『未来の年表〜人口減少日本でこれから起きること』 (河合雅司著)から

◆絶望の近未来を紹介する本である。この未来年表からこれからの日本への不安を覚える。
 2020年 女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減り始める。・・・子供を産めない女性の方が多い国になっていく。
 2021年 団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める。・・・人手が必要になるのに人手が離れていく、という二重苦でさらに拍車が かかる。
2022年 団塊世代が75歳に突入し、「ひとり暮らし社会」が本格化し始める。
 2023年 団塊ジュニア世代が50代となり、企業の人件費はピークを迎える。
 2024年 団塊世代がすべて75歳以上となり、社会保障費が大きく膨らみ始める。
 2025年 東京都の人口が1398万人とピークを迎える。
 2026年 高齢者の5人に1人が認知症患者(約730万人)となる。・・この頃から「老老介護」ならぬ、「認認介護」つまり認知症患者が認知症患者を 介護する社会に突入していく。
 2027年 献血必要量が不足し、手術や治療への影響が懸念されるようになる。
 2030年 団塊世代の高齢化で、東京郊外にもゴーストタウンが広がる。
 2030年 ITを担う人材が最大79万人不足し、社会基盤に混乱が生じる。・・・若い人がいなくなるってことは、開発する人材が老化するというこ  と。そうなれば新しいシステムはどんどん生まれなくなってくる。
 2033年 空き家が2167万戸を数え、3戸に1戸は人が住まなくなる。
 2033年 老朽化したインフラの維持管理・更新費用が最大5兆5000億円程に膨らむ。
 2035年 男性の3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚という「未婚大国」になる。
 2039年 死亡者数が167万9000人とピークを迎え、火葬場不足が深刻化する。
 2040年 全国の自治体の半数近くが「消滅」の危機に晒される。
 2040年 団塊ジュニア世代がすべて65歳以上となり、大量退職で後継者不足が深刻化する。
 2042年 高齢者数が3935万2000人とピークを迎える。
 2045年 東京都民の3人に1人が高齢者となる。
 2050年 世界人口が97億3000万人となり、日本も世界的な食料争奪戦に巻き込まれる。
 2050年 現在の居住地の約20%が「誰も住まない土地」となる。
 2050年 団塊ジュニア世代がすべて75歳以上となり、社会保障制度の破綻懸念が強まる。
 2053年 総人口が9924万人となり、1億人を割り込む。
 2054年 75歳以上人口が2449万人でピークを迎える。
 2055年 4人に1人が75歳以上となる。
 2056年 生産年齢人口が4983万6000人となり、5000万人を割り込む。
 2059年 5人に1人が80歳以上となる。
 2065年 総人口が8807万7000人で、2.5人に1人が高齢者となる。
 2076年 年間出生数が50万人を割り込む。
 2115年 総人口が5055万5000人まで減る。

◆ 世界の人口は増えてますが、日本の人口は減り始めた。出生率は2016年に1.44人。2人が1.4人なので7掛けです。団塊ジュニアは1学年200万人前後。いま新卒は7掛けの140万人です。大学も企業も入りやすくなった。というより人手不足です。2016年出生数はさらに7掛けの、100万人を切りました。このまま出生率が改善しないと、100年後は5060万人だそうです。人口減少問題のこわいところは人手不足です。生産年齢人口の減少。最低20年間増えない。今、仮に出生率が1947年並みの4.5人に急増したとしても、かれらが大人になるまで、最低でも20年間は生産年齢人口は増えない。
 政府の対策は4つ。
人手不足を「AI」「移民」「高齢者活用」「女性活用」で乗り切る。4つとも「切り札」にはならない。いま論壇で流行ってるのは、「AI」で労働力不足を解決する。素晴らしいことだけど、まだ夢物語と著者はバッサリ。というのも今後10年強で日本の労働人口は1000万人減る。20年強で1750万人も減る。とてもじゃないけど「AI」で追いつかない。移民、これはダメだ。伝統や文化が破壊される。日本が日本じゃなくなる。 「高齢者活用」今後増えるのは若い高齢者じゃなくて、75歳以上の高齢化した高齢者。「女性活用」妊娠〜子育てが大切で、効果は限定的。

