「妻のトリセツ」(黒川伊保子著・講談社+α新書)

◆ポイント
1.意見が違ったらゲインを提示する
 そんなときこそ、男性が得意な「ビジネスプレゼン」のメソッドを思い出してほしい。簡単に手順を説明すると以下のようになる。
(1)双方の提案に対して、互いにメリットとデメリットを挙げる。
(2)実際に調べて検証する。
(3)デメリットを回避する消極的なメリットではなく、互いのゲイン(手に入れられるもの)も示す。
(4)以上を踏まえて、結論を出す。
 この方法は、日常のシーンにも応用できる。たとえば休日に夫婦で外出し、ランチをとることになった。妻はパスタが食べたいと言い、夫はそばが食べたいとなったとき。「油っこい」「太る」といったパスタのデメリットではなく「ここの新そばは、この時季しか食べられない」「君の好きな日本酒に合う美味しい 肴 もある」など、相手が嬉しくなるようなゲインを伝えると、プレゼンが通りやすくなる。少々面倒くさくはあるが、ものは言いようだ。自分の提案を気持ちよく通すには、「妻相手にこそ、ビジネスプレゼンを」と心得よう。
2.妻が絶望する夫のセリフ(抜粋)
●「だったらやらなくていいよ」
家事が大変だと訴える妻に言うと、「君がいつもやっていることは、僕(あるいは世間)にとってはそれほど重要ではない。やらなくても気にならない」と聞こえる。
●「つまりこういうことだろ?」
愚痴に対しては「わかるよ。大変だね」と共感するだけで十分。頼んでもいない要約や解決策の提示は余計なストレスを増やすだけ。
●「いいな〜君は。1日○○(子どもの名前)と一緒で」
それが何より辛いと感じている妻もいる。そういう自分を責めていたりもする。
3.サプライズを喜ぶ妻はほとんどいない
 誕生日にデートしようと誘われて出かけると、予告もなしに連れて行かれたのが高級フレンチレストラン。食事が終わり、キャンドルの炎が揺れるバースデーケーキが運ばれてくる。と、同時に、楽団がバースデーソングを演奏し始め、あらかじめ預けておいたバラの花束を渡されて……と、こんなロマンチックな演出をされても、あまり嬉しくない。どころか、その場に合わない(と男性は気づいていないが)服装や、完璧でないヘアやメイクの姿のまま注目を浴びることが恥ずかしいし、惨めに感じていたりする。何よりもその日を思い描きながらドレスを選んだり、美容院に行ったりする、そういう楽しみを全部奪われてしまったことが悲しいのだ。
4.たわいないメールでコミュニケーションする
 この〝なんでもないメール〟、夫からも出してみよう。たとえば、出張帰りの新幹線から「今、小田原通過。満席」で十分。男性脳の得意な「事実」だけ。それを、女性脳は勝手に「小田原を過ぎたから、もうすぐ家に帰れるよ。もう今日はクタクタだよ。君の顔が早く見たいな」と翻訳してくれる。「久々に君のカレーが食べたいな。あのひき肉と豆が入ったやつ」なんて、しばらく食卓に上っていない妻の得意料理をリクエストするのもいい。こんなメッセージが来たら、女性脳は嬉しくなる。
キーマカレーか。じゃあ、ひよこ豆買って帰らなきゃ」と、今晩カレーを囲む家族の姿を思い浮かべて、その段取りを楽しむことができるからだ。さらに、自分が料理に心を込めていることをちゃんとわかっていて、リスペクトしてくれるのだから、好感度はぐっと上がる。
5.どんな聞かれ方をしても、求められている答えは1つ
 ただストレートに「私のこと愛してる?」「好き?」「かわいい?」と投げてくるのは、素直で天真爛漫な妻で、これはわかりやすい。男にとって問題なのは、定型の肯定が欲しいくせに、変化球で聞いてくる妻だ。むしろ、ほとんどの妻の質問は変化球だと思ったほうがいい。ツンケンした態度をとったり、不機嫌になったり、口をきかなくなったりする。そして、「私のことなんてどうでもいいんでしょ」とか「私に1ミリも興味ないよね」などと言い出す。「私はあなたのお母さんじゃない」「あなたはお手伝いさんがいればいいんでしょ」というバリエーションもある。
 しかし、求められている答えは1つ。「どうでもいいなんて思ってないよ。君のことが大好きだよ」でいい。

◆【「女性脳のトリセツ」7選】
