首都封鎖に現実味。知事「何もしなければロックダウン」と述べた。

 昨日、新型コロナウイルス感染者の急増を受け、東京都の小池百合子知事は「重大局面」との危機感を表明。26、27日の自宅勤務や週末の外出自粛を呼びかけた。東京で感染爆発が起きれば、社会・経済への影響は計り知れない。さらなる拡大を抑えられるのか、大きな岐路を迎えている。
 「感染が爆発的に広がる懸念がさらに高まっている。感染拡大の重大局面ととらえていただきたい」昨日午後8時過ぎ、小池氏は東京都庁で緊急記者会見を開き、「感染爆発 重大局面」と書かれたパネルを掲げ、険しい表情で都民への要請を並べた。
 「(26、27日は)できるだけ仕事は自宅で」
 「夜間の外出も控えて」
 「週末は、不要不急の外出はぜひとも控えてください」
 新学期からの再開を目指していた都内の学校についても、小池氏は「どうあるべきか見直していく」と言及。難局を乗り越えるには一人ひとりの自覚が必要だ、と繰り返した。東京には、首都圏から1日約280万人が通勤・通学などで訪れる。都民の移動だけを抑えても限界がある。東京都は12日にも、都道府県をまたいだ広域的な制限措置のあり方を国に求めており、小池氏は会見で「近隣の知事とも連携をとるべく、テレビ会議を検討している」と述べた。
 都が急きょこうした要請を打ち出すことになったのは、この3日間で感染者数が急増したから。今月半ばから感染者数は増えていたが、23日に16人、24日に17人の感染が判明したのに続き、25日には1日あたりで最多となる41人の感染を確認。累計212人は、都道府県別では北海道も抜いていて最多だ。
 懸念されるのは、こうした感染者数の増加が、(1)新たなクラスターとなりうる院内感染と、(2)感染経路のわからないケースから引き起こされているからだ。
 25日に判明した41人のうち、11人は東京都台東区の「永寿総合病院」の患者らだ。24日までにも患者や看護師ら計5人の感染が判明し、うち70代の患者が死亡していた。
 5人のうち4人は、同じフロアに入院したり、勤務したりしていたという。都は「院内感染の可能性がある」と認める。
 新型コロナウイルスによる院内感染では、国立病院機構大分医療センター大分市)で医師や看護師、入院患者ら関連する24人の感染が確認されている。
 永寿総合病院は、台東区の「中核病院」に指定され、外来患者は区外からも含めて20万人を超え、いまも約300人が入院している。患者や職員らの検査が進められており、感染者数はさらにふくらむ可能性がある。同院は25日から外来を休診したが、長引けば、地域の医療体制の維持にも響きかねない。
 さらに、25日の感染判明者41人のうち10人以上は、感染の経路が分かっていない。小池知事は会見で「(感染経路が)追えない人が増えている。もっとも憂慮するところ」と話した。
 4月以降は、多くの若者が入学や入社で上京し、人の流れが加速する。感染の自覚のないまま、知らぬ間にウイルスを拡散させてしまう恐れがある。小池氏は「高齢者へと感染が広がり、重症者が増加する傾向は何としても避けなければならない」と訴えていた。何も対策をとらない場合、感染が疑われる外来患者がピーク時で1日あたり4万人、入院患者数は2万人を超えるとの試算を、小池氏は23日に明らかにしていた。この日も「なにもしないで推移すれば、ロックダウンを招いてしまう」と訴えた。
 感染拡大を防ぐために、強制的に外出禁止や店舗の閉鎖を命じ、市民や企業の活動を抑え込む措置のことだ。爆発的に患者が増えている欧州の各都市などで実施されているが、万が一、首都の封鎖となれば影響は甚大だ。