備のために3000万円近い借金をし、冷蔵庫も新調。現在は用意した設備や区画のために借金の返済を続けている。
 豊洲市場の安全性が確認されぬまま移転すれば築地ブランドが失墜する懸念が広がっている。水産卸業者の酒井衛氏には取引先からの豊洲に対する不安な声が寄せられていて、我々が培ってきたものが豊洲でもそのまま継承されないと意味がないと語った。
 小池都知事は専門家会議を再開し、平田座長が地下空間にたまった水の検査を行って安全であると仰っていると伝えた。また、各党各会派、マスコミも現場を訪って調査・分析を行っているが、少しのサンプリングなどで結果に変動が生ずるなど風評被害に繋がりかねず、安全性はきっちりと確認していきたいと語った。都知事は都政改革本部とは別にプロジェクトチームを発足させ、専門家に安全性をしっかりと冷静に確認していただくことが重要だと考えると語った。
 都知事豊洲市場への11月の移転予定は東京オリンピックパラリンピックの道路を建設するスケジュールを考えてのことだったが、環境の安全性を考えると地下水のモニタリングが終了するまで待っていただきたいと話していた矢先、地下空間の問題が浮上し建設、情報共有といった組織的な問題にまで飛び火して混乱が起きていると語った。その上で地下空間に貯留した水といった環境、食などの安全性と都庁のガバナンス問題を截然と分けて考え、両方追求していく考え。
 平成20年に盛土が提案されたが、当時の知事や市場長はいつ計画が変更されたのか報告を受けていない、記憶が定かでないと発言している。NHKが独自に入手した豊洲市場の建設工事概要書によると、3年前の時点で盛土の表記は無かった。一方で同時期に東京都が公開した動画では盛土を安全対策の柱としてPRしている。なお、工事の方法を検討する会議に出席した長谷川猛氏は盛土を実施しないという話は聞いた記憶はないと話している。同会議の議事録には建物下に作業空間を確保することが必要だと記載され、専門家とは別に都庁内で工事の方法を検討していた技術系職員からあがったものとみられる。資料には地下空間が必要な理由として汚染物質の除去、地下水質のモニタリングなどが挙げられている。
 技術系職員内で盛土なしという計画が色彩を帯び、技術系出身ではない市場長には詳説されずに都知事にそのまま了承されたとみられる。その結果、3代の知事にわたって問題が表面化することはなかった。元副知事の青山佾氏は決済書類を回せば、責任は上層部にいったということはないと指摘。豊洲市場の問題を検討する森山高至氏は問題の背景に技術系職人、事務系職員の縦割り意識があると語った。
 小池都知事は東京都政の大改革の試金石として自己検証を指示していて、縦割り、責任の所在が不明確であり、最大の問題は誰のお金でこれだけ巨大な施設を作るのか、そのことを考えなかったのか申し上げたいとコメント。納得のゆくまで安全性、ガバナンスの問題を同時に追及していきたいとしている。
 3年前の11月、東京都は豊洲市場の水産仲卸売場棟、水産卸売場棟、青果棟の建設工事で入札を実施した。都が積算した予定価格は合計約630億円で、入札には大手ゼネコンを中心とした共同企業体JV3グループが参加したが、いずれも辞退。理由として震災復興で労働者の確保が難しい、都の見積もりが低すぎるなどが挙げられていた。3ヵ月後には2回目の入札が行われ、予定価格を1035億円に増額。1回目と同様に3つの共同企業体が参加し、落札価格は予定価格の99.7%を超えていた。予定価格が上がった上でほぼ同額で落札されたことについて、有川博教授は短期間の間に1.6倍も資材費、人件費が上がることはなく、1回目か2回目の予定価格が不適切だったのではと都の積算体制に疑義を呈している。
 豊洲市場の建設工事に関する入札について、JV側は手続きは適正に行っているとしている。小池都知事は都政改革本部では東京オリンピックパラリンピックと、内部統制の調査チームを設け、入札のあり方も調査していると説明。豊洲市場のみならず築地市場の解体工事の入札も行われ、調査するとWTOのルールに違反しているという見方が出ているという。都知事は豊かな財政であるがゆえに都庁の財源は賢い使い方とは言えないと考え、国際情勢、経済情勢が不透明ななかで誰のお金であるかを改めて強く認識してほしく、法人税に依拠している東京都庁の財政を改革せねばと見解を語った。
 小池都知事は巨大な都庁だから情報・責任が共有されておらず、情報を共有するための新たな会議体を設けるべく準備を進めていると語った。