1.言ってくれればやったのに、は禁句
「察してナンボ」の女性脳は、「言ってくれればやったのに」というセリフに、想像以上に傷つく。男性の多くは、思いやりで言うこのセリフ、女性脳的には「察することを放棄することば」に聞こえるからだ。「言ってくれればやったのに」を言いそうになったとき、口にすべきは「気がつかなくて、ごめんね」「察してあげられなくて、ごめんね」である。
2.過去の浮気を告白してはいけない
 女性脳には、どんなに年月を経ても、過去の浮気について告白してはいけない。あえて顕在化せずにしまっておいた「感覚」を呼び覚ますことになるので、男性脳の想像を超えて生々しく五感の記憶を解凍してしまうことになる。その臨場感は、「現在進行中」とまったく遜色はない。女性脳において、「すでに終わった」ことは、何の免責にもならないのである。
3.女性がキレたら、理由を追求せず、ただ真撃にあやまる
 女性脳は、いきなリキレる(ように見える)。男性からしたら、とても些細なことに、ときに、とんでもなく感情的になるように見えるのだ。理由は簡単である。今の1回しか見ない男性にとっては「一円玉ほどの些細なこと」なのだろうが、私たち女性脳にとっては、「溢れそうになっているコップに落ちた"最後の"一円玉」だ。水は溢れ、取り返しがつかない何かが起こる。くれぐれも、理路整然と、自分が正しいことの証明を試みないように。正しいことを証明してしまったら、いっそうキレて手が付けられないのが、恐るべき女性脳なのだから。
4.ウンチクを語らない
 女性脳にとって重要なのは、「どう感じたか」であって、体系だった知識や薀蓄じゃない。どこどこの何が美味しかった、幸せだったと口々にさんざめくのが楽しいし、後々ためになるのであって、「そもそも○○とは」と語られても、なかなか頭に入らないのである。
5.ことばを反復し、体験返しをする
 共感できない男性脳に、共感するふりは難しいだろうか。でも、コツがある。相手のことばを反復するのである。「道が混んでたの」「道が混んでたのか」「頭が痛いの」「頭が痛いのか」これに、「たいへんだったね」や「かわいそうに」をつければ完璧だ。ちなみに、ことばを反復した後は、自分の類似の体験談を語るのが望ましい。女性脳の必殺技「体験返し」である。
6.結果うまく行ったことについて、過去の「傷」を指摘しない
 たとえば、最後は自分に感謝して逝った姑の通夜に、「今だから言うけど、おふくろは、最初きみのこういうところが好きじゃなかった」みたいなことを言われたら(そして、それが心当たりのないことだったら)、ここまでの何十年の日々が破綻する。自分が「良いコミュニケーション・ルール」だと思っていたことが1つひっくり返されたら、「じゃ、あれはどうなの? これはよかったの、よくなかったの。結局、お義母さんの笑顔は演技だったわけ?」と関連情報がすべて疑わしくなるからだ。)
 結果がすべての男性脳としては、結果がよかったことを祝福するために、途上の軋轢を口にしたのだろう。「それでも、うまくいった。いい結果になってよかった」という意を伝えるために。しかしながら、女性脳の感性領域にとって大事なのは、プロセスであって、結果じゃない。
7.過去をねぎらう
 さて、過去(プロセス)にこだわる女性脳は、過去をねぎらってもらうことに対して、ことのほか快感度が高い。プロジェクト成功の鍵のような華々しいことじゃなくても、「きみの企画書のタイトル、いきいきしてていいね」「朝いちばんの挨拶、あれいいなあ」など、日常のささやかなことでいい。彼女だからこその何か、に気づいてあげてほしい。

◆『女性を味方にする言葉、敵にする言葉』(伊東 明著)
1.「同意」と「共感」を混同しない
 たとえば「あなたのやり方はおかしいわよ」と奥さんから言われた場合。同意と共感を混同していると、「共感する=奥さんの言い分に全面的に同意して、自分が悪かったと謝らなければいけない」と考えてしまう。そうなると「共感なんてできるわけない」と思ってしまいます。そうではなく、まずは共感というのは単なる「受けとめ」なのだとイメージしてみることです。この例でいえば、「あなたのやり方はおかしいわよ」に対して「おまえはそう思っているのか」と、ただそれだけ。これが共感です。
