[民意」と政治制度・・・・構想日本代表 加藤秀樹氏(J.I.メールニュース No.584 2012.12.20発行)から

3年余りぶりに政権交代が行われる。この機会に、最近の総選挙 結果の状況とその背後にある「民意」そして、今の日本の政治制 度の基本的な問題について考えてみたい。今の選挙制度になって 16年間に6回の総選挙が行われた。「政権交代を可能にする選挙制 度」という意味ではこの制度は導入の意図どおりに機能している。 しかも議席数は最近3回の総選挙をみると主な与野党で大体300対100という大きく差がある構図だ。
国民はこれらの選挙で何を求めたのだろうか。私は一言で言うと 変化そのものではないかと思う。2005年の郵政選挙の時も、ほとんどの有権者郵政民営化の詳細は知らなかったし、全体でみると、民営化賛成候補者の得票率は反対候補者の得票率より低かった。要するに、旧態依然たる自民党から、いかにもオープンで歯切れ がよく社会を大きく変えてくれそうな小泉自民党への変化を選んだのだ。
2009年には、小泉内閣以降、元の黙阿弥状態だった自民党に対して、今度こそ本当の変化を、ということで政権交代が行われた。ところが、期待された民主党政権の右往左往ぶりがあまりにもひどく、何とかならないかという空気の中で今回の選挙結果となった。政権公約を見ると、景気対策、外交、原子力など党によってもちろん違いはある。しかし、その違いが300対50という大差をもたらしたものではないように見える。
2005年、2009年、2012年といずれも、敗れた側の党(あるいは党 内勢力)の自滅と、それに対する変化への期待。国民が求めたのは、荒っぽく見るとこういうことではないだろうか。この3回の総選挙の得票率をみると、300議席前後獲得した第一党でも50%には届かず、第2党との差は小選挙区で10%程度(今回は 自民、民主の差は約20%)だ。
詳細な政策の違いではなく、「変化」という大まかな「民意」による投票結果は、得票率ではそれほど大きくはない。しかし、現制度の下では決定的な議席差となる。これをどう考えるべきだろうか。次に考えないといけないのは、なぜ自民も民主も自滅したかだ。一言で言うと、政党の運営能力(ガバナンス)がなかったからだと思う。
政治家は一人一人独立した個人として活動する。しかし政党全体としての行動、ましてや与党となり内閣を構成する場合の行動となれば、組織の一員として規律に沿って行動しなければならないのは当然だし、どこの国でもそうなっている。
ところが、日本の多くの政党ではそうなっていない。 前回の自民党政権、そして民主党政権を思い起こすと、ガバナン スがないために生じた混乱の例は限りない。 しかも、与党の側には選挙の度に100人前後の新人議員が入ってくる。彼らの多くは、政治家としての経験がないのみならず、組織人としての訓練がない者も少なからずいる。企業の経営体制が しっかりしていないと業績はあげられない。これは政党でも同じだと思う。
以上のような傾向がつづくなら、この先もずっと不安定な政治が 続くのだろうか。それでは日本が直面する重要課題を解決してい くどころではない。構想日本でかねて提言している政党法成立による政党ガバナンスの確立に加え、現在の小選挙区比例代表並立制の制度についてもよく考えないといけないのかもしれない。

◆ガバナンスが不足していたということが大きい。以前の自民党は派閥間の間で切磋琢磨し、それが一つの組織であり、合議体としてガバナンスを形成していた感がする。民主党にしても、今の自民党にしても統制がとれていなし、信心が大量に当選しても、組織を知らない感もする。以前の自民党のように、国民の代表でなく、地域や企業の代弁者でもまずいであろう。リーダーの資質に欠けるきらいがあるように思える。広い視野から国を引っ張って行くビジョンが欲しい。今度の自民党政権は、以前の自民党政権にもどれば、夏の参議院選挙でまたストップしてしまう。まして今回は民主党が否定され、第三極が分散し、大きなうねりがなく、自民党にやむなく行動した感が大きい。まさに、その民意を裏切り、大きく国民の信頼、経済復興等様々な課題に対応してはじめて自民党政権の信頼が回復するように思える。来年夏の参議院選挙が大きな岐路であろう。

◆同じではないでしょうけど
 民主党の轍を踏むな 自民党はやむを得ず選ばれた。衆院選自民党の大勝で幕を閉じた。自民、公明両党の獲得議席参院否決法案を衆院でひっくり返せる320を超えた。だが、この結果について、自民党が国民の圧倒的な支持を得たものだと安易に評価するわけにはいかない。注目すべきは投票率の低下だ。現行の小選挙区比例代表並立制度導入以降、衆院選投票率は低迷した。同制度下での初の選挙となった平成8年衆院選では、戦後最低となる59・65%(選挙区)を記録。これを皮切りに投票率は60%前後をうろついた。
 それが回復したのは、17年、小泉純一郎首相率いる自民党が地滑り的勝利を収めて296議席を獲得した「郵政選挙」と、21年に爆発的なブームを起こした民主党が308議席を勝ち取った「政権交代選挙」である。前者の投票率は67・51%、後者は小選挙区制導入後最高となった69・28%だった。投票率は投票日の天候にも左右されるから、一概に論じるわけにはいかない。ただ、これらの選挙が強い関心を呼んだのは間違いない。是非は別として、国民は積極的な意思表明として郵政民営化を唱える小泉・自民党政権交代を訴える民主党にそれぞれ投票したのだった。
 今回も同様に大差がついた選挙だった。だが、この投票率の低さは一体どうしたことか。記事本文の続き 今回の自民党圧勝と民主党の壊滅的大敗の背景に、民主党政権3年間の失態があるのは明らかだ。これに第三極のつまずきが重なった。民主党政治はもうこりごりだが、第三極もあてになるか分からない。こんな消極的な理由で、自民党はやむを得ず選ばれたのだ。衆院選は政権を選択する選挙であり、そこで自民党が選ばれた。これは事実である。だが、自民党自身も、国民から強く支持された結果だと手放しで喜ぶほど楽天的ではないだろう。問題は、この国民の消極的支持を積極的支持に変えられるかどうかである。国会での首相指名選挙では自民党安倍晋三総裁が新首相に選出されるだろう。安倍氏がなすべきことは何か。経済対策、社会保障、外交、安全保障、憲法改正問題。難問は数え切れない。だが、課題に取り組む中で一番気を配らなければならないのは政治への信頼回復ではないか。民主党マニフェスト政権公約)や首相発言などで国民に決定的な嘘をついた。政策で迷走した。「決められない政治」を続けた。醜い政争に終始した。この結果、政治への信頼は失墜した。民主党の失敗の裏返しがそのまま自民党の指針となる。政治が再び国民をがっかりさせることは、何としても避けなければならない。民主党の轍(てつ)を踏むな。(産経新聞 - 12月17日(月)8時32分)

 維新の会はうさん臭すぎ、原発反対派は「本当にできるのかよ」と訝しがられた。民主党の裏切りは万死に値する。でも自民党には入れたくない・・・
今回の票の動きはこんな感じだったような気がします。原発は僕も反対派ですが、現実に動かしてもらわないと電気料金が跳ね上がりすぎて予算が組めなくなっているのも事実で、そんな要素もあったかもしれません・・・。