◆著者の考える人口減少から日本を救う10の処方箋
?高齢者を削減する。姥捨て山ではない。高齢者の定義を75歳以上に引き上げる。わずか50年で勤労世代が40%も減る国家の非常事態。死ぬまで働いてもらう。
?24時間社会からの脱却。店員がいなくなるのだから、みんなで我慢。
?非居住エリアを明確化。コンパクトシティをつくり、そこに「にぎわい」をつくる。
?都道府県を飛び地合併。行政サービスが若手不足になる。東京と島根を合併するぐらいの発想。田舎の隣接市町村では若手はいなくなる。
?国際分業の徹底。得意分野だけに資源を集中させる。
?匠の技を活用する。目指すはイタリアモデル。少量生産少量販売。No1ブランドで海外と直接つながる。
?国費学生制度で人材育成。まず必要数を把握する。問題は医師不足だけではない。
?中高年の地方移住推進。大学連携型CCRC。CCRCの手本は米国にある。リタイア後の元気なうち都会から移住し大学キャンパスで学生生活。
医療や介護が必要になれば、大学病院系列で最後まで暮らす。石破地方創生担当相時代に、政府政策として法制化した。
?セカンド市民制度を創設。第2の故郷をつくる。人口減少する市町村は、定住人口ではなく交流人口にターゲットを絞る。
?第3子以降に1000万円給付。財源は簡単にいうと富裕層の相続税増。
ゴースト・タウン

◆著者河合雅司氏は語る。
 ここからの日本は、もっともっと少子高齢化が進んでいきます。2024年には全国民の3人に1人が65歳以上になります。「そんなことはもう知っているよ」と思われるかもしれません。でも、どれだけの人がその数字が意味するところを正しく理解しているでしょうか。例えば、宅配について想像してください。今はクリック1つで翌日には欲しいものが届く時代です。しかし、10年後、20年後、荷物を運ぶ若い人はどれだけいるでしょうか。また、人の移動も大変になるでしょう。東京などの大都市では現在、5分を待たない間隔で電車が動いています。それが可能なのは、まだ大半が若者だからです。大半が高齢者となった社会では、スムーズに電車の乗り降りはできなくなり、現在のような短い間隔での運行は難しくなるかもしれません。自治体の職員なども不足します。何でも役所に頼むのではなく、地域活動など、できることは自分たちでやっていかなくてはならない社会になります。これまでの日本は便利さを追求し、効率化が進んできました。でも、そのような社会のつくりや価値観がこの先も成り立つとは考えにくいでしょう。これからはきっと、「スローな」社会、弱者に手を差し伸べることにこそ価値が出るような社会に変わっていくのだと思います。
 まずは、この状況を正しく認識することが大切です。国のホームページには、各エリア別、年齢別の人口推計が発表されていますので、一度見てみてください。 残念ながら、人口の減少を止めることはできません。だったら「戦略的に縮む」しかないと私は考えています。変化に合わせて、どのような社会にしていくのか、方向性を決めて計画性を持って縮んでいくということです。そのやり方次第では、日本はまだまだ成長できますし、個人が豊かになることもできると思っています。60歳を過ぎてももちろん現役。
 例えば、飲料メーカーの場合を考えてみましょう。現在主流の500mlや2リットル入りのペットボトルは、高齢者にも最適な重さでしょうか。また、キャップは高齢者でも無理なく開けられるでしょうか。牛乳パックも、今の形のままでは開けるのが困難かもしれません。このように、商品を根底から考え直さなくてはなりません。これまでの日本は、大量生産・大量販売のビジネスモデルで成功してきました。しかし、ここからは、少量品種・少量販売のビジネスモデルに転換し、付加価値を上げることが日本の成長する鍵になると思います。日本より人口の少ないヨーロッパの国々が豊かな社会を築けているのは、それぞれに革製品や布地、チーズなど付加価値の高いブランドを持っているからです。新幹線や車の部品を作っていた中小企業があるとしましょう。同じ職人さんが、同じ機械と技術を使いながら、もっと高く売れる部品やこだわりの製品づくりに転じたならば、付加価値は高くなり、生産性が向上します。どうやって自分の技術力を高く売っていくのか、知恵を絞らなくてはなりません。
 まず意識してほしいのは、皆さんの先輩である今の40代後半や50代の人たちの成功モデルは、もう自分たちには当てはまらないということです。これまでは、効率的に業務をこなしパフォーマンスを発揮できる人が有能だと評価されてきたけれど、これからの時代に合った新しい価値を生み出すことが求められていくのです。モデルがないのだから、自分たちで考えるしかありません。今の30代、40代の人には、どうやって学び直していくのかがすごく問われます。この国の豊かさ、成長分野を伸ばしていくために、今持っている強みや技能を磨いていかなければなりません。一つの産業が成長力を持つ時期は、おそらくこれまでよりも短くなります。今の30代、40代も、いずれ高齢者になっていきます。その時代には、さらに若い人たちが減少しています。だから、せめて60代後半くらいまでは社会の第一線で頑張らなければ、この国は成り立ちません。引退するのは簡単ですが、それは貧しい社会に生きる高齢者として自分がいることになりかねません。働いて得る収入と年金の両方で生活を成り立たせていくライフプランを考える必要があります。今のうちから、どうやって世の中に役に立つ自分であり続けるかを考えておきましょう。30代のときは役に立っていたけれど、60歳になったら役に立たないというのでは困ります。そのためにも、自己投資を惜しんではなりません。新しい発想を得るために、自分と違う分野の人たちとコミュニケーションを図り、常に学び直し、経験を積んでください。40年、50年働くということは、何度も何度もチャレンジし続けるということなのです。
 不動産については、人口が減少していくためにどうしても供給過剰になるでしょう。もちろん、築年数や立地にもよるのですべてとは言いませんが、不動産そのものが今までのような価値を持つことは、おそらくないだろうと思っています。だから、家に縛られるような暮らし方や人生設計はあまり成り立ち得ないんですね。社会の変化に自分たちが合わせていこうと思うのであれば、なるべく身軽な暮らしぶりというのを考えていったほうがいいでしょう。もちろん、今までと同様に家や車を持ち、一つの場所でずっと暮らす人も残ります。ただ、今まで「大半の人がそうしていた」から、これからは「そういう暮らし方の人もいる」というぐらいに社会が変わっていくと思います。
 世界に通用するためには語学が必要と言われますが、語学は、これからAIが補ってくれるようになると思います。むしろ私は、原点に立ち返り、「日本および日本人を知る」教育をしていくことが大事だと思います。日本人の良さ、強み、ポテンシャルはどこあるのか。日本人が持つ伝統は何で、何を見て美しいと感じ、どんなことを得意とするのか。今よりもっと海外と接していくことになる子どもたちです。海外の人に「あなたは何者ですか?」「何ができますか?」と聞かれたときに、答えられることが求められるでしょう。相手が困っていることに対して、「自分たちにはこれができる」とプレゼンができる。これがビジネスにもつながるはずです。
 「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、これはなかなかそうならないこともあります。ただ、絶対に言えるのは、「変化はチャンス」だということです。変化があるところには、必ずチャンスがあります。そこにどんなニーズが生まれてくるのか、変化の先を早く自分なりに見据えることが大切です。社会が上り調子で誰もが成功していた時代、あるいはそこで安定していた時代というのは、実はチャンスは少なかったのです。しかし、これからは誰もがどう変化するか予想しきれないほど、人口動態が大きく変わっていきます。それは、まだ誰もやったことないことに挑戦して名前を残せるような成功を掴める、ものすごく大きなチャンスですよね。そして、自分の生涯をかけて、社会の激変に伴う課題を解決し、この国をさらに豊かにして、それを次の世代につなげていく。そんな生き様もまたダイナミックなものだと思います。私は、子どもの頃から「人と同じことはしない」ということを意識してきました。小さな頃は体が弱く、病気がちで、特別勉強ができたわけでもなかったので、その中で自分自身の存在価値を出すのに、一番簡単な方法だったのです。人と同じことをしていても、なかなかチャンスはつかめません。 つまり、
 1.過去の成功パターン、これまでの価値観を否定し続ける。
 2.社会の変化に対応するために、自分に投資し鍛え続ける。
 3.人とは違う視点・発想を持ち、人がやらないことをする。
 これらを意識することで、若い皆さんの未来は明るいものに変えていけると確信しています。意識変革のための小さな一歩を踏み出してみてください。