2.女性からの「一見くだらない情報」は受け止める
 男性からすると「パスタがおいしかったんだ」と言われても、オチがないので反応のしようがない。ところが女性同士であれば、「えーそうなの! どこのお店?」「それが下北沢の〇〇っていうところで……」というふうに会話が展開していくのです。そこから理解すべき点は、まず男性からすると一見くだらない情報を女性が伝えてきた場合、女性はそれを共有したがっているのだ、ということ。もうひとつは、女性は相手が興味を持って聞いてくれる、その態度そのものによって、自分への興味や愛情を推し量ろうとしているということです。言い換えれば、ひと言「へー」で済まされてしまっただけで、すごく寂しい気持ちになってしまうのです。
3.ビッグクエスチョンに対しては、スモールクエスチョンで返す
 私が雑誌などのインタビューを受ける際にも「女性の心をつかむコツをお願いします」といきなり切り出されることがあります。でもそれはビッグクエスチョンなので、非常に答えづらい。そこで私のほうから「それはたとえば、食事への誘い方などですか?」と、具体的な質問、スモールクエスチョンで聞き返してから話を始めます。そうすれば、相手の意図からずれた回答をしてしまうリスクを減らすことができるのです。「私のことちっともわかってないよね」というビッグクエスチョンが来たら、「どうしてそういうふうに感じるの?」「そう思ったきっかけって何かあるの? もうちよっと詳しく教えてくれないかな」というように聞き返せるだけでもすばらしい。
4.男性は結論を重視するが、女性はプロセスを重視する
 男性は、結論をパッと出してあげるのが、面倒な話し合いの手間を省くやさしさだと思っているとこころがありますが、女性の場合には結論よりも、一緒に話し合ったかどうかということ自体が大切なのです。結論だけ出されると「私と話し合うことなんてどうでもいいのね」と悲しい気持ちになるのではないでしょうか。「誕生日プレゼント何がいい?」「別になんでもいいよ、おまえの好きなもの買ってくれよ」という会話が、女性には寂しく感じるのも、同じ理由です。女性が期待しているのは、「オレとしてはおしゃれなネクタイとかほしいんだけど」「いいわよ、どういうのがほしい?」「オレ、ボール・スミス好きなんだよね」と、二人で話し合うことなのです。
5.女性からのアドバイスはまずは受け止めて、過剰反応しない
 男性は「もうちょっと、きゅうりは厚めに切ったほうがいいんじゃない?」などという、ささいなことでもムカッと反応してしまう。ましてやそれが、仕事や趣味の話など「オレの領域」と思っていることなら、さらに反応は激しくなります。女性からすると「単に善意で言っているのに、なんでそんなに反撃してくるわけ? どうして素直に私のアドバイスが聞けないの?」と思ってしまうでしょう。男性のみなさんは自分がこういう言葉に対して過剰反応していることを自覚したほうがいいと思います。まずは「そうかなあ」と受けとめること。さらに「ああ、そうしてみるよ」と一言えたら器が大きい男です。それが難しければ、「まずはオレのやり方でやってみてもいいかな?」という疑問系で返すといいでしょう。
6.自慢話は控えて、言う時でも言い方に気をつける
 自慢話をすればするほど器が小さく見えるし、「教えてあげよっか」という姿勢も恩着せがましい。自慢話ばかりされると単純につまらないですし、むしろ「この人、コンプレックスが強いから、自分を大きく見せようとがんばってるのかな」と思われてしまったりする。自慢話を、どうしても言いたいときには、言い方に気をつけるといいでしょう。「BMW買ってさ」という話も「ずっと欲しくて、お金ためて買ったからうれしいんだ」のような言葉を付け加えれば、印象がだいぶ違うと思います。「昔、こんな仕事を大成功させてね」という話も、そこで終わらせずに「みんながいろいろ協力してくれてね」と言い添える。そんなふうに、何か謙虚なひと言を付け加えるのがコツです。
7.女性には「がんばれよ」ではなく「がんばってるね」
 男性の励まし方の基本は「がんばれよ」という叱咤激励型です。「がんばれよ」というのは、男性の感覚では悪い言葉ではありません。でも女性にとっては「がんばれよ」と言われると、「もっとがんばらないとだめだぞ」「おまえのがんばりはまだ足りない」と、自分を否定されたような気持ちになりやすいのです。女性には「がんばれよ」と言うよりも「がんばってるね」で、今のがんばりを認めてあげるほうが、さらにがんばろうという気持ちを引き出せたり、結果が出せる可能性が高くなると覚えておくといいでしょう。

◆『さりげなく「人の心をつかむ」技術!』に学ぶ8つのポイント
1.相手が唇をすぼめたときは深刻に受け止める
 話しているときに相手が口をすぼめたら、こちらの話に納得していないというサイン。そのまま流してしまわず、すぐに「何か聞きたいことはありますか?」などと尋ねてみること。たとえば、仕事でお客に商品を売り込んでいる最中にそのような顔をされたら、すぐにアプローチのやり方を切り替えたほうがいいでしょう。
2.唇を丸めるしぐさは、隠し事をしているように見える
 上唇と下唇を内側に丸めるしぐさをすると、何か隠し事をしているように見えます。言葉が口から漏れそうになるのを抑えようとするとき、無意識に唇を丸め込む人が多いのです。
3.自信がないときは意識的にうなずいてみる
 うなずく動作は、相手に「自分もあなたと同じ意見です」と意思表示する基本的なテクニックでもあるのです。これは、自分自身に対しても効果的に働きます。何かを考えているとき、うなずくことで、その考えに対する信念や自信が強まるのです。
4.頭を右に傾けると、相手からの信頼度を高めることができる
 たとえば男性が女性の電話番号を聞き出したいなら、左より右に傾けたほうが成功率が上がるのです。また、事務職や法律、医療関係など、厳しい倫理感覚が求められる職業の面接接試験では、頭を右に傾けると好印象を残せます。
5.腕組みを解かせて、相手の態度を変える
 私はセミナーで、聴衆の中に腕組みをしている人を見つけたら「握手のお手本を見せていただけませんか」などといって実験台になってもらいます。腕組みをやめざるを得なくした上で、「選ばれた」という優越感や驚きをもってもらい、気持ちをオープンにしてもらいます。一対一の場合は、資料を渡したりメモをとってもらったりするなど、腕組みのしぐさを崩してもらう工夫をすると、相手の態度も変わってきます。
6.小さな声の人は、声を「投げる」練習をする
 頼りない人だと思われないためには、ちよっと大きな声を心がけてみてください。ほとんどの人は声が出ないのではなく、どのくらいの大きさを出せば相手に届くのか知らないだけのこと。そのためのエクササイズを続ければ、誰でも声が大きく響くようになります。声をボールに見立て、50センチメートル先、1.5メートル先、3メートル先、5メートル先にあるものに目を向け、それに向かって声を投げてみましょう。この練習をくり返せば、どんな状況で、どのくらい声を出せばちょうどいい大きさに聞こえるのか、わかるようになります。
7.「いっていること」と「しぐさ」は必ず一致させる
 信頼できる人間だということをアピールしたいなら、言葉と動きを一致させるのが一番です。屈託のない笑顔を浮かべ、手のひらを広げて、つま先を相手に向けます。背筋はまっすぐに伸ばし、相手の言葉とボディ・ランゲージを真似ることで、ラポールを形成しましょう。また、もし相手から「嘘をついている」と疑われたときは、上着のボタンを外したり、やや顔を近づけたり、リラックスしたポーズをとったり、目をまっすぐ見たりといったオープンなボディ・ランゲージで、嘘をついていないことをアピールしましょう。
8.「姿勢のバランス」を完璧にする
 体が対称になっていると、魅力的、健康的、冷静で自信に満ちている印象を与えることができます。背骨のデコボコ一つひとつをサイコロに見立て、縦にきれいに積み上がっている状態をイメージしましよう。首をまっすぐに伸ばし、肩のカを抜いて、お腹を引っ込めます。顔はしっかり上げて、正面を見てください。このとき、目線を上げすぎて相手を見下ろす角度にならないように、注意が必要です。アゴがまっすぐ前を向いていれば、落ち着いて自信があるように見